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ピッチに恋して by 松原渓

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J1第26節・横浜FM対神戸
by 松原渓

Jリーグ第26節 横浜Fマリノス×ヴィッセル神戸@日産スタジアム…17823人

今節、マリノスがホームに迎えたのは、8試合勝ちなしのヴィッセル。
前節、ホームでフロンターレに完敗したヴィッセル(前回コラム参照)は、降格圏から脱出するため、勝ち点を1でも積み重ねておきたいところでしたが…。

序盤からマリノスが果敢に攻めてボールを支配しますが、中村俊輔選手(体調不良)欠場の影響もあってか、ゲームの組み立てはスムーズにいきません。
一方ヴィッセルは、エース大久保嘉人選手の復帰で少し覇気を取り戻したように見えました。前半はカウンターから裏のスペースを狙って都倉賢選手にボールを集めますが、明らかにサポートが少なく、攻め手はなし。パスがつながらないので次第に攻守にメリハリがなくなり、ほとんど動きのない展開に…。

ただ、この試合はザッケローニ監督も見に来ていたこともあってか個人のモチベーションの高さは伝わってきました。特に中村俊輔選手の代わりにトップ下で攻撃を組み立てた山瀬功治選手は縦横無尽の動きで守備も積極的にこなし、絶好のアピールチャンスを生かしたい並々ならぬ熱意が伝わってきましたが、周囲がその動きとパスについていけていない感じでした。またもう一人、昨年トップに昇格した20歳の端戸仁選手(FW)は独特の左足タッチのドリブルを得意とするテクニシャン。17歳の小野裕二選手と2トップでポジションチェンジを繰り返し、豊富な運動量とテクニックが魅力の「原石」コンビも目を引きました。

結局、前半は互いにペースが上がらないまま0-0で終了。試合が動いたのは後半でした。58分、ヴィッセルはCBの河本裕之選手が2枚目のイエローで退場すると、その5分後には17歳小野裕二選手のJリーグ初ゴール(前節天皇杯でも決めたので2試合連続弾)でマリノスが先制!
さらに、84分には大久保嘉人選手が小野選手の足を踏んでしまったとして一発退場。ヴィッセルは復帰を待ち望んだエースが次節・名古屋戦で再び出場停止。痛すぎますね…。
レッドカードを受けた2選手の退場口がちょうどアウェイゴール裏になっていて、私が座っていた位置からは近かったためよく見えたのですが、うつむきピッチを後にする2人を、しっかりと拍手で見送ったヴィッセルサポーターの対応はとても誠実でした。ただ、その拍手にも応えず悔しさを露わにして去っていった大久保選手はやはり視察に訪れていたザッケローニ監督の存在を意識していたのでしょうか。

結局、ラスト10分はマリノスが無理に攻めずセーフティに時間を使い切り勝利。シュートは19対7と圧倒していただけに決定力不足も目立った試合でしたが、しっかりと勝ち点1を獲得しました。
しかし、会見場に現れた木村和司監督は、まるで惨敗したかのような暗い表情で、開口一番「全然だね。本当にサポーターやファンに申し訳ないゲームをした」
狩野健太選手を残り15分ぐらいで投入し、たったの12分で交代させた采配については、何かあるな、と思っていました。ピッチを出た狩野選手も、木村監督の手を避けてロッカールームに直行する背中が怒りを物語っていましたから…これについて木村監督は「分かっていない」「自分が情けなかった。何で入れたのかと。入ってから、なぜ後ろを向いてプレーするのか」と、厳しい口調で語りました。

一方、神戸の和田昌裕監督は退場した2選手について、「河本は、たぶんあのボールを取れたと思ったのだろう」「大久保は、足が絡まっただけだと言っていた」と、選手の目線でファウルのシーンを振り返り、擁護しました。「試合には勝っても内容がなければ負けに等しい」と選手への要求を高めた木村和司監督とは対照的な態度でした。
改めて、色々なタイプの監督がいるなぁと思うのですが……個人的には、狩野選手が今回の悔しさをバネに木村監督の要求する「ファン、サポーターを楽しませる」型破りなプレーで監督を見返す(?)ほどの活躍をしてくれれば、これ以上ないドラマでもあります。その時、木村和司監督はきっと、静かに微笑んでいることでしょう。
今節は首位の名古屋が敗れ、2位の鹿島もドロー。残り9試合、優勝争いにもうひと波乱起こりそうですね!

※本コラムは毎週月曜+αの更新予定です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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