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湘南は晩秋を迎えていた。
この日、男女ともサッカー部の練習はなかった。その休日を利用して、功太はサキたちを誘ってディズニーランドへ遊びに行ったのだ。
「こんな静かな日もあるんですね。いつもにぎやかなグラウンドに、誰もいない」
島村の祖父、善次郎が多村に声をかける。
「ええ、まぁ、たまにはこんな日があってもいいでしょう。また明日からは、にぎやかになるでしょうからね」
2人はグラウンドの片隅にたたずんでいた。
「先生、本当に純平がお世話になりました。おかげ様で大学でもサッカーを楽しんでいるようです。あのとき、先生が殴ってくれなければ、あいつの人生はめちゃくちゃになっていたかもしれません」
ぶらりと校舎を訪ねていた善次郎は、改めて多村に礼を言った。
「いえいえ、私はなにも……。彼を支えたのは、素晴らしい仲間たちですよ」
善次郎を見送り、多村は校舎に戻った。
下駄箱を通り抜けたところにある大きなガラスケースに、全国優勝のトロフィーと優勝旗が飾られている。楓たち女子サッカー部が獲得したものだった。満面の笑みを浮かべるイレブンと、多村が写った大きなパネル写真もトロフィーの横に置かれている。
《あれからもう1ヵ月か……》
多村はあの歓喜の瞬間を思い出しながら、物思いにふけった。あれからすぐ、楓たちはU-20に招集され、ドイツへ向かったのだ。
《楓と零はそろそろ帰ってきたかな》
多村は2人にどんな声をかけようか考えながら、じっとトロフィーを眺めていた。
※本連載は毎週月・水・金に配信予定です。
女子W杯でMVP&得点王に輝いたなでしこジャパンの澤穂希選手をモデルに、国民的サッカー漫画『キャプテン翼』の作者である高橋陽一氏が書き下ろした青春サッカー小説『サッカー少女 楓』。各メディアに引っ張りだこの話題作を全文まとめて読みたい方はコチラ(amazon.jp)からお買い求め下さい。
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