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都並敏史のギリシャ戦分析「監督が水を差した消化不良の一戦」

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 前回大会の16強を上回る結果を求めて、ブラジルW杯に挑んだザック・ジャパン。しかし、初戦でコートジボワール代表に逆転負けを喫したチームは、第2戦でも前半に退場者を出したギリシャから最後までゴールを挙げられずに、負けに等しいスコアレスドローを演じた。結果、2試合を終えて勝ち点1。グループステージ最終戦を前に、自力での決勝トーナメント進出は、なくなってしまった。ギリシャ戦では、日本に何が足りなかったのか。そしてコロンビア戦の前に、何をするべきなのか。現地でギリシャ戦を解説し、現在もブラジルで取材を続ける元日本代表DF都並敏史氏が、鋭く指摘する。

 率直にギリシャ戦の感想を言うと、いろんな悔しさがありますね。正直、消化不良です。試合内容は、悪くありませんでした。ただ、結果が欲しかった中でチャンスをつくったのに決め切れなかったのは、運だけが原因ではありません。チャンスと感じたとき、チャンスに近い場所にいる人たちの共通理解が足りない印象を受けました。相手のディフェンスに対して、自分たちが変化を起こすことがチャンスにつながるのですが、どこにポジションを取るべきなのか、分かっていない選手が見受けられました。そういうチャンスにつながるところの選手たちの関係性が薄かった感じがしています。

 ギリシャは守りが非常にうまく、CBはとても強かったので、CBを外しながらうまく攻めるとか、もう少し賢く戦わなければ、ああいう形になってしまいます。前半38分にギリシャのMFコンスタンティノス・カツラニスが退場しましたが、あれでギリシャは『この試合は勝ち点1でいい』というプランを固めたのは間違いないでしょう。逆に11人いたときの方が、日本には勝ち点3をとるチャンスがあったように思います。DF長友佑都に付いていたMFヨアンニス・フェトファッツィディスは、全然、動きについていけていなかったので、ラッキーだなっていう感じでしたからね。

 10人の相手を崩すことも、絶対にやらなければいけない仕事ですし、日本に突きつけられた課題ではあります。数的優位になった日本は、DF内田篤人が何度もチャンスをつくっていました。しかし、最後のところで内田の狙いと周りの狙いが合いませんでした。GKとDFの間に入れるクロスを上げるなら、DFの前に入る選手が一人と、こぼれ球に備える選手、CBをつり出す選手が絡まないといけません。内田のクロスがどこに入るかを迷わせて、相手に狙わせないような動きを組み合わせないと、苦しいわけです。そういうところの詰めが甘かった。老練な予測の良いCBを騙すような、高いレベルのコンビネーションはありませんでした。チャンスはできているけど、大きなチャンスにするレベルではなかったということです。

 たとえばDF長友佑都であったら『CBのところにばかり、クロスを放り込んでいてはダメだな』とか、内田だったら『蹴る前に見過ぎていたらダメだな。ノールックで蹴らないといけないな』とか、そういう個人の課題は見つけられたと思います。そういった課題を、たくさん収集しながら勝つ、というのが、ギリシャ戦でやりたかったことですし、うまくやれば本当に全部、手に入れることができたはずです。だからこそ、もったいなかったと感じますね。

 というのも、日本は勝てなかっただけでなく、課題も収集しきれなかったからです。僕は試合を見ながら『なんで点が入らないのか』というところにフォーカスしながら、『何回やり切れるんだ』というところも注視していました。ところが、そこでアルベルト・ザッケローニ監督に水を差された感じがしています。最初に僕が『悔しい』と言った理由の一つは、そこにあります。選手の中には、同じ悔しさを感じている選手もいるのではないでしょうか。

 具体的に言うと、今大会、日本は地上戦の攻撃サッカーにトライしていました。ザッケローニ監督には、最後まで、それをさらにレベルアップさせるための采配をしてほしかったのですが、終了間際にはDF吉田麻也を最前線に上げて、ボールを放り込む、パワープレーを見せました。なぜ、そうなったのかがわかりません。試合後の記者会見で、秋田豊も質問をしていたのですが、答えを濁されてしまいました。

