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セルジオ越後の越後録 by セルジオ越後

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日本からはファーガソン監督のような監督は出てこない
by セルジオ越後

 マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督の勇退が発表された。70歳を越える高齢まで、27年も同じチームの監督をやっていたのはふつうの監督にはできることではない。とても偉大な人だと思う。ただ、彼はチャンピオンズリーグで優勝したり、プレミアリーグでも何度も優勝したりしているけれど、采配だけを評価された人ではない。マネージメントやいろいろな面で力を発揮することができた。勝った、負けたは関係のない経営者とも言える人だった。だからチェルシーだったらとっくにクビになっているような悪いシーズンでもずっと監督を務めることができたし、世界を見てもレアな監督だと思う。

 彼に次ぐのはアーセナルで17年やっているベンゲルくらい。サッカーの監督はマスコミの露出が多いほど、コロコロ代わる可能性が高い。個性の強い監督はチーム側が慣れていないと、言動を必要以上に大きく取り上げられてコントロールがきかなくなったり、成り立たなくなってしまう。でもマンチェスター・ユナイテッドという大きな組織だったから守られた部分もあると思う。またファーガソンは叩かれた相手も味方にした。だから長生きできた。実績を見ても歴史に残る監督じゃないかな? 今回、マンチェスター・ユナイテッドの監督が代わったことでひとつの歴史が切れると思う。

 一般的に選手にとっては、「自分を使ってくれた監督がいい監督」だと言う。長い間、同じ人が監督を務めるのはクラブの方向性が変わらないメリットもあるけれど、デメリットもある。選手にとってはひとりの監督の下でやるよりもいろいろな監督の下でプレーした方がいいと思う。いろいろな監督の下でやった方が、いろいろなノウハウを得ることができる。ひとりの監督の下でやると、どうしてもその人のコピーになってしまうと思う。会社で配置換えとかがあるのは、いろいろな上司から勉強するためでしょう。ボクが見た中で、印象的な監督は若い選手を育てるのが上手かったテレ・サンターナや話術の上手かったザガロ(ともに元ブラジル代表監督)。特にザガロはハーフタイムに意見をすべてまとめて選手たちに話していた。日本には実績的にもファーガソンと比較できるような監督はいないし、日本からファーガソン監督のような監督は出てこないと思う。

 27年はJリーグの歴史よりも長い。西野監督がG大阪で10年指揮を執ったけれど、Jリーグで長期政権はほとんど見られない。日本のクラブの場合はほぼ監督としての契約だし、クラブの運営が企業の景気に左右されてしまうから同じようなことはできない。だからファーガソンが生まれることはないだろう。最近は景気の悪化が影響して高額年俸の監督が次々と切られて、逆に勝っても、負けても監督が代わらなくなった。本当に監督が代わるのはJ2に降格しそうになった時だけだ。負けた時だけサポーターが動く。日本のクラブは会社に迷惑がかからない限りはどうぞ、というスタンス。今はまだない名門チームができて、ファーガソン監督のような存在が出てくるまでにはまだまだ時間と歴史が必要だ。

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