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「いつか僕の仲間に」 鹿島MFカイオが鹿島高のトレーニングに“サプライズ参戦”

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 鹿島アントラーズのMFカイオが6月某日、茨城県の強豪・鹿島高のトレーニングに“サプライズ参戦”した。放課後のグラウンド。基礎練習を終えた鹿島高サッカー部の選手たちの前に突如、カイオが姿を見せると、高校生たちは一様に驚きを隠せず、戸惑いながら拍手で地元のプロプレイヤーを迎えた。

「いい練習をしましょう」というカイオの挨拶で練習はスタート。爆発的なスピードを生み出すナイキのフットボールスパイク『マーキュリアル スーパーフライ V』を履いたカイオが高校生と一緒に行ったのはスピードに特化したトレーニングだった。

 1つ目のメニューはクイックネスと加速力を鍛えるもの。オフェンスの選手とパサーがゴールと平行に立ち、その間にディフェンスの選手が入ると、オフェンスの選手は限られた空間でフェイントをかけるなどしてマークを外し、パスを受けてシュートに持ち込んだ。

 カイオのフェイントの速さには、味方であるはずのパサーも騙され、パスを出せない場面もあったほど。カイオは「僕は攻撃の選手なので、できるだけDFの足元を見るようにしている。どこかで相手の重心が片足に乗るタイミングがあるので、常にそのタイミングを探している」と具体的なアドバイスを送り、ディフェンス側の選手に対しても「僕はあまり守備は好きではないけど、スピードには自信がある。だから、相手が動き出したり、仕掛けるのを待って、自分が追いかけるようにしている。ステップを踏みながら、相手のタイミングを待っている」と、守備の対応についてレクチャーした。

 2つ目のメニューでは、スプリント力とトップスピードにおけるプレーの正確性が求められた。ゴールから50mほど離れた両サイドにオフェンスの選手が立ち、ボールを持った選手がトップスピードでドリブルを仕掛け、もう一人がラストパスからシュートを打つというもの。ディフェンスの選手はオフェンスの選手より一歩下がった位置からスタートし、追いつけなくてもパスコースに回り込むなどして阻止を狙った。

 スピードの差が顕著に表れるメニューだったため、カイオに追いつけない選手ばかりだったが、その中でもカイオのプレーをマネしようとするなど工夫しながら練習をこなしていた。これにはカイオも「サッカーにはずる賢さも必要だし、相手との駆け引きを制した者が試合も制していく。マネをするという意識は大事」と感心し、プレー中の意識や精神面についても“金言”を授けた。

「いくらスピードで相手の前に出ることができたとしても、最後のラストパスやセンタリングを丁寧にやらないと、チームの勝利に結びつけることはできない。それを意識してもらえれば、必ずチームが勝つ確率は高まると思う。落ち着いてプレーすることも大事で、僕は周りの声が聞こえないぐらいの状況に自分の精神状態を持っていくことを心がけている」

 その後は3チームに分かれてハーフコートでミニゲームを行い、選手からの質問も受けたカイオ。「どんなキーパーが嫌いですか?」という質問には鹿島のチームメイトであるGK曽ヶ端準の名を挙げ、「曽ヶ端選手は点が取りにくいキーパーです」と答えた一方、「ただ、キーパーや相手の選手を苦手と思えば、それが自分のマイナスの要素になる。あくまで自分の強みを考えてプレーしてほしい」とエールを送っていた。

 最後には全員で集合写真も撮影。「ここにいる一人ひとりがプロを目指していると思うので、日々の努力や、楽しくサッカーをやることを忘れずに取り組んでいってほしい。あと、忘れてはいけないのは勉強。サッカーだけに集中しすぎて、勉強が疎かになってはいけないので、そこも力を入れてやってください」と、文武両道の大切さを説き、「いつかこの中のだれかが僕の仲間になることを期待しています」と白い歯をこぼした。

(取材・文 清水祐一)

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