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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 ギド・ブッフバルト体制の3年間。永井雄一郎は思い悩んでいた。
 ブッフバルトには様々なポジションを任された。本来のポジションであるFW以外にも、トップ下、右サイドと、目まぐるしく役割が代わった。特に右サイドでは特長であるドリブルを生かして新境地を開拓。ライアン・ギグス(マンチェスター・U/イングランド)、クリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター・U/イングランド)を彷彿とさせるプレースタイルで存在感を十二分に示した。
 しかし永井は、そんな役回りが不本意だった。「自分はFW」というプライドが邪魔をして、新たなポジションに生き甲斐を見出せなかったのである。
 04年、05年シーズンは出番も多かった。しかし06年シーズンは出場機会が激減し、リーグ戦での先発出場はわずか7試合に留まった。
「サッカーの世界で生きていくなかで、試合に出場できないと僕の存在意義がない。別のクラブに移籍する必要があるのかなと、本当に思い悩んだ」
 リーグ、天皇杯の2冠を制し、レッズの歴史のなかで甘美なシーズンとして語り継がれるであろう06年。しかし、クラブに関わるすべての者が至福の時を過ごしたわけではない。クラブの栄光と逆行するように、永井は深い闇の中に沈み、膝を抱えて佇んでいた。
「去年は、僕のなかではノーチャンスだった。何をしても試合に出場できるキッカケを与えられなかった。スタメンが固定されていて、代わるタイミングがない。監督の意図が分からない。それでずいぶん悩みました。でも、今季は監督が代わる。それは僕にとって、とても大きかった。だからレッズに残ることを決断したんです」

 レッズの新監督ホルガー・オジェックは永井にFWの役割を与えた。“大砲”ワシントンと2トップを組ませ、ゴールに心血を注がせたのである。
 永井はすぐさま結果を出した。リーグ開幕戦の横浜FC戦では1-1の同点で迎えた85分に決勝ゴールをマーク。2節・新潟戦では珍しくヘディングで先制点を決めた。そしてアジア・チャンピオンズリーグのペルシク・ケディリ戦でもゴールした永井は、続くシドニーFCとのアウェー戦でも泥臭いゴールを決めてチームに貴重な勝ち点1をもたらしている。
「今は格好良く、いいことをしようとは思わない。FWとして何をすべきか。それは点を取ることですよね。だから、どんな形でもいいからゴールネットを揺らす努力をする。だからね。シドニーFC戦のゴールは相手GKがファンブルしたボールをプッシュしただけですけど、ゴールした瞬間は無茶苦茶嬉しかったですよ(笑)」

 今後も永井の立場が安泰なわけではない。リハビリ中の田中達也が復帰すれば、レギュラー争いが再び激化することだろう。オジェックはスターティングメンバーとバックアップメンバーを明確に線引きするという。永井がもし控えの立場に追いやられたら、新体制の下でも昨年までと同様の屈辱を味わうかもしれない。
 永井の真価が問われるのはこれからだ。スマートさはいらない。自身が何をすべきか。それをピッチで示す。
「レッズで勝負しようと決めたんです。その決断が間違っていなかったと証明しなくちゃ、ここに残った意味がない」
 不退転の決意でレッズでの07年シーズンに臨む。端正な顔立ちの貴公子は、ゴールで、自身の存在意義を見出す。

<写真>髪も短くし心機一転、レッズでの戦いに挑む永井

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