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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 4月21日、Jリーグ第7節の川崎フロンターレ戦で今季リーグ戦初黒星を喫した後、浦和レッズは緩やかに失速していった。アジア・チャンピオンズリーグ(以下、ACL)を含めて、A3チャンピオンズカップ(以下、A3)開催前まで9戦して一度も敗戦はしていない。しかし白星は僅かに2。残りはすべて引き分けである。
 短期間で7度のドローというのは異常事態だ。その間にACL予選リーグ突破を決め、リーグでもガンバ大阪を追走する2位につけているとはいえ、その試合内容には停滞感が漂う。

 5月27日、Jリーグ第13節の横浜F・マリノス戦を1-1のドローで終えた後、クラブの藤口光紀社長が報道陣の前で語った。
「GMを含めて、監督と3人で会談を持ちたい。正直な気持ちを話したいんだ」
 社長の不穏な発言にメディアが色めき立つ。しかし実際の会談は、それほど鬼気迫るものにはならなかった。中村修三GMが会談の内容を明かす。
「そんなに切羽詰ったものじゃないよ(笑)。ざっくばらんに話をしただけ。クラブから、『こうしてほしい』なんて要望は出していない。ただ、監督が今、チームの現状をどう考えているかなどは聞いてみた。その結果、いい話し合いができたとは思っている。解任? ないない(笑)。1年で進退を迫るようなオファーを、オジェック監督にはしていないもの。それに、監督の手腕だけが結果に結びついているわけじゃない。チームには、いろいろな要素が絡み合っている」
“いい話ができた”と語ったGMの言葉を証明するように、ホルガー・オジェック監督の普段の佇まいにも変化が生まれている。A3開催地である中国・済南でのトレーニングでは、監督自らが選手へと歩み寄り、様々な選手と個別会談する姿が目に付いた。ロブソン・ポンテや鈴木啓太とは時折笑顔を交えながらディスカッションをし、相馬崇人に至っては15分間以上もの間、アグレッシブに体を動かしながらプレー面におけるアドバイスをしていたほどだ。
 中村GMも指揮官の変容ぶりに気づいている。
「監督自身、最初は戸惑っていたんじゃないかな。『選手とは常にオープンに扉を開けておく』とは言っていたが、実際は、選手が遠慮してなかなか本音を語らないような状況になっていた。何か、監督を遠巻きで見ている感じ。でも、それでは駄目だと監督自身が反省して、彼から選手に話しかける姿勢が目立つようになったね。いい傾向だよ」
 思慮深さか。はたまた優柔不断さか。日本人の特性を10年ぶりに思い出したのかどうかは分からないが、とにかくオジェックは選手への接し方を変えた。これまでは遠征時に常に一人ぼっちで寂しそうな顔を浮かべていた指揮官だが、今では積極的に周囲へ溶け込み、フレンドリーに会話を交わしている。ワシントンの規律違反、小野伸二の起用法に対する監督批判などの“事件”を経て、チームはようやく秩序とバランスを取り戻しつつあるように見える。ただし……。
 まだ、燻った思惑が内包されている。それぞれの者が描く理想像の乖離。そして存在意義に対する疑念。 
 最大の懸念は長谷部誠の移籍問題。今、浦和が誇るファンタジスタは、イタリア・セリエAのプロビンチャ、シエナから獲得オファーを受けている。

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