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ピッチに恋して by 松原渓

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3つのFOOTBALL
by 松原渓

今週は3つの会場で“3つのボール”を追ってきました。

まずはフットサル!
セントラル(東京・国立代々木競技場)で行われたFリーグ開幕戦に行ってきました☆

4シーズン目のスタートに向けオフシーズンの各チームの移籍も活発でしたが、中でも話題をさらったのが、名古屋オーシャンズに新加入したポルトガル代表リカルジーニョ選手。「フットサル界のC・ロナウドやメッシが日本に来た」と聞けば、見ないわけにはいきません。
セントラル開催初日のこの日は、まさにその“リカルジーニョ効果”とも言える大入りでした。開幕戦となった、初戦の名古屋オーシャンズとエスポラーダ北海道の試合は立ち見も続出。
ポルトガルの名門クラブ SLベンフィカに所属していたリカルジーニョ選手は、フットサルW杯や欧州フットサル選手権で活躍し、MVPに与えられるUEFA Golden player賞を2007年に受賞。その後もコンスタントに活躍し、現在の欧州最高選手とも言われる超スタープレイヤー。日本ではブラジルのファルカン選手に続く、世界的なプレイヤー。ファルカン選手はワールドカップ最優秀選手を27歳、31歳で2度受賞した比較的遅咲きのスターですが、リカルジーニョ選手は21歳でヨーロッパを極め、現在もなんと24歳という若さ。今後の伸びしろも楽しみです。日本でプレーすることを選んでくれたのはオーシャンズのアジウ監督への信頼が理由だったそうですが、まさに今後のFリーグの注目度アップ&レベルアップのキーパーソンでしょう。

7月に行われたオーシャンアリーナカップでベールを脱ぎ観衆を釘づけにしたというその足技は、ファーストタッチで明らかにリズムの違いを感じさせる、独特の間合いでした。ひとたびリカルジーニョ選手がボールを持てば、会場を沸かせるテクニックが、出てくる出てくる。そのフェイントは一瞬、何が起きたか分からないほど滑らかで、一つ一つスローでリプレイしてほしい!と思うほど。相手の足元にボールを晒し、相手が取りに来ても、パスではなく真っ向勝負で抜きにいく自信はすごいですし、実際に成功率も高いのですから。

ただ、チームの連携の中でそのプレーが有効に機能していたわけではありませんでした。試合は名古屋が2度のリードしながら、結局守り切れず2-2のドロー。
そのテクニックと同じぐらい印象的だったのが、守備でした。相手を騙すタイミングを知り尽くしているからでしょう、1対1の守備で読みが鋭く、実際何度かパスをインターセプトすることに成功していたものの、裏を返せばゾーンディフェンスのルールを無視してボールに行ってしまうクセがあるため、交わされて相手のカウンターの起点となってしまった場面も少なくありませんでした。連携が出来上がっていない段階では、「自信」も両刃の剣。本来の実力が見られるのはもう少し先になりそうですね。
さて、今年のFリーグでは、リーグ3連覇中の王者オーシャンズを苦しめるチームは現れるのでしょうか。
オーシャンズの新加入選手はリカルジーニョ選手だけではなく、リーグ最年少出場記録を塗り替えて注目を集める18歳の逸見勝利ラファエル選手もいますし、ただでさえ激しいポジション争いがさらにすごいことになりそうで、そちらも目が離せません!

