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「ユーティリティーでは専門職に敵わない」新潟MF原輝綺、開幕スタメンデビューを飾った18歳の葛藤

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市立船橋高からアルビレックス新潟に加入したMF原輝綺

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 今季、市立船橋高からアルビレックス新潟に加入したMF原輝綺は、クラブ史上初となる高卒ルーキーとして開幕スタメンでJデビューを飾った。その後も先発の座を守り続ける18歳の若武者が、プロサッカー選手として歩み始めた現在の心境、そして、5月に韓国で行われるU-20W杯への思いを語った。

開幕戦前日は緊張したけど
当日は不思議と落ち着いた


――J1リーグ開幕戦でスタメンデビューを飾り(対広島△1-1)、周囲の反応も大きかったと思います。
「確かに周りからの反応はありましたが、両親もあまりサッカーを知らないので『おめでとう』くらいだったし、自分は失うものは何もないと良い意味で割り切れていたので、過剰に何かを感じることもありませんでした。開幕戦の前日は緊張していたけど、当日の朝起きたときは不思議と落ち着いていたので、ああいう場に、自分のような状況で立たされたら、緊張しない人の方が多いかも知れません」

――リーグ戦では6節終了時点で全試合先発出場を果たし、内5試合はフル出場しています。プロの世界で通用する部分、逆に伸ばさなければいけない部分も感じていると思います。
「守備の部分だったり、スペースを埋める部分は通用していると思いますが、特に攻撃面での課題が多いです。もうちょっとボールを落ち着かせたいし、自分にボールを入れてほしいタイミングで受けられないことがあるので、タイミング良く受けられるようにしたい。自分がボールを受けて前を向けなくても、相手FWを食い付かせることができれば、CBのどちらかが空いて違う展開ができると思います。新潟のサッカーは縦に速いサッカーで、前線にスピードのあるホニがいるので、そこに頼ってしまうことがありますが、全部が全部それでは厳しくなるので、自分のところでコントロールできるようになりたいですね」

――ポゼッションを高めようというのではなく、攻撃の選択肢を増やせればと?
「ボランチの位置でボールを受けられれば、チームとしては少し前進できるし、時間も多少は作れると思います。ボールを受けてからは縦パスを入れることを意識していて、試合を重ねるごとに回数は増えていると思いますが、縦に入れるだけでは相手にも読まれるので、サイドチェンジも増やしていきたい。ただ、まずは自分にボールが入らないと始まらないので、入れるタイミングやほしいタイミングを周囲の選手と共有できるように、もっともっとコミュニケーションを深めていきたいですね」

――一方で、守備面では手応えも感じているようですね。
「ボランチでコンビを組む(小泉)慶くんが上がったあとのスペースを埋めたり、相手の縦パスに対して、自分の出足が良ければ前を向かせないことができるし、自分のところでボールを奪えなくても、パスコースを限定することで次のプレーでチームメイトが取ってくれます。無理に自分で取ろうとして欲張って入れ替わられるよりも、まずは相手の攻撃を遅らせるのが大事です。もちろん自分で奪えると思えばしっかり行くし、無理だと思ったときは味方に任せるという判断はできている手応えがあります」

――第5節G大阪戦のチーム2点目は、原選手のボール奪取が起点となって生まれました。
「ガンバ戦のゴールにつながった場面は、予測とタイミングがバッチリ合いました。ああいうときはガッツリ行きますが、思った以上にパススピードが速いときや、相手がトラップした瞬間に行けなければ止まらないといけない。高校の時はある程度、タイミングが遅れても体を激しく寄せればボールを奪えた部分もありましたが、プロだとそれは通用しません。タイミングに気を使わないと、かわされるシーンも増えてくると思います」

――ここまでの試合で納得できるプレーもあったと思います。
「今話したガンバ戦のボール奪取は良かったと思いますが、あとは課題しかありません。できていることよりも、できていないことの方が気になっていて、今はやれることを増やしたいと日々考えています」

このポジションで勝負できると
言い切れる選手ではない


――ボランチだけでなく、市立船橋高時代にはCBや右SBでもプレーし、新潟では第6節鳥栖戦で左SBで起用されました。
「高校のときから『いろいろなポジションができる選手』『ユーティリティーな選手』と言われていましたが、複数のポジションをこなせるのは自分のためになるし、まだサッカー選手として経験が浅いので、今後のサッカー人生を考えても、いろいろなポジションを経験することはプラスだと感じています。でも、一つのポジションでプレーして手応えがあっても、ユーティリティーと呼ばれる選手は、次の試合で他のポジションに回ることもあるので、悩むこともあります。いろいろできるのは良いことですが、ユーティリティーという言葉はうれしくないような……(笑)」

