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孤独な草抜きから始まった3年間。募集ないサッカー部に志願、認められた鹿島学園マネージャー

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長岡美樹さん(左から2人目)ら鹿島学園高マネージャーの皆さん

[11.17 高校選手権茨城県予選決勝 鹿島学園0-1明秀日立 カシマ]

 鹿島学園高サッカー部に数年ぶりに現れた女子マネージャーが、裏方の仕事でチームを支えた。サッカー部のマネージャー募集はなかったが、長岡美樹さんは高校1年時、鈴木雅人監督に「やってみたいです」と志願した。

 08年度に選手権で活躍した忍穂井大樹コーチの代以来、不在だったというポジション。マネージャー業に惹かれ、サッカー部を選んだのは、全国を目指す部員一人ひとりの眩しい姿を見て「サポートしたい」と思ったから。

 ただ、最初はずっと草抜きだった。「続けられないだろう」と思われるなかで、毎日練習場に行き、毎日草抜きをした。「認められるように頑張った」。その姿勢はやがて信頼を得て、遠征に帯同し、監督の側で業務を覚えていった。先輩マネージャーはいない。求められることを先読みして動き、自ら仕事を見つける難しさもあった。

 毎日、授業が終われば急いで練習場に向かう。スポーツクラスと一般クラスで授業の終了時間が違うため、練習はもう始まっているのだ。水を確認し、マーカーを置き、コーンを片付け、監督に呼ばれればすぐにビブスを持って行く。

 翌年からは女子マネージャーの募集が始まり、後輩たちにも道を拓く形になった。2年生マネージャーは「いろんなことを教えてくれた。美樹先輩がいなかったらできなかった」と言う。今年もまたマネージャーが増えた。新人戦を優勝するなど、最高の瞬間も味わった。

 選手権出場にも王手をかけたが、決勝は0-1で競り負け、全国にはあと一歩届かなかった。決勝戦もテキパキとマネージャーの仕事を果たした長岡さんは試合後、静かに涙を拭いながら、準優勝の表彰を受ける選手たちをみつめた。選手と同じ悔しさを噛み締めた。

「辛いこともあったけどみんな良い人で、3年生に何回も助けられた。後悔はない。悔しいけど、3年間、今までやってきてよかったなって」

 ロッカールームを出てカシマスタジアムを離れる前に、3年生の部員は長岡マネージャーの姿を探し、握手を求め、声をかけた。ともに奮闘したもう一人の仲間を、選手は「めちゃくちゃ気が利く」「何でもやってくれました」と労った。自ら切り開いたマネージャーの道。サポート役に徹し、3年間を全力で走り抜いた。
 
(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

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