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ピッチに恋して by 松原渓

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J1第14節・川崎対京都
by 松原渓

今週は川崎Fvs京都サンガF.C.の試合を観に行ってきました!

連日猛暑を記録している日本はこの日もすごい暑さで、夜空には満月。等々力陸上競技場のピッチの気温は30度を記録し、風もなく、スタンドもサウナ状態と化していました(汗)。

リーグ戦では中断期間に入る前の5月を最後に4試合勝っていない川崎と、9試合も勝利から遠ざかり、最下位脱出を目指す京都と、どちらも浮上のきっかけをつかみたい一戦。

選手入場前に、南アフリカワールドカップで日本人レフェリーとして最高記録となる4試合を担当した西村雄一さんが大きな拍手に迎えられて登場。ワールドカップ決勝の舞台という、世界でも一握りの選手しか立てない場所で、その選手と同じ目線に立ち、120分間を走りぬいたというのは、改めて思い出しても本当にすごいことですね。ミックスゾーンで西村主審とすれ違ったのですが、その表情は自然な自信に満ちていて、がっしりとした体格は選手より大きく思えるほどでした。

試合は序盤から動きます。慎重な入りを見せたフロンターレに対し、サンガは先手必勝とばかりに攻めます。
加藤久監督率いるサンガは今シーズン初めての観戦でしたが、選手間が一定の距離を取り、攻撃は長めのパスが主体。選手間の距離が開くと各選手がボールを完全フリーな状態で受けられるチャンスは少なく、必然的に「個」で勝負する局面が増えます。最近はJリーグでもショートパス主体のチームが多いだけに、サンガのサッカーは新鮮に映りました。最下位に沈んでいるのはリーグワーストの失点数が原因ですが、攻撃はシンプルで力強く、最下位のチームとは思えませんでした。中でも、いいアクセントになっていたのがFW宮吉拓実選手。各世代の日本代表に選ばれ、Jリーグ史上2番目の若さでデビューを果たしたという前途有望な17歳は、ベテランの柳沢選手からポジションを奪った形。
左サイドでボールを受けると、バネのきいたドリブルで鋭く中に切れ込み、奪われたら、自分で取り返し、また仕掛ける。DFにとっては嫌な選手に違いありません。しかし、味方のフォローがなく、追い越す動きも少ないため仕掛けがワンパターンになってしまうのはもったいないなぁと思いました。

こうなると流れが変わり、いよいよフロンターレの反撃開始。
フロンターレは攻守の要である稲本潤一選手を出場停止で欠いた穴を補ってあまりある動きを見せていたのが中村憲剛選手。中盤でボールを集めると躊躇なく前線に精度の高いボールを放り込み、ブラジル人FW2人の俊足を生かしてチャンスに結び付けます。
しかし、こちらも3バックを採用し、実質5バックのような形で守る京都の牙城をなかなか崩しきれず。

前半をスコアレスで折り返し、こう着状態に陥っていた後半17分。
ついに、ケガ明けのエース選手が登場!!右ふくらはぎ肉離れで試合から遠ざかり、7ヶ月半ぶりの出場となったジュニーニョ選手は、ピッチの感触を確かめるように駆け回り、ボールを受けると迷わずシュート。その怖さを思い出すのに時間はかかりませんでした。

そして後半44分、ついに等々力に歓喜の瞬間が訪れます。

交代で入った楠神順平選手のスルーパスを躊躇なく振りぬき、強烈なシュートはGKの手をはじいてネットを揺らし、土壇場でついにフロンターレが先制!!
土壇場でのエースの劇的な復帰弾にスタンドの興奮も最高潮に。

引き分けも視野に入れていたであろうサンガは、最後の最後でDF陣が力尽きてしまいました…。

ヒーローインタビューのお立ち台で、サポーターを前に「サッカー選手になってから、こんなに長い間試合に出られなかったことはなかった…」と、言葉を一つ一つ噛みしめるように発したジュニーニョ選手の目の奥に、様々な葛藤が見えました。7カ月半にも及ぶ深い闇の中でもがき、自分自身と戦い抜いたエースが今後、得点を量産していくであろう姿を想像するのは難しくありません。
また、アシストした楠神選手とのホットラインも川崎の攻撃に新たな可能性を感じさせました。
また、この試合で5試合ぶりの白星をつかんだフロンターレは、J1通算100勝目という歴史的な節目を迎えることに。
きっと、サポーターにとっても、忘れられない一戦として語り継がれることでしょう☆

※本コラムは毎週月曜+αの更新予定です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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