――いろいろなポジションでプレーできる分、器用貧乏になる可能性も?
「そういう言い方もできるかもしれません。ユーティリティーな選手は、専門職の選手には敵わないだろうと思っているので」

――自分の持ち味が発揮できるのは、どこのポジションだと思いますか。
「それは見る人、起用する人によって違うと思う。いろいろなポジションをやってきたことが今に生きているし、決して否定的ではないけど、自分でもどういう選手になっていくんだろうとか、自分がどういう選手か分からなくなることもあります。プロ1年目という言い方は良くないかもしれませんが、自分はまだ、このポジションで勝負できると言い切れる選手ではないし、どこが一番合っているポジションなのか、はっきりと分かっていません。自分でもユーティリティーな選手なんだろうなとは思いますが、やっぱり専門職の選手には敵わない感覚がある。そういう葛藤があるけど、今後もいろいろなポジションを経験しながら、自分の可能性を探っていくことになると思います」

――改めて、自分の持ち味を言葉にすると?
「守備は外せない部分だと思います。カバーリングだったり、危険なスペースを埋めていくのは自分の特長だし、押し込んだときのカウンター対策、リスクマネジメントできるのも強みです。ただ、他の選手より勝っているとは思っていないし、試合によって求められることは変わるので、その試合で求められること、自分がやるべきことをやるだけだと思っています」

U-20W杯のピッチに立ったら
本当に何かが変わるかもしれない


――昨年のAFC U-19選手権はギリギリでメンバーに入ったと話していましたが、あれから半年が経ち、U-20日本代表の軸になっていく覚悟など、心境に変化はありますか。
「半年前は本当に拾ってもらったという感じでしたが、U-19選手権では試合終盤に投入されるクローザーのような役割で起用してもらいました。あのときと立場が変わったとは思いませんが、ある程度、代表に呼ばれ続けることで、ここまで来たら、とにかくU-20W杯メンバーを勝ち取りたい気持ちがあります。メンバーに選ばれるのと選ばれないのとでは、その後のサッカー人生に大きな差が出てくると思うし、試合に出るのと出ないのとでも同じような差が生まれると思っています。自分のサッカー人生を賭けるくらいの気持ちを持っていれば、本当に何かが変わるかもしれない大会だと思うので、その可能性がある以上、絶対にメンバーに入りたいですね」

――南アフリカ、ウルグアイ、イタリアと同組に入りました。対戦国の印象はいかがですか。
「昨年対戦したアルゼンチンやフランスは強かったと感じたけど、南米予選ではアルゼンチンが4位でウルグアイが1位だったので、ウルグアイは間違いなく一番強いと思う。それに欧州予選ではフランスが1位でイタリアが2位だから、厳しいグループに入ったなと思います。でも世界中が、ウルグアイやイタリアが勝つだろうと思っているはずだから、そこで勝てば注目されるだろうし、一気に勢いにも乗れると思うので、対戦するのを楽しみにしています。選手個人としても自分のことを見てもらえる良い機会だと思いますが、メンバーに入らないと意味がないので、まずはメンバーに入ることだけを考えたいです」

――U-20日本代表ではボランチでの起用が考えられますが、坂井大将選手や神谷優太選手、市丸瑞希選手とライバルが多いポジションです。
「皆、技術が高いし、経験もあって、僕は劣っているところばかりですが、遠征や合宿のたびに良いところを盗ませてもらっているつもりなので、残された時間で少しでも成長させていきたいです」

――現在のU-20日本代表は、20年に行われる東京五輪の中心となる世代です。五輪を見据えながら、今後も活動していくことになると思います。
「まずはU-20W杯があるので、そのメンバーに入れるようにやっていく必要がありますが、何事においても積み重ねが大事だと思うので、一つひとつステップアップしていきたい。日本代表は、選ばれたいと思って選ばれるものではないし、入りたくて入れる場所ではありません。選ばれてそれで終わりではなく、選ばれた責任があると思っているので、代表のユニフォームを着ることになったら、誇りを持って戦います」

(取材・文 折戸岳彦)


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