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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 6月、中国・済南で行われたA3チャンピオンズカップ(以下、A3)。浦和レッズは上海申花、山東魯能の後塵を拝して3位に沈んだ。
 もともと大会に対するモチベーションが低かったレッズ。日本代表の鈴木啓太、阿部勇樹は遅れて合流(鈴木は2戦目の城南一和戦のみの出場。阿部は城南一和戦、上海申花戦に出場したが、上海戦は前半のみの出場)。坪井慶介、小野伸二らはケガのため帯同せず、田中達也、田中マルクス闘利王は負傷明けだった。

 ホルガー・オジェック監督はこの大会で、ひとつの目算を立てていたように思う。それはバックアップメンバーの“取捨選択”だ。
「A3では、普段、あまり出場できなかった選手を積極的に起用するつもりだ」
 リーグ後半戦、そしてアジア・チャンピオンズリーグ決勝トーナメントへ向けて今後誰を抜擢するか。選手を評価するうえで、A3は格好の“実験場”だったのである。
 第1戦の地元・山東魯能との一戦。オジェックは前言通り、いつもとは異なるメンバーをピッチに送り出した。普段はベンチに座るGK山岸範宏、DF内舘秀樹、MF酒井友之。コンディションを落としてサブに回っていたMF長谷部誠。負傷後復帰初戦となる闘利王、田中達。そしてプロ2年目で親善試合のブルズカップを除けばプロ公式戦初出場となるDF堤俊輔。
 堤は本職のDFではなく、左サイドアタッカーで起用された。
「先発は当日に言われた。左サイドと言われたときは正直、『どうプレーしたらいいんだろう』と悩みました」
 コメントからは初々しさが滲むが、実際のプレーは新人らしからぬふてぶてしさがあった。落ち着き払ったボールキープから正確なフィードを繰り出す。特に前線の田中達とのコンビネーションは秀逸で、田中達の突破に反応して絶好のスルーパスを通したりもした。また、特長である守備面でも安定感抜群。堤自身はプレーに悩んだと言うが、それは謙遜だろうと揶揄したくなるほど、堂に入ったパフォーマンスだった。

 堤は浦和ユース出身。これまで各年代の日本代表に選出されている。カナダワールドユースに出場しているU-20日本代表のメンバーからは落選したが、アジア予選では左サイドバックのレギュラーを務めていた、いわゆるエリートである。
 本人にもその自覚はある。
「僕は代表で国際試合を数多く経験してきましたから、アウェーの雰囲気には動じないんです」
 なんとも頼もしい台詞。見た目は華奢で大人しい印象だが、普段の堤は貫禄十分な若者である。先輩にも物怖じしないし、同世代の間ではリーダー格でもある。
 
 一方、山東魯能戦はU-22日本代表の北京オリンピック予選・マレーシア戦出場のため欠場した細貝萌。彼にとってのA3はどうだったか?
 城南一和戦は鈴木、阿部らが合流して、レッズはほぼベストメンバーで臨んだ。細貝は後半途中からの出場だったため、アピール機会が限られた。そして万全を期して臨んだ最終戦の上海申花戦。細貝のモチベーションはピークに達していた。しかし……。
 チームは不甲斐なく上海に1-3で敗れた。無気力な敗戦と言ってもいい。4日後に控えるリーグ第15節のFC東京戦へ向けて、何人かの選手は明らかに流していた。
 試合後、細貝は眉間に皺を寄せて、苦々しく声を発した。
「チーム内で、試合に対するモチベーションに違いがあったように感じる。もっとガムシャラにプレーすべきだったと、僕は思う」
 細貝は、アピールすべき場で力を振り絞らない仲間に歯がゆさを感じていたのだ。そこには、ぬるま湯の雰囲気を一喝する若手の情熱がほとばしっていた――。
 
 7月7日、埼玉スタジアム。ナビスコカップ準々決勝第1戦。覇を競うライバルであるG大阪との重要な試合。日本代表やケガ人の影響で主力が離脱しているなか、スタメンのピッチには堤と細貝の凛々しい姿があった。

<写真>7月7日ナビスコカップG大阪戦。ともに出場した堤(左)と細貝

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※本企画は毎週水曜日更新予定です

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