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関東1部4校撃破の下剋上…元Jリーガー鈴木修人監督の下で輝く明治学院大の熱い夏

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アミノバイタル杯で旋風を巻き起こした明治学院大

 一言でいえば、“快挙”。それが、今大会における明治学院大の躍進だった。

 『「アミノバイタル」カップ 関東大学サッカートーナメント大会』は、関東で唯一のトーナメント大会。関東リーグ所属の24大学だけではなく、その下のカテゴリーである都県リーグ所属大学も、春から始まる予選を勝ち抜けば本大会に参加できる。

 東京都1部リーグ所属の明学大も、そんな経緯を経て大会の出場権を得た。ちなみに今年度、都県代表としてはほかに尚美学園大、国際武道大、日本大、平成国際大、江戸川大、大東文化大、作新学院大の8大学が参加しており、合計32大学がノックアウト方式で戦った。

 一発勝負のトーナメント大会らしく、ジャイアントキリング(大番狂わせ)が起きやすい大会ではあるのだが、それにしても今年の明学大の強さは図抜けていた。

 初戦では昨年度リーグ王者であり、前年度本大会準優勝の筑波大と対戦。先制し、一度はU-21日本代表MF三笘薫(3年=川崎F U-18)のゴールで追いつかれるも、勝ち越し点をあげ2-1で勝利。2回戦の東洋大戦は、最後に1点を奪われたものの一時は2-0とリードして勝った。3回戦は熱戦だった。鈴木修人監督の母校であり、現在関東リーグ1部の早稲田大と対戦。拮抗した試合は終盤まで動かなかったが、終了間際の86分にルーキーMF武田義臣(1年=実践学園高)の2試合連続ゴールで、早大を退けた。この時点で、夏の全国大会である総理大臣杯の初出場と、都リーグチームとしては初となるベスト4進出を決めたが、明学大の勢いはまだ止まらない。準決勝では明治大とシーソーゲームを演じたうえ3-3でPK戦に突入。PK戦を5-3で競り勝って、決勝進出を決めた。

 倒した関東リーグ大学は実に4チーム。いずれも1部所属で、近年にはチャンピオンになったチームも多い。決して組み合わせがよかった、というわけではない。実際、法政大のFWディサロ燦シルヴァーノ(4年=三菱養和SCユース)は準決勝戦後、明学大について「リーグ戦で4連勝できるチームがどれだけいるか」とコメントし、「関東1部を4チームも倒しているチームを、“ジャイキリ”とは言えないのでは?」と、“格下”相手ではない警戒感を露わにしたくらいだ。

 決勝戦も含めた全5試合中、明学大は4試合で先制点を奪取。唯一先制点を許した明大戦も、その1分後に同点に追いついている。時間帯によっては引いて守り、ブロックを作ることもあるが、90分間ひたすら守ってカウンターからの一発を狙うのではない。ハードワークと前からのプレス、鮮やかな突破で相手を追い詰めた。

 記録的と称されるほどの猛暑の中、本大会は9日間で5試合というハードスケジュールで行われた。準決勝と決勝は“中0日”の連戦。それだけに、どのチームを選手のコンディション維持が課題となったが、明学大は体力的な部分でも、関東1部校に引けをとらなかった。もちろん他大学同様、ターンオーバーで選手を休ませるなどしたが、最後まで「足をつる選手が出なかったことは収穫」と鈴木監督。序盤の動きが硬かった3回戦の明大戦では、「ボールを失ってもいいから、前からいってプレスをかけろ」と発破をかけた。「個の力では勝てない。チーム力で勝つしかない。そのためにもハングリー精神を出してほしかった」。

 参考になったのは、ロシアW杯だ。「特にアルゼンチン対アイスランド戦は参考になった」と鈴木監督。小国アイスランドが、サッカー王国・アルゼンチンに互角以上にわたりあった試合は、下位カテゴリーから今大会に挑むチームを奮い立たせた。また「ロシアW杯では得点の半分以上がセットプレーから生まれた」(同監督)として、セットプレーを強化。明大戦の得点はPK、FK、CKからとすべてセットプレー絡み。準決勝での怪我のため、決勝はベンチ外となったが、9番・黒石川瑛(3年=実践学園高)、10番・行武大希(3年=桐蔭学園高)に加え、21番・鳥谷部嵩也(4年=桐蔭学園高)といった強烈な突破力をもつ攻撃陣を抱えているだけに、セットプレーの機会も多い。安易にファウルで止めれば、たちまちセットプレーで明学大の餌食になった。

 チームを率いる鈴木監督は市立船橋高から早稲田大を経て、鹿島アントラーズ入り。湘南ベルマーレ栃木SCギラヴァンツ北九州など、約7年間のプロ生活を経て、2015年に明学大にコーチとして招聘された。監督には昨年から就任している。

 コーチ就任当時の明学大は部員が80~90人程度。鈴木監督は「サークルみたいなチームで、雨が降れば練習が中止になるのか聞かれた」と笑う。その後、部員は200人まで増えて戦えるチームにはなったが、いわゆるスポーツ推薦制度はない。人工芝のグラウンドは他クラブと共用で、ふだんはその半面を使って練習をする。それでも人工芝のグラウンドを使えるのはまだマシなほうで、「申し訳ないが、下のほうのチームは土のグラウンドで練習をしている状況」だという。

 環境的には決して恵まれていない中で、つかみとった今大会の快進撃。鈴木監督はその理由を「誰よりも勝負にこだわったから」だという。「大学は育成年代の最後のチーム。結果にこだわらなければいけない」と鈴木監督。選手たちには「強いチームが勝つのではない。勝つチームが強い」と言い続け、選手もそれに応えた。

 決勝戦では惜しくも法大に逆転負けを喫したが、最後まで勝負にこだわって前線に放ち続けた、強く性格で鋭いキックとクロスは、ほかの関東のチームの目にも脅威に映ったに違いない。

「プロとしては大成できなかった」と笑う鈴木監督だが、オズワルド・オリヴェイラ監督、反町康治監督、松田浩監督ら、プロ時代に出会った監督の指導は「今も参考にさせてもらっている。プロでの経験をこういう形で活かせるのはうれしい」。今大会では原川凌太朗(桐蔭学園高)、野原広太(三浦学苑高)、高田稜平(横浜FCユース)、高橋周(前橋育英高)ら1年生選手が多数活躍。なかでも武田義臣は、2試合連続ゴールをあげるなどの活躍を見せた。この大会での結果は「自信になった」という鈴木監督だが「本番は秋」と、東京都リーグ優勝、関東参入決定戦を経ての関東リーグ復帰に、視点を定めている。

 だが、その前に『総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント大会』への出場が控えている。「1年生の中には、高校時代に全国大会を経験した者も少なくない。その多くが早い時期で敗退している。高校時代に不完全燃焼だった悔しさ、大学の全国大会で晴らしてくれるのではと期待している」と鈴木監督。明学大の勝負へのこだわり、ハングリー精神は全国でどこまで通用するのか。大阪で開催される総理大臣杯は8月31日開幕。明学大の初戦は9月3日の2回戦で東海学園大と北海道教育大岩見沢校の勝者と対戦する。熱い夏はまだまだ終わらない。明学大の冒険はまだまだ続きそうだ。

(取材・文 飯嶋玲子)

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