オシム病
by 寺野典子
by 寺野典子
「経験がないからと試合に使わなかったら、いつまでも経験が積めない」と、積極的に若い選手たちを起用してきたオシム監督の言葉は、正論ではあるが、力の差があるはずの相手に苦戦を続ける現日本代表から感じる“つたなさ”は、若さだけが原因なのだろうか?
遠藤保仁に聞いてみた。
「この代表は若いですよ。若さがみなぎっています(笑)、いい意味でね。ジーコの代表チームはいい意味で落ち着いていたし、大人でマイペースだったけれど」
――ピッチ上ではどうでしょう。イエメン戦などでは引いた相手を崩すことへのアイディア不足などを感じたが……。
「やっぱり経験不足というのはあった。ボール回しの面でも前に急ぎすぎてしまったところもあったし」
――オシム監督のサッカーに縛られすぎているような気もします。もっと自由にやっていいはずなのでは?
「やっぱり代表に残りたい、監督にアピールしたいという気持ちの強さがあるんだと思う。でももっと選手一人一人の持ち味を出していけばいいのにと感じることもありますね」
現代表の主軸であるアテネ世代とは学年で、ふたつ上となるだけの遠藤だが、やはりジーコジャパンでの4年間の経験があるからこそ、その言葉にも重みを感じる。
経験とは、体験、体感したものを消化吸収できて、はじめて、生まれるものだ。試合に出たからと言って、身につくものでもない。いかに消化し、それを吸収するかで選手の成長度にも差が生まれて来る。
10月4日のガーナ戦が行われる。チェルシーで活躍するエシエン(23歳)を中心としたチームの年齢構成は日本代表とそう変わらないが、ドイツワールドカップ決勝トーナメント進出を飾ったガーナは、文字通り世界クラスのチームと言ってもいいだろう。
オシムジャパンにとって、過去4試合の体験がいかなる経験となったのか? 日本代表にとっての試金石となる90分になるはずだ。
だからこそ、監督の言葉に縛られることのない選手たちの積極的なプレーに期待したい。