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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 ──4日前。浦和レッズはアジア・チャンピオンズリーグのシドニーFC戦をドローで終え、9月から行なわれる決勝トーナメント進出を決めていた。チームは最低限の責務を果たしたことで大いに安堵しただろうが、だからといって、この日の埼玉スタジアムで体たらくなゲームを披露していいわけではない。
 5月27日。リーグ第13節・横浜戦。陽気のよさも手伝って、スタジアムには51,829人もの観衆が詰め掛けていた。

 試合は序盤から横浜のペースだった。レッズはいつにもまして運動量が希薄で、前線のワシントン、ポンテ、小野の個人技に頼るだけの攻撃に終始していた。案の定、後半の50分に元レッズの山瀬功治に豪快なミドルシュートを決められて先制を許す。慌てたレッズは、いつものように急遽攻撃性を醸し出して、66分にCKからネネがボレーシュートを決めてゴールを強奪したのだった。
 ここまではいい。不恰好とはいえ、しっかりと同点に追いついてみせたのだから。問題は同点になった後だ。レッズの面々は急に活動量をパワーダウンさせて勝利への意欲を無くしてしまった。引き分けやむなしの姿勢が顕著になっていく。“思惑どおり”にドロー決着に終わると、選手たちは達観したかのような表情でピッチを去っていった。

 これで今季、レッズはACLも含めて、実に9度目の引き分け。煮え切らない戦いぶりにスタンドのサポーターからは拍手とブーイングが入り混じった複雑な空気が流れた。サポーターたちも、今のチームを応援すべきか叱咤すべきか、逡巡しているかのような態度を取っている。
 プレーする側も、応援する側も、それぞれの意識の剥離に思い悩んでいる。まったく駄目なわけではない。ACLでは決勝トーナメント進出を果たし、リーグでは首位G大阪に勝ち点4差をつけられながらも2位につけている。しかし内容が伴わない。試合後、選手たちは、それぞれに自身の思いを吐露した。
 攻撃側の言い分。ポンテが語る。
「ワシントンだけでは点は取れないよ。後ろからのサポートがないとね。それが勝てない要因だ」
 守備側の言い分。堀之内聖の言葉。
「前線の3人と後ろの7人の間が間延びしてしまい、チーム全体のコンパクトさがなくなってしまう。理想は最後尾から押し上げて、チーム全体を高い位置にすること。でも、今はチーム内の意思疎通が図れていない。これを改善するためには、練習のなかで繰り返し確認して、肌身に染み込ませるしかないと思う」
 最後に、チーム全体の倦怠感を表すように、阿部勇樹が言った。
「今までやってきたことをあまり出せずに、チームとして戦うパフォーマンス、一体感が少し欠けていたように思う。もっとサイドを使えればよかったし、攻撃時にひとり、ふたりの動きだけでなく、3人目、4人目の動きがでればもっといい戦いができた。
今は耐えるときだと思うし、決して気持ちを切らしてはいけない。このあとリーグは中断に入るので、もう一度自分たちのサッカーを見つめ直したい」
チームの誰もが、それぞれに煮え切らない感情を抱えたまま、Jリーグは中断期間に突入した。

<写真>5月27日の横浜M戦、ピッチから引き上げる選手たちは複雑な表情を見せる

※本コラムは毎週水曜更新予定です

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