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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 ワシントン、小野伸二が規律違反を犯すなど、現在のレッズは決して一枚岩ではない。ホルガー・オジェック監督はまだ、タレント性を備えた選手たちを統率できないでいる。
 一方で岡野雅行は今季に大きな期待を抱いていた。
「ギド(ブッフバルト)の下では3年間、なかなか出場機会を得られなかった選手がいた。それは僕もそうですけどね。そんな奴らは、監督が代わったことで今回、『やってやるぞ』という気持ちが強かったと思うんです。95年、96年にレッズを率いたときのオジェックは、練習中でもしっかりとアピールした選手にチャンスを与えていましたしね」
 だが、すぐに岡野の期待は落胆へと変わった。オジェックはシーズンイン直後から、レギュラー組とサブ組を明確に分けてしまったのだ。チーム内競争が勃発する前に、指揮官は選手を選別してしまったのである。
 岡野は首を捻る。
「サブ組はレギュラー組の調整相手という位置づけになってしまった。例えば連戦でスケジュールが厳しいときは練習内容も軽いメニューになって、試合に出場していない選手はその後にミニゲームを指示されるだけ。レギュラー組とははっきり分けられているから、監督にプレーを観てもらって客観的に評価してもらう機会もない」
 オジェックは選手起用でも慎重な采配を執る。極力、ピッチ上の選手は代えない。長谷部誠が負傷から復帰してからは小野、永井雄一郎らがベンチ行きになることもあり、彼らが交代で出場することはあるが、それ以外の選手はほぼ蚊帳の外の状態だ。
 岡野はリーグではここまで全試合ベンチ入りながら、わずか4試合9分しか出番がない。同じく開幕からベンチに座り続けている内舘秀樹も2試合4分のみの出場だ。
 だが、ここで腐らないのが岡野の真骨頂でもある。彼は指揮官を振り向かせようと、あくまでもポジティブに苦境を打開しようとしたのである。

 5月9日。インドネシア・ジャワ島中部の町、ソロ。灼熱の大地、劣悪なピッチ、不可解な判定。アジア・チャンピオンズリーグ・グループリーグのペルシク・ケディリ戦で、レッズは苦戦を強いられた。前半、1-2とビハインドを負うチームをベンチで見つめていた岡野は、こう思ったという。
「プレーが詰まりすぎている。もっとシンプルにプレーすべきでは? 相手が空けるスペースにランニングしてボールをもらうようにすれば……」
 ハーフタイム、そんな岡野に指揮官から声がかかる。後半開始からピッチに飛び出した岡野は自慢の快速を駆使して何度もフリーランニングを仕掛け、ボールを受け、チャンスを生み出した。ガムシャラに走り、ボールに喰らいつく。アウェーの地でも変わらない、いつもの岡野の姿。不動の精神は、仲間に大いなる勇気をもたらした。
 試合はその後、レッズが挽回して3-3のドローに終わった。チーム最年長が示した気力は、間違いなくチームを生き返らせた。
「いやー、ピッチは田んぼみたいでしたよ。クロスを上げるのも難しかったですしね。でもね。今回のアウェー、僕、むちゃくちゃ楽しかったです」
 サブ組の奮起を、指揮官はどう評価するのだろうか。
 インドネシアから帰国してすぐの13日J1第11節G大阪戦。岡野はベンチで試合を終えた──。

※ビッグクラブ2は毎週水曜更新予定です

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