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雪国のハンデを力に変え、全国決勝の日まで成長続けた青森山田が“戦国時代”の選手権で2度目のV

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選手たちの喜ぶ姿を笑顔で見守る青森山田高・黒田剛監督とコーチ陣。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.14 選手権決勝 青森山田高 3-1 流通経済大柏高 埼玉]

 05年度大会で初優勝した野洲高(滋賀)以降の選手権13大会の王者のうち、11校が初優勝校。03年度の国見高(長崎)から昨年度の前橋育英高(群馬)までは、その15校全てが異なる優勝校だ。特に08年度大会以降の優勝校に限ると、再び決勝まで勝ち上がってきたケースはゼロ。選手権はまさに“戦国時代”と言える状況だった。

 その歴史を“北の名門”青森山田高(青森)が塗り替えた。初優勝した16年度大会から2年後の今大会で再び決勝まで勝ち上がり、3試合連続となる逆転勝利。黒田剛監督は「我々が描いていたゲームプランとは異なった」と認めていたが、同時に平常心を持って追いつき、パワーのいる逆転劇を演じ切った選手たちに目を細めていた。

 年間の3分の1は雪で覆われる豪雪地帯・青森から2度目の選手権制覇。選手たちが勝ち取った優勝であることは間違いないが、黒田監督をはじめとするコーチングスタッフの力も大きい。情熱のある指導、そして寝る間を惜しんでのスカウティング……。青森県予選やプレミアリーグから選手権全国大会へ向けてシステム変更し、どんな相手にも対応できる力、シュートを打たせない守備、PK戦など全国大会へ向けて細部にこだわって準備してきたことが、見事に成果を発揮した。

 日常的に人間的な部分から成長を求め、選手たちが貪欲に吸収することを促すような言葉がけ。黒田監督によると、高校3年生の選手権時期になると、「これ以上、頭にも身体にも入らない時期が来る」のだという。それでも、青森山田の選手たちには全国大会決勝の日まで、学び、聞き、成長しようという姿勢。その学びを特に選手から求め続けていたのが2年前の初優勝メンバーだった。

 “やんちゃ”と表現された今年の世代も、大津高(熊本)や矢板中央高(栃木)、尚志高(福島)との“決勝戦のような”戦いを勝ち抜きながら、決勝まで成長し続けた。準々決勝、準決勝は先に失点。特に尚志との準決勝は、プレミアリーグEASTでの戦いでも1度しかなかった3失点と“青森山田らしくない”試合だった。それでも、黒田監督は選手たちに「まだまだ学べるぞ」とその苦い経験からも学ばせ、最後の1日までの成長すること、そして優勝に繋げた。

 青森の冬は長い。雪に覆われたグラウンドを逆に活用し、ひざや腰まで埋まるような雪の中での「雪中サッカー」、雪かきで体力とメンタル強化。日本一やプロ入りを目標に掲げ、高い意識を持って青森山田へ進学してきた選手たちはこのトレーニングが間違いなく将来に繋がると分かっていても、“普通に”ボールを蹴ることのできない日々はストレスになる。

 だが、「フィジカル強化、精神強化に使える雪はどんな筋トレの道具よりも意味がある」と黒田監督が語るように、春には尻周りが明らかに大きくなり、キックの飛距離を増した選手たちの姿。何より、「芝や土の上でサッカーをやりたい」という欲求、エネルギーが、春に彼らの成長を加速させるという。

 この決勝では立ち上がりに動きが硬く、不用意なファウルなどで試合の流れを流通経済大柏高(千葉)に譲っていたが、青森で人間的に大きくなり、その上で個々が成長させてきたスキルやフィジカル面を披露。連動した動きに加え、MFバスケス・バイロン(3年)やMF檀崎竜孔(3年、札幌内定)、MF天笠泰輝(3年)、CB三國ケネディエブス(3年、福岡内定)らが個で突破する、止めるという力を存分に発揮した。そして、選手たちは青森という雪国に覚悟を持って進学し、懸けてきた思いも表現。ハイレベルなプレミアリーグ勢対決を制した。

 青森山田からはアジアカップで活躍中のMF柴崎岳(ヘタフェ)やDF室屋成(FC東京)から、昨年のMF郷家友太(神戸)、MF中村駿太(山形→群馬)、今年の檀崎、三國まで次々とプロ選手が輩出されている。そして、“戦国時代”の選手権で2度目の全国制覇。失敗も経験しながら、20年以上積み重ねてきた青森山田は今、雪国に育成、勝利の新たな可能性があることを証明してきている。

 黒田監督は「必ず雪国がサッカーの育成にとって最高の条件だということが出るように、青森の良さを全国にも発信していきたい」。プラスの発想で雪国というハンデを活用して強化に繋げ、細部にこだわって選手たちの成長を促してきた指揮官、正木昌宣コーチらコーチングスタッフの下で努力を続ける北の名門が、再び選手権で結果を残して“戦国時代”を“青森山田の時代”に変える。

(取材・文 吉田太郎)

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