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[クラブW杯]菅野が“オフ返上”でサントス戦へ猛練習「これが僕のリカバリー。勝たないと何も残らない」

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 クラブW杯で“世界ベスト4”といえる準決勝進出を果たした柏レイソルは12日、14日の南米王者サントス(ブラジル)戦に向けて愛知県内のグラウンドで練習を行った。120分間の末のPK戦にまでもつれた前日のモンテレイ(メキシコ)戦に先発したメンバーは、豊田市内のスーパー銭湯に出向いて疲労を取るなど体力回復に務めた。GK菅野孝憲は控え組の練習にフル参加し、大一番に向けて心身ともに高めた。

 モンテレイ戦では、PK戦で一番手のキックをセーブしたほか、再三のファインセーブで勝利に貢献した菅野。一気に人気者になっていた。この日の練習には、普段は名古屋グランパスファンだという地元のサッカー少年たちが約10人見学に訪れた。練習後、選手にサインをおねだりしたが、一番人気は守護神だった。菅野の冷静かつ気迫あふれるプレーが、本来は“敵地”の少年たちの心を打った。

 だが、菅野はいつも通りだった。先発メンバーは事実上のオフで、チームが用意した車で露天風呂やサウナなど最新鋭設備が揃ったスーパー銭湯で連戦の疲れを取ったが、菅野は練習にフル参加。約1時間半、みっちりと汗を流した。ミニゲーム形式のメニューやシュート練習でもゴールマウスに入り、本番さながらの真剣な顔つきで、シュートの雨を受けた。体の切れ、好セーブの感覚を維持するために体をいじめた。

「いつも通りです。試合の次の日は練習してるんで。次の試合に向けて練習しました。何も変わったことはしていないですね。いつも通りのリズムです。これが僕のリカバリーです」

 菅野は涼しい表情で明かしたが、いくら走る量が少ないGKとはいえ、疲れがないはずがない。死闘の連続だったリーグ戦を終えた直後の世界大会。見えないプレツシャー、またホテル住まいなどの環境の変化もあり、普段とは違う疲労があることはいうまでもない。GKは特に頭の疲れが多いポジション。露天風呂でリラックススする選択肢もあるが、いつも通りを貫いた。これが“菅野スタイル”。リーグ戦と同様の流れで調整し、心身を研ぎ澄ました。

 14日は名門サントスと対戦する。多くの選手が「ゲームの世界ですね!」などと心を踊らせる中、菅野は冷静だ。「やることは変わらない。急に守備が強くなったり、個人的に技術が上がることはないので。自分たちの力を出すことが次の試合にむけて大事」と静かに闘志を燃やした。そして「初戦より、前の試合(モンテレイ戦)のほうが良かった。だから、次の試合はもっと良くなると思う。本来の個人のパフォーマンス、チームのパフォーマンスというのは、サントス戦のほうが見せられるんじゃないかと思う」とこれまで以上の好プレーを約束した。

「個人的なこともありますけど、日本を代表して、日本のために結果を残して、いろんなものを与えないといけない義務があると思う。柏で言えば風評被害がある。柏の良いニュースをどんどん発信して、いろんな意味で盛り上げられたらと思う」

 菅野は今大会、口々に震災被害に苦しむ日本に元気を与えたと話しているが、菅野の父親は福島県出身で、親戚には東日本大震災の被害にあった方がいるという。菅野は“日本代表”として東北に、もちろん本拠地の柏に、何より日本全体に明るい話題を届けて元気づけたい思いがある。

「限られた人しか戦えない舞台。そういう喜びを感じながらやりたい。もちろん、結果にこだわる。勝たないと何も残らない。結果が出るように頑張りたい」と宣言した。サントスを倒せば、モンテレイ撃破の何倍もの明るい話題となる。守護神は再び日本全土に興奮と感動をもたらす。

[写真]子供にサインをおねだりされた菅野。再び夢や感動を与えるプレーを見せる

(取材・文 近藤安弘)

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