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「先生~~っ」
試合終了のホイッスルとともに、楓たちはベンチへ走った。
「勝ちました。勝ちましたよ、先生」
涙を流しながら、表情を崩した指揮官に次々に抱きついていく。
「よくがんばったぞ、おまえら」
「多村先生の指導のおかげです」
泣きべそをかいた楓が頭をさげると、多村はその頭を右腕で抱え込んで言った。
「でも、これで終わりじゃないぞ。おまえらの目標には、まだ先があるだろ」
全員がうなずく。
「はい!!」
「残念だが、俺のきびしい指導はまだまだ続くぞ」
「はい!!」
楓を中心にした歓喜の輪が、多村を飲み込んだ。
指揮官の体が宙に舞う。続いて楓の体も。
楓の潤んだ瞳には、湘南の青い空が映っていた。
「こんなに強いチームになっているとは、思いませんでした。よく短い時間でここまで鍛えましたね」
優勝セレモニーが始まる直前、鶴見女学館の監督が多村の指導を讃えた。名門校を長年率いてきた初老の指導者は、なでしこジャパンの強化委員も務めている。
「特に8番の子は、日本の女子サッカー界を変えるかもしれませんね」
名将の言葉に、多村は笑いながら「いえ、それは違います」と反論した。
「あいつにとって、日本は小さすぎますよ。あいつは、夏川楓は近い将来、世界の女子サッカーを変えますよ」
※本連載は毎週月・水・金に配信予定です。
女子W杯でMVP&得点王に輝いたなでしこジャパンの澤穂希選手をモデルに、国民的サッカー漫画『キャプテン翼』の作者である高橋陽一氏が書き下ろした青春サッカー小説『サッカー少女 楓』。各メディアに引っ張りだこの話題作を全文まとめて読みたい方はコチラ(amazon.jp)からお買い求め下さい。
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