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勝利の遠い横浜FM DF中澤「余裕がないよね」

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[4.26 J1第9節 横浜FM0-1F東京 日産ス]

 試合終了後、選手たちがロッカールームへ消えると、FC東京のサポーターは「マッシモ・トーキョー!!」と声援を送った。これに応えてマッシモ・フィッカデンティ監督は、ロッカールームから出て来てサポーターと喜びを分かち合った。普段は静かで、極めて冷静な指揮官が、あそこまで感情を見せるのは珍しい。それだけ、この勝利がイタリア人監督には会心だったということだろう。

 横浜F・マリノスのDF中澤佑二は「ホームだから、絶対に勝たなければいけなかった。Jで優勝するためには」と言い、「僕らは、相手の思惑通りに攻めてしまった。そこでパスを出したら取られる、っていうタイミングで取られていた」と振り返る。失点の場面、中盤でFW渡邉千真のプレスをかわそうとしたMF中町公祐が引っ掛かり、ボランチの相方であるMF富澤清太郎と交錯してしまう。そのこぼれ球をFW平山相太に拾われてシュートを打たれると、GK榎本哲也が弾いたボールをMF東慶悟に押し込まれた。

 この場面について、かつて横浜FMに所属していた渡邉は「(中町が)あっちに来るのが、分かっていました」と胸を張ったが、中澤も渡邉のことは分かっていたのだから、と話す。「平山も、(渡邉)千真も、そんなにガンガンくるプレーヤーじゃない。前半から辛抱強くボールを回していたら、米本(拓司)とか高橋秀人に食われることもなかった。結局、そこに突っ込んじゃっていたからね。彼らのストロングポイントにわざわざ突っ込んじゃった」と、前方までボールを運べなかった前半の戦い方を悔やむ。

 AFCチャンピオンズリーグでは日本勢唯一のグループステージ敗退。加えてリーグ戦でも5試合未勝利という状況に、焦りがあったのだろう。「ボールをもらうとき、みんなが『何かやろう』『どうにかしてやろう』と少し感じ過ぎているのかな。ドリブルで行ってやろう、パスを出してやろうと意識しすぎている」と、中澤は指摘した。

「余裕がないよね。みんな急いでドリブルを仕掛けちゃったり、無理にキープしてタメをつくっちゃったりしていた。相手が来ているんだったら、もう一回やり直して、何回も何回も後ろでゆっくりと自分たちのリズムができるくらい回してもいいのかな。気温も上がっていたし、F東京も中盤まで行かないと、プレスに来なかったのでね。バックパスに対しては(プレスを掛けに)来ますけど、横パスを回しているぶんには来ないので、もう少し自信を持って回せたら良かったんですけど」

 DF小林祐三も、中澤と同じように立ち上がりは、パスを回すべきだと感じていたという。「選手各々がどう思っているかはわからないけど、オレは別に(FC東京のプレスを)なんとも思わなかった。『3ボランチにしては、プレッシャーが早いな』と思ったくらい。けど、同時に『こんなの絶対に90分持たない』とも思っていたから。68メートルを3人で守備するなんて、そんなに簡単なことじゃない。だから、前半は我慢かなと思っていた」と、振り返っている。

 1点を追う後半、F東京陣内でボールを回し続けた横浜FMは、シュートを1本も打たせなかった。それだけの力があるだけに、やはり立ち上がりの失点が悔やまれる。「疲労は感じなかったけど、ああいうプレーをしていたらね。前が悪いとかじゃなくて、全体の問題。DFラインからボールを進めていかないといけないし。後半はボランチを1枚にして、リスクを負ったんだけどね…。今が苦しい時期」と、DF栗原勇藏は険しい表情を見せた。

(取材・文 河合拓)

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