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ピッチに恋して by 松原渓

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ワールドカップ3
by 松原渓

ワールドカップに酔いしれた一カ月も、いよいよクライマックス。

チームを象徴するカラーを頭や顔にペインティングし、あるいは巨大な国旗を身体にまとったサポーター達が彩るスタンドは、様々な色の羽を持つ鳥たちが集まってその美しさと大胆さを競い合うように鮮やかで、心に響く光景です。

海外リーグやチャンピオンズリーグとも違う、世界中のお祭りを集めたような、ワールドカップならではの「音」も楽しんでいます♪

日本の決勝トーナメント1回戦、パラグアイとの一戦は120分間の攻防の末PK戦で敗れ、史上初のベスト8進出はなりませんでしたが、日本中に活力を与えた今大会の代表戦士達の戦いぶりに、テレビの前で心から拍手を送りました。
締めくくりにふさわしい、激闘でした。試合後は、遠く南アフリカの地に足を運んで応援したサポーターの表情、そして、選手の表情一つ一つに様々な戦いの記憶がにじみ出ていて、自然と涙が溢れました。駒野選手の肩を抱いた松井選手と阿部選手、俯きながら、(大会後に代表引退を表明し)自身最後となったワールドカップのピッチに涙を零した中村俊輔選手、悔しさと涙をにじませながら、サポーターに深々と頭を下げた本田選手。それぞれの涙に物語があり、その点では中田選手がピッチに倒れこんだ映像ばかりが流された2006年の最終戦とはあらゆる点で対照的でした。

改めてこの1カ月間を振り返って思うのは、日本代表の勝利と共にサッカー人気を後押しする空気の高まりを、2002年以上に肌で感じられたなぁということ。
そして、2002年との明らかな違いは、開催国ではなく、気候も時差も真逆の、完全アウェーのハンデを乗り越え、さらにこの先に進めるかもしれないという手ごたえを得られたこと。そして、チームの一体感の強さ。

そんな中、勝っても「守備的なサッカーがつまらない」、「リアクションサッカー」などの批判も記事などで読みました。そういった批判の中には、欧州勢の強さの具体的な根拠と歴史、サッカーの美しさを肌で感じて知っている識者の提言として勉強になるものもあれば、頭ごなしで批判のための批判としか思えないものもありました。
答えがないサッカーというスポーツで、ブレない信念を示し続けることの難しさ、伝え方の難しさを実感する一方で、本当に強い代表チームを作るということは、代表監督、解説者、記者、コラムニスト、そして何よりも強い「世論」という、立場、プレッシャーの差こそあれ、それらの「信念」を戦わせることでもあるということに改めて思い至りました。
ただ、何の代価案もなく「サッカーがつまらない」「守備的すぎる」という批判に関しては、無責任な印象も受けました。GL3戦で当たった3チームは全て高さと速さを持ち、スペースを“好物”とするチームでしたから、攻撃を追求して今大会で日本が3連敗していたら・・・と考えると、その影響は日本のサッカー人気に少なからず暗い影を落としていたことでしょう。
日本代表への興味が観客数の少なさという形で数字になって表れていた日本にとって、それは致命的な敗退と言えたかもしれません。代表の結果が世論を動かしてサッカー人気を生み、子供たちの夢となって、再び日本サッカー、そして代表チームに還元されるという不変の循環があります。なでしこジャパンにも、シドニー五輪に出られなかったことで多くのチームが解散になり、選手がプレーする場をも奪われた「冬の時代」がありました。

その意味でも、普段サッカーを観ない人達がこれだけ日本代表に熱狂して、サッカーを面白いと思う人口が広がったことは素晴らしいなぁと思います。
今後、例えば、女性サポーター同士でも、もっともっとサッカーを熱く語り合えるようになっていけばいいなぁと思います。実際、今大会でワールドカップにはまったうちの母は、戦術や、選手に関しても、あっという間に詳しくなっていました(笑)興味を持てば女性だってその魅力にはまるのに時間はかからないんですよね。

そのためにも、キャプテンの長谷部選手が言っていたように、まずはJリーグのスタジアムに足を運ぶファンの数が増えることが一番ですね☆
さて、明日からはいよいよ準決勝!ベスト4は、オランダ、ウルグアイ、ドイツ、スペインの勝者の4チーム。
私の優勝予想はドイツです!!!

※本コラムは毎週月曜+αの更新予定です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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