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日本代表コンフィデンシャル by 寺野典子

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カターニアの森本から見るJユースの課題
by 寺野典子

 11月18日。午後14時半。カターニア対ベスカラの試合を観戦した。
場所は、イタリアのシチリア島にあるエトナ山中腹のカターニアの練習場。試合開始直前になると続々と地元のサポーターがそこに集まった。その数ざっと200名あまり。この日の試合が20歳以下のプリマベイラと呼ばれるチームの試合と考えればその数は多い。
 プリマベイラリーグはイタリア全土の53のクラブが参加し、4つの地区に分け行われている。上位2チームはプレーオフに進む。主なチームはセリエAやセリエB、C1の下部組織だ。
 日本のJリーグのユースチームと違うところは、トップ契約の選手でもこのリーグ戦に出場可能。負傷明けの選手など20歳以上の選手も数名が出場できる。日本ではトップ契約した選手はユースの試合には出られない。今季16歳でトップ昇格を果たしたU-16日本代表の柿谷 曜一朗(セレッソ大阪)は、未だトップデビューを飾れず、ユースの試合にも出られず、試合出場機会に飢えている状態。先日のU-16アジアユースを前にしても試合勘の面で不安視されていた(その不安は無用だったが)。
そして、昨年、同様の立場で苦しんでいたのが、東京ヴェルディの森本貴幸だった。
 しかしこの夏、カターニアに移籍した森本は毎週末リーグ戦を戦っている。それがこの日行われたプリマベイラリーグである。プロ契約を結んだ彼は普段はトップチームの練習に参加し、試合の日だけプリマベイラに合流する毎日を送っているという。だから、基本的な立場はトップのプロ選手と変わらないのだ。
 現在まで7試合を消化した今季のリーグで、森本は6試合に出場し、5得点を挙げている。だからこそ、スタンドで日本人の姿を見つけた多くのサポーターが「モリモート!」と嬉しそうに声をかけてくれる。それは彼らの森本への期待が大きい証拠でもあった。
 実際、カターニアの会長は「18歳でセリエAでプレーしている選手はいない。森本は本当にいい選手。だが、まだ熟してはいない。時期がくれば美味い果実となる」とプリマベイラで経験をつませ、トップで花開かせたいと考えているようだ。
 この日は、3トップ気味の真ん中というポジションで先発。しかし、相手のプレスが厳しいのか、中盤が機能せず、なかなか森本へボールが渡らないという試合展開で、後半14分には交代してしまった。
 トップチームとユースチームを行き来可能な規約のないJリーグでは、ユース世代からトップチームの練習に参加することは可能だ。しかしプロ契約を結んでいない状態では、他チームとプロ契約を結ぶこともできる。それは海外のチームも含めてだ。だからこそ、欧州では今はまだ青い果実であってもプロ契約を結び、熟すときを待つのだろう。Jリーグも検討すべき課題のような気がした。

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