beacon

レッズの真相「ビッグクラブ2」

このエントリーをはてなブックマークに追加
 ワシントンは、ホルガー・オジェック監督の課す戦術に戸惑っているようだ。
 昨季までのワシントンは、まさに〝大砲〟だった。中央にデンと構え、ボールを保持したら相手ゴールへズドン。すべてのプレーを相手ペナルティエリア内で完結すればよかった。
 しかし今季は違う。新指揮官は攻撃に連動性を求めた。FWにはスペースメイキングで仲間を生かすプレーを指示し、あらゆる選手に独りよがりなプレーを許さない。これに順応したのが永井雄一郎で、彼はドリブルに固執したかつての面影はなく、堅実なポストワークやバックライン裏へのフリーランニングで組織の潤滑油となる役目を果たしている。
 ワシントンは、それに応えられないでいる。無理もない。彼は生粋のストライカーなのだ。エゴを美徳とする特異なポジションで生き抜いてきた彼に『中央に留まるな』と説いても、それを受け入れることなどできない。

 アジア・チャンピオンズリーグ(以下、ACL)・グループE第1戦、ペルシク・ケディリ戦で途中交代を命ぜられたとき、ワシントンは手袋を投げ捨てて不満を露にし、ピッチを去った。このときはオジェックも彼の態度を不問に付した。しかし、同じくACL・グループE第4戦、アウェーの上海申花戦で途中交代を言い渡され、ワシントンはまたしても苛立った態度を見せた。
 日本帰国後の練習。全体練習後にシュート練習をしたいというワシントンに対し、疲労回復に努めさそうとするオジェックは、それを許可しなかった。するとワシントンは指揮官と言い争いになりシュート練習を強行。業を煮やしたオジェックはワシントンにサテライト降格を言い渡し、リーグ8節・鹿島戦の帯同メンバーから彼を外した。レッズが誇る“大砲”に、ついにオジェックの鉄槌が下されたのである。
 鹿島戦の翌日、ワシントンは公式に声明を発した。
「規律を守らなかったということではなく、お互いの勘違いだったと思う。(監督と自分が)互いにもう少し話し合えば問題はなかった。上海戦の2日後の練習で、僕はもう少し練習したかったのだが、監督からは『休みなさい』と言われた。僕は練習をよくやれば、試合で活躍できると思っているから、そういったところで少しだけ行き違いがあった。大きなトラブルではないし、もう乗り越えたので問題はない。これからも(そういう食い違いが)あるかもしれないが、そのときはまた話し合えば問題はない」
 事態は収束したと言うワシントン。しかし、わだかまりは消えない。
 “大砲”が折れるか、指揮官が妥協するか。オジェックは厳格だ。まだまだ、火種は尽きそうにない。

TOP