 ザッケローニ監督は、代表メンバーを発表した際に『パワープレーの選択肢は捨てた』と言っていたわけですからね。もちろん監督の価値観は尊重されるべきだし、何をやってもいいのですが、個人的には交代枠も残っていましたし、FW齋藤学やFW清武弘嗣を起用するとか、地上戦でやり切ってほしかったですね。もちろん、パワープレー自体はいいのですが、『パワープレーは、ない』と公言していた中で、吉田を上げた形で戦おうとすると、どう戦うのかハッキリしません。自分たちのやろうとすることを放棄したことは、非常にもったいない感じがします。

 また、FW岡崎慎司が1トップをいきなりやる時間帯もありました。岡崎は所属するマインツでは1トップでやっていますし、そこでの力は分かっています。でも、今の日本代表は、前線の選手たちが、他の選手たちとうまくポジションを変えながら、DFを幻惑して、ボールを前に運んでチャンスをつくるというのが、特徴だと思うんです。しかし、岡崎が1トップに入ってから5分くらいは、1トップに居座っているだけでした。周囲の選手たちも、どこにスペースが空くのか見てしまっていました。MF本田圭佑とFW大久保嘉人はポジションを変えてやろうとしていましたが、お互いが、どこに動くかわかるようになっているのがコンビネーションだと思うんです。いくら岡崎がすごくても、『どうなんだろう』となってしまった。そういう無駄な時間をつくってしまったことも、もったいなかったですよね。

 コロンビア戦の前に、選手たちには監督に『最後はパワープレーをやるんですね?』という確認をして来てもらいたい。日本代表の選手と監督は、どこか生徒と先生のような関係に見えます。でも、その関係を変えていかないといけない。勝つ、負けるという根幹にかかわる戦術をどうするのか。最後にパワープレーをすることを変えるのか、変えないのか。その話し合いを監督とするべきです。

 理想としては、監督が『パワープレーはやらない』と言うことですが、どうしても『やる』と言うのであれば、そこから先は選手たちが監督の考えに、融合しないといけません。監督の戦術に合わせた戦い方を、自分たちでつくることです。たとえば、最初にロングボールを吉田に当てて、そのこぼれ球を拾って、もっと深くに運び、最後はマイナスのクロスにつなげていくとか。そういう形を選手たち同士で導き出す必要があります。

 以前、風間八宏(現川崎F監督)に聞いたのですが、ドイツでは選手たちが『こんな戦術でやっていても負けるけど、いいのか?』って、監督に言うそうです。それでも監督が『やれ』と言うと、『わかった、プロだからやる』と言って、あとは自分たちで考える。選手たちも、勝利給が欲しいし、勝ちたいわけですからね。日本代表にも欧州組が増えましたが、まだ、そこまではいっていません。みんながザックの顔色を気にしている。この状況は、良くありません。サブの選手たちはそれでもいいかもしれませんが、長友あたりがそんな感じではダメだと思いますね。今までどおりにパワープレーだけやって、可能性の薄い攻撃を繰り返しているのであれば、それは選手の責任です。監督だけの問題ではありません。

 結局、今のままでは結果を出せなかっただけではなく、日本代表がW杯を戦って得られるはずだった、しっかりとした尺度もブレてしまいそうになっています。僕は、それが何よりも悔しい。十分にやれそうな感触があったのに、それを阻止するような監督の動きがあり、最終的に『負けました』『検証も難しい』となるのは、最悪のパターンです。最終戦の相手コロンビアとは、普通に戦えば、日本が守って、守って、守り抜くというくらいの力関係にあります。でも、この日本代表は前向きな気持ちで戦う集団です。攻め続けて、検証材料を引き出しに入れつつ、結果を求めてほしい。攻撃的なサッカーでしか、結果を求められないチームのはずですから、それだけはやり通してほしいですね。

 最後にもう一つだけ。試合が終わってから、現地在住のコーディネーターの方と話をしていたときに「このチームは大人しすぎる。他のチームはもっと戦っている」と言われて、ハッとさせられました。確かにピッチ上で強い気持ちを見せて、戦っている選手というのは大久保を筆頭に少なかったかな、と。昔、僕らの時代の日本代表は、今のチームと比べたら下手だったけど、それでもガツガツとケンカするくらいの勢いで試合に臨んで、相手がシュンとしちゃうようなこともありました。今のチームは、サッカーはするけれど、そういう戦う気持ちの部分が見えてきません。日本は今、良くなっていく途中で、足りないものを学んでいる期間です。その中で、『これまでの日本代表にあったよな』というものも付け足していって、もっともっと良くなってほしい。コロンビア戦では、戦う姿勢をもっともっと前面に押し出して、挑んでもらいたいですね。

(取材・構成 河合拓)
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