beacon

日本代表コンフィデンシャル by 寺野典子

このエントリーをはてなブックマークに追加

中村の“引き出し”
by 寺野典子

 11月23日欧州チャンピオンズリーグ対マンチェスターユナイテッド戦でFKを決めて、チームを決勝トーナメントに導いたセルティックの中村俊輔。翌日の地元紙には「SWEET16」「UERO HEAVEN」とベスト16入りという快挙を讃える文字が躍り、中村がセルティックの歴史になったことを改めて感じた。
 翌々日のインタビューで、そのFKの話題になると中村の表情が若干曇った。「もういいじゃん」とでも言いたそうに。試合の余韻は、試合後1時間半をかけて行われるジムワークやクールダウンで消えてしまうという。そうすることで、充分な睡眠と休息を得、そして次の試合に臨めるのだと。余韻を引きずりすぎるのは、いいことではないと、過去の経験が教えてくれるのだと。それはいい余韻であっても悪い余韻であってもだ。
 中村は自分の経験を彼独自の言葉で“引き出し”と表現する。
「いろんな引き出しをどんどん増やしたい」
 だからこそ、欧州へとプレーの場を変えた。だからこそ、ポジションにこだわらず、試合出場を優先させるようになった。現在、セルティックでは右アウトサイドでプレーしている。マンチェスター戦では、急遽左サイドでのプレーを命じられた。対面に立つクリスチャーノ・ロナウドのマークに追われ、簡単に抜かれるシーンも確かにあった。しかしそれでもその中で学んだことはあった。どんな経験も無駄ではないと。人種差別的なヤジの中でプレーしたイタリアでの経験も、ドイツW杯での無念も同様だ。
 現在、招集が回避されている日本代表について具体的に語ることは出来ない。
「だって、行ってないんだから。代表がないと結構ゆっくり休めるものだね」と笑い、「新しいチームで、プレーすればそれだけまた引き出しが増えるからね」と話した。その様子からは、1日も早く代表に合流したいと願う彼の強い意欲が感じられた。

(写真:FKを決めたCLマンU戦での中村俊輔)

TOP