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サッカー小僧の面目躍如。U-20日本代表候補MF田村蒼生は日常の充実に意欲を燃やす

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U-20日本代表候補を活性化させたドリブラー、MF田村蒼生(筑波大1年)

[6.3 練習試合 U-20日本代表候補 4-5 全日本大学選抜]

 久々に背負った日の丸の重みを感じつつ、日々の積み重ねこそが何よりも大事だということが、改めて再確認できたことも小さくない収穫だった。「代表というものを意識し過ぎてはいないですけど、大学で結果を出せれば代表も見えてくるはずですし、まずは自分のチームで結果を出すことと、日常にどれだけこだわってやれるかだと思うので、その先の代表だと思います」。U-20日本代表候補のMF田村蒼生(筑波大1年)は今まで以上に日常を充実させながら、今日も大好きなサッカーボールを追い掛けている。

 U-20候補合宿の最終日。全日本大学選抜との練習試合(45分×3本)は、2本目を終えた時点で3点のビハインドを負って、90分間を終える。田村にようやく出番が回ってきたのは3本目。「3-0で負けていて、チームとしてももっと勢いが必要だなと思っていましたし、やることは凄く明確だったので、ゴールを獲りに行くというのはチーム全体でしっかり共有できていました」。左サイドハーフに入ると、自身にもチームにも一気にスイッチが入る。

 とにかく仕掛ける。1本目と2本目に出場していた、今回の合宿でもその存在に大いに刺激を受けたというMF樺山諒乃介(横浜FM)に負けず劣らず、得意のドリブルで縦へ、中へと仕掛けていく。

 10分。FW佐藤恵允(明治大2年)、FW千葉寛汰(清水エスパルスユース3年)と繋いだボールが、足元に入ってくる。「思い切り振り抜いたら良い所に飛んだという感じでした」。右足で強振したシュートは、ゴール右スミに気持ち良く突き刺さる。チームの1点目は反撃の合図。ここからゲームはヒートアップ。お互いが得点を重ね合う。

 3-5と2点ビハインドで迎えた44分。左サイドから絶妙のクロスを放り込み、ここは千葉のヘディングこそ枠を外れたものの、45+1分には千葉が放ったシュートをGKが弾いた所に、抜け目なく詰めてプッシュ。「半分は寛汰のゴールですけど、まあ自分のゴールですかね。ライン上で触ったので(笑)」という田村に対し、千葉も自身のゴールを高らかに主張する一幕もあったが、2ゴールに絡むパフォーマンスで、スタッフ陣へのアピールに成功した。

 19年のFIFA U-17ワールドカップでは全4試合に出場し、世界との差を痛感しつつ、より大きなステージを目指して鍛錬を積んでいた中で、昨年はコロナ過もあって満足にトレーニングを行うこともできない時間を過ごし、結果的にトップチーム昇格も叶わず、悔しい想いを突き付けられた。

 柏レイソルのアカデミー同期で、プロの道に進んだ佐々木雅士と大嶽拓馬は、ルヴァン杯でトップチームデビュー。「マサトはデビュー戦で無失点勝利をしていましたし、タクマもルヴァンカップで出場していますし、凄く刺激を受けています。やっぱりプロの世界を見ながら意識して、大学サッカーでプレーしないといけないですし、目の前のことだけじゃなくて、もっと先を見据えて努力していかないといけないなと思っています」。ただ、その自覚があるからこそ