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オシム式

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オシム式 その9 
環境ストレスマネジメント

 オシム監督は中東に出発する空港で、記者の「今回の人選には、どんな意図が?」という質問に対して、「あなた(質問した記者)はどう思いますか?」と切り替えした。「スタミナ、・・・苛酷な日程でも大丈夫な選手を選択したのでは?」記者の答えに(暫く間をとって)「そうです。そのとおり」と言って搭乗口に消えた。
 
 海外遠征の日本式は、食事も日本から持っていく場合が多い。アメリカ軍のように何から何まで準備するところがある。確かにその緻密さやきめの細かさは世界一といっていいだろう。しかし、そこには「自分で考える」という一番大事なことを忘れさせる「手取り足取り」がある。

 また環境変化に強い人選ということは、おそらくいままでの日本チームは想像をしたこともない規準だろう。ここまで冷徹にあるいは残酷に人間を確かめるのはオシムらしい。

 こんな話を思い出した。あるアメリカの医学雑誌に掲載された論文の話だ。アフリカからアメリカへの奴隷の移送において生き残った黒人たちは血圧の高い人だった。血圧の低い個体は、途中壊血病で死んでしまうのだそうだ。だからアメリカにいる黒人はみんな血の気が多いといわんばかりの論文である。医学論文だから許されるのかわからないが、掲載内容は事実に基づいているのだろう。

 走れる個体。環境の変化に強い個体。生き残る個体。それをオシム監督は探している。


 確かに兵士でも生き残るやつと死ぬやつがいる。修羅の世界を生き残る生き物を選びに選ぶというのがオシム式だろう。日本の新聞は「環境ストレスマネジメント」なんて書いていたがそんなもんじゃないような気がします。西川、梅崎、二川、伊野波、ようこそ修羅の世界へ。今日は(9月3日サウジ戦)は誰が死ぬのか、誰が生き残るのか。

<写真説明>8月16日、アジアカップ予選vsイエメン戦での日本代表オシム監督

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