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POINT OF SOCCER by 長谷川望

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「想像力」を養うリバプールのコーチングメソッド
by 長谷川望

「家族の伝統」。イングランドの名門・リバプールFCのジュニア向けスクールのフィリップ・オリバーコーチ(26)は、リバプールのサポーターであることをこう称します。フィリップコーチにとってリバプールは幼いころから一緒に育ってきたクラブです。

 そんなクラブの一員として働きはじめたのは今から4年前。それは簡単ではなく、たくさんの面接、実技試験があったと当時を振り返ります。世界最高峰のリーグで活躍するクラブは、指導者にどのようなコーチングメソッドを教えているのでしょうか。

「リバプールに入ってトップレベルの指導者の方々に出会い、たくさんのことを学んだ。一番は子供たちに情報を与えすぎないこと。言いたいことを3つにしぼって、子供たちと共有する。特に最初と最後に話すことが重要になってくる。そして普通だったら大切だと思わないことでも、リバプールでは大切になる。子供たちとどう関係をつくっていくかという上で、話し方がすごく重要。私は身長が高いので子供たちと話すときに、上から見下ろす形になってしまう。しゃがんだり、座ったりして子供たちと同じ目線になって話すことが大切だということをリバプールにはいって気付いた」。

 実際にU-8の体験レッスンでも、「スピード」「スペース」という同じ言葉を何度も使っていたのが印象的で、情報を与えすぎないというクラブのコーチングメソッドからきているものだと取材を通して分かりました。イングランドの子供たちに対しては、コーチ陣はほとんど何も言わないそうですよ。

「想像力豊かになるために、行動を指示するのではなく、環境を与えることによって自然にできるように手助けしている。すべての練習は環境を与えて子供たちに判断させるもの。『あのコーンにいって、戻ってきて』と言ってしまえば、子供たちは判断する必要がなく、それは選手を育てているのではなくマシーンをつくっているのと同じ」。

 リバプールでは子供たちの「想像力」を失わないための工夫、そして子供たちのコミュニケーション方法にも細心の注意をはらっていました。ジュニア世代は何事も影響されやすい時期。この頃から子供たちが自分で考えて判断できる環境をつくっていくことが、「想像力」を養うことに繋がります。

◆著者プロフィール◆長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪で女子レスリング金メダリスト伊調馨を取材。2020年東京五輪を見据え、サッカーを中心にスポーツの育成年代を精力的に取材している。フジテレビ『とくダネ!』、TBS元旦スポーツ祭り『2013年にかけるアスリートたち』、WOWOW『金曜カーソル』などテレビ番組でも活躍中。
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