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セルジオ越後の越後録 by セルジオ越後

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日本サッカー、補欠制度を改善しないと、“宝くじ”を増やしたことにならない
by セルジオ越後

 最近の高校サッカーはスターがいないし、ワールドユースに日本が出られない大会が続いている。今は昔と違って指導者ライセンス制度が広まって、日本サッカー協会公認のライセンスを持っている人が全国各地にいる。ライセンスによって指導者のステータスは上がった。でも指導者のレベルが上がって、いい指導者の数も増えているはずなのに、ビックリするような選手が出てきていない。

 サッカー人口は決して増えていない。増えたと言って喜んでいるのは日本サッカー協会だけだ。確かにサッカー協会に登録された選手は増えたかもしれない。でも実際は試合に出ない子が増えただけ。それが補欠を多く抱える日本スポーツの欠点だ。サッカーをしている人の数が増えれば、当然それだけ凄い選手が出てくる可能性は上がる。でも120人の部員がいるところでやっても強くなるわけがない。スタンドで応援している選手が何人増えてもそれではいい選手は出てこない。補欠制度を改善しないと、“宝くじ”を増やしたことにならない。買ってすぐにゴミ箱に捨ててしまっているのと一緒だよ。

 ボクはサッカーが上手くなる基本は自然体に始まると思っている。ブラジルと日本の指導の考え方は正反対だ。ブラジルは「上手い人が練習する」というけれど、日本は「練習してみんなで上手くなる」という。ブラジルではストリートサッカーの中で自然と技術を身につける。サッカーもバスケットも、才能は社会の中から出てくる。もちろん、教えて学ぶ良さもあると思うけれど、そればかりでは言われたことしかやらないし、できない。そして、個性が出ない。漁師さんも、大工さんも学校に行くよりは現場で手伝って覚えるよね。教えられた環境からではメッシやネイマールのような選手や発想が出てくることは難しいと思う。

 日本の昔の指導者は、土のグラウンドで情報も少ない中で選手と一緒に工夫しながらやっていた。今は「オレの言うことを聞け」だけになっていないか。大人が選手と一緒にボールを蹴って、何時間かやるだけで子どもは変わってくる。その中で股抜いたとか、足裏を使ったとか、そういうのを一緒にやりながら上手くなる。Jリーグのはじめの頃やもっと前は、外国人選手とやりながら上手くなったよね。今の指導者たちは教えられて上手くなったのか。

 指導に頼らない点では自然に発生したフットサルがいい例だ。教える人がいないから上手くなる。自分たちで考えて、独自の方法で見ながら、やりながら上手くなる。誰でも、いつでも、どこでもできるものがポピュラー。今の日本サッカーは誰か、どこか、いつか。制限されてしまっているよ。日本は大会も練習も同級生が相手。FIFAの年齢制限の大会で苦戦しているけれど、6-3-3の中でやる限りは勝つことは難しいんじゃないかな。

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