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スポーツライター平野貴也の『千字一景』 by 平野貴也

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「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第14回:大学でブレイク狙う大分の快足男(明治大:河辺駿太郎)
by 平野貴也

 試合開始直後、青いビブスの10番のドリブルが目を引いた。50mを5秒台で走るという小さな体が、相手守備網の間隙を突いてぐいっと加速した。明治大の1年生MF河辺駿太郎だ。別の場面では利き足ではない左足で際どいミドルシュート。2本目のゲームではスルーパスに快足で追いつき、折り返しのクロスでアシスト。積極的に自分の武器を披露した。河辺は「選考会に参加できたのは、良い経験。周りが上手い人ばかりの中で、自分のストロングポイントであるスピードやドリブルは出せたと思う。でも、ゴールがなかったし、ボールロストも多かった。手応えは、微妙」と素直な感想を話した。

 16日に明大八幡山グラウンドで行われたのは、11月にベトナム遠征を行う大学選抜チームの選考会だ。35人が招集され、3チームに分かれて総当たり戦を45分ゲームで行った。遠征がリーグ戦開催時期のため、メンバーは、関東1部所属の1、2年生に絞られている。狭い世界ではあるが、高校サッカー経験者にとっては「有名選手」だらけだ。赤ビブス組では、2年前の高円宮杯U-18プレミアリーグチャンピオンシップを優勝した流通経済大柏高出身のジャーメイン良(流通経済大)が計2点を奪って貫録を見せた。黄ビブス組では、2013年度の高校選手権で準優勝した星稜高出身のFW寺村介(中央大)らが躍動。河辺も高校2年次には全国高校総体に出場してはいるが、名の知れた存在とは言い難い。それでも1学年上の選手たちとそん色のない働きで存在感を示した。

「同世代の有名選手」に、ようやく追いついた。高校進学時は大分U-18のセレクションに不合格。県外の高校からは声がかかったが、地元でサッカーと学業の両立を目指し進学校の大分西を選んだ。「高校は県1部だったし、国体のメンバーにも入れなかった」と決して派手ではない経歴を振り返る。当時の目標は、教員になることだった。しかし、高校時代に自信を付け、プロへの憧れを強めた。スカウトされたわけでもなく、力試しのつもりで受けた明大のセレクションに合格。見事に自身の可能性を切り拓いた。「入学当初は名前負けして怖じ気付いていたし、まだパスを受ける前の動き出しとか守備面とか課題は多い。でも、プロに行きたくて、ここに来た。関東選抜とかに入って行かないと道は開かれない。今日は、そのチャンスだと思って来た」と挑んだ選考会の結果は果たして――自身にとって初の海外遠征が実現すれば、夢はまた一歩前進する。

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