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4年ぶりに王座奪還 豊田高等特別支援学校が絶対王者・志村学園の3連覇を阻止できた本当の理由

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撮影:内田和稔

[2.16 第5回全国知的障害特別支援学校高等部サッカー選手権決勝 豊田高等特別支援学校 5-0 東京都立志村学園]

 知的障がいのある特別支援学校高等部サッカー部の全国大会「もうひとつの高校選手権」は15、16日の2日間、静岡・藤枝総合運動公園サッカー場で行われ、決勝は愛知県立豊田高等特別支援学校が、3連覇を狙った東京都立志村学園を5-0で下し、第1回大会以来、4年ぶり2度目の優勝を飾った。豊田高等特別支援学校は大会を通して無失点。2年生のFW犬塚陸は毎試合ゴールで計9得点、準決勝と決勝では2試合連続ハットトリックを達成した。

「第1回は(豊田高等特別支援学校が)優勝しました。(自分が初めて出た)去年は3位という悔しい思いをしたので、今年は優勝出来たので嬉しかったです」

 志村学園との決勝戦でも、犬塚は高い位置から守備、スピードを生かした攻撃と試合中は常に積極的に動き続けた。後半、試合を決定づけるチーム5点目(自身3点目)を決めた犬塚はそのまま倒れて負傷退場。4試合すべてに出場した犬塚にもう一度立ち上がる力が残っていないほど、力を出し切った。

 犬塚がサッカーをはじめたのは小学生の時。中学校ではサッカー部に所属し、レギュラーとしてFWで活躍した。進学した豊田高等特別支援学校でもサッカー部に入部し、1年生の時から活躍。高校生ながら知的障がい者サッカーの愛知県選抜にも選ばれるほど、力は抜きんでている。

 林正記監督は犬塚についてこう評する。

「中学で部活動をしていたのでサッカーの技術もあり、先輩たちとのコミュニケーションもすぐに取れていました。表立って行動することはなかったがまじめで素直な子です。2年生になってからは(選手権で優勝するために)後輩が出来て積極的に声をかけて引っ張っていた。練習はもちろん、準備や後かたずけなどのサポートを率先して行い。先輩たちがつかめなかった優勝に向かってチームを引っ張っていました」

 選手権出場を目指していた犬塚はアクシデントに襲われた。昨年の11月の愛知県内のサッカー大会で犬塚は右足を捻挫してチームから離脱。大会途中にエースストライカーを失いながらも、チームは力を合わせて優勝した。

決勝でも躍動した犬塚(中央、撮影:内田和稔)

 12月の高等部選手権県予選を前に犬塚は治療とリハビリに専念しながら仲間を信じてチームのサポートに努めた。犬塚が怪我をしたことで、ほかの選手たちは「自分たちでやらなければならない」という気持ちが強くなった。「(負傷して予選に出れない)犬塚を全国大会に連れて行こう」とチームがより一層まとまった豊田高等特別支援学校は県予選で優勝し、全国大会への出場権を獲得した。怪我で試合に出れなかった犬塚は仲間への感謝の気持ちが大きくなった。林監督が振り返る。

「犬塚がいない中で選手権の出場権を獲得して自信を持ち、犬塚が戻ってさらに強いチームになった。3年生も(自分で)考え、みんなで優勝するために全力でプレーが出来るようになって、以前と比べて倍以上チームが強くなりました。みんなに『ゴールを決めてくれる』と思われている犬塚はもともと、仲間のためにプレーをする選手。去年怪我をしてみんなに迷惑をかけた思いがあるので、この大会では特に仲間のために頑張ってくれました」

 4月から3年生になる犬塚は口元を引き締めて、こう言い切った。

「来年も一歩一歩(ゴールを)決めて、優勝出来るように頑張りたいです。(連覇を)目指したいです」

 追う立場から追われる立場へ。献身的な思いが強い犬塚がいる限り、チームの強さは揺るがない。

(取材・文 内田和稔)

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