オーストラリア戦
by 寺野典子
by 寺野典子
ボンで滞在中のホテルは家族経営のアットホームな宿だ。フロント前も壁には、宿泊者がドイツと日本のグループリーグのスコアー予想を書き込む紙が貼られている。
私の予想は1-1。「前半の終わりか後半開始後に日本が先制点を決める。最悪1失点してもオーストラリアの猛攻に耐えたのだから、1-1でよかった」というイメージ。
予想外なことは結構あった。いくつもゴールチャンスを作ったこと。宮本を中心としたDF陣は自分たちのペースで守備ができたこと。ボランチのふたりが何度も攻撃参加したこと……。
しかし、私が失念していたのは……なんと、もっとも重要なことを忘れていたのだ。
ジーコジャパンは1-1で逃げ切るようなサッカーはしないということ。
残り時間はロスタイムを入れても15分あまり。スコアーは0-1で日本リード。同点弾を狙うべく攻めてくるオーストラリア。日本はその攻撃を阻止し、そこから攻めたが、なかなかゴールネットは揺らせない。
「決められるときに決められれば」という試合後の選手たちの声が頭によぎる。ミスが目立った試合でもあった。
ジーコは柳沢に代わり、小野をボランチとして投入。ここから狂いが生じる。「中盤でボールを保持したい」という意図からの小野起用だったが、1トップになった高原は戸惑ったという。
そのうえ、ここからガクンと運動量が落ちた。パワープレー対策として、新しいFWを入れる采配もあったのだが。
失点後、1-1となった段階で、福西は思った。そのままでいいと。守りすぎず、攻めすぎず。何も変えることはないんだと。
しかし、日本は攻めた。そして2失点。自陣前にはDFと福西だけという場面もあった。一人余らせるという基本が崩れ、相手と同数で守っていた。だから、「DFは悪くない」と中村はいう。
現日本代表は1-1の引き分けで逃げ切る美学はないのだろうか? しかし選手選考を見ても超守備的なボランチもいないし、センターバックの数も極端に少ない。
取られても取り返す。そういう選手構成だが、あいにくと点はとれないのだ。
勝利という“夢の時間”が後半39分まで長く続いたことで、落胆は大きすぎるが、ジーコジャパンらしい試合だったのかもしれない。こういう代表チーム、監督だということを改めて思い知った。