2つ目はJリーグ。日曜日に行われたJリーグ第17節・FC東京×名古屋グランパス戦に行ってきました。
選手は前半で足が止まってしまうほど体力消耗の激しい暑さの中、最後まで勝ち点3を取りに行く両チームの姿勢が試合を引きしめ、最後はグランパスがロスタイムに闘莉王選手のゴールで劇的勝利!グランパスの倍の20本のシュートを放ったFC東京でしたが、再三のチャンスを決められなかったツケが最後の最後で回ってきてしまった形。
それにしても、闘莉王選手は“持ってます”ね!試合を決めた身体ごと押し込んだヘディングはちょうど目の前で、スローモーションのように見えました。劇的な展開で試合を決めることができる闘莉王選手は、強運も味方につけているように見えますが、相手DFの外し方やボールへの跳躍力、そして正確な技術は紛れもない努力の積み重ねだということに、今さらながら気づいた瞬間でした。

F東京の城福監督は「多くのチャンスを作りながら相手の一発にやられてしまったこの試合を、短い言葉で表すなら?」というベテラン記者からの質問に対し、「これもサッカー」と即答。
昨シーズン、FC東京が泥沼の連敗に陥った時、城福監督の表情からは生気が失われていましたが、今回はむしろその逆で、その言葉の「行間」には、結果が出なかった無念さはありながらも厳しい日程と暑さに耐えて90分間城福監督イズムをピッチで表現した選手を評価するメッセージにも聞こえました。

この結果、エスパルスとアントラーズの上位直接対決は2-1で清水が勝利したため、グランパスがアントラーズを抜いて2位に浮上。Jリーグは今節でちょうどシーズンの折り返し地点を通過しましたが、順位表は1位から降格圏内まで、18チームが勝ち点26差の中に収まる見事な団子レース状態。中でも、そのポジションを着実に上げているのが大阪の2チーム。一時期は降格圏内まで下がったガンバが連勝で上位を捉え、C大阪も上位グループに全く引けを取らない粘り強い戦いを見せており、直接対決の大阪ダービー(9月18日)も楽しみです。

最後は、私自身初観戦となった「7号球」を使用したサッカー。電動車椅子サッカーの東京都大会を観戦しに行きました!
今年に入り、視覚障害がある方達のブラインドサッカーを体験させていただく機会があり、同時に「もうひとつのなでしこジャパン」=聴覚障害がある方達のデフサッカー女子日本代表を題材にした映画(『アイ・コンタクト』現在上映中)も見ました。2つのサッカーとの出会い、また競技のルールなどの独自性や魅力的な選手との出会いを通じて、サッカーは決して一つではなく様々な形で、多く人の希望や生活のモチベーションとして存在していることを改めて実感しました。そして今回、知り合いを通じて都内で電動車椅子サッカー大会が行われていることを知り、ぜひ見に行きたいと思い、電動車椅子サッカー協会の方々にも色々とお話を伺うことができました。

電動車椅子の足元の部分に専用のガードを取り付けてボールをコントロールし、ゴールを狙う。シンプルですが、選手にとっては身体の一部とも言える電動車椅子を華麗に操って繰り出される鮮やかなパスやシュートなど、迫力のあるプレイやゴールに興奮しました。ゴールした時や、見事にパスがつながった時の選手の皆さんの輝く表情がとっても印象的で♪
ボールの大きさ(7号球=通常のサッカーボールの1.5倍)や、プレイヤー数(4対4)など、ルールは11人制のサッカーともブラインドサッカーともデフサッカーとも違う点が多く、中でも「男女混合、年齢制限も5歳以上で電動車椅子を操作できれば誰でも参加できる」という、参加資格の広さには驚きました!年齢性別関係なく一つのゴールを目指せるというのは、ある意味でサッカーの究極の理想形ではないでしょうか。

日本代表チームは、2007年に行われた第1回電動車いすサッカーワールドカップで4位入賞。優勝したアメリカとの実力は拮抗しており、世界一を狙える位置にいるそう。代表選手の皆さん、2011年にフランス(パリ)で行われる第2回大会はぜひ優勝目指して頑張ってください。
日本で一番強いサッカー日本代表はどのサッカーになるのか?今後も注目していきたいと思います☆
さて、来週は、佳境を迎えたなでしこリーグカップに行ってきます!

※本コラムは毎週月曜+αの更新予定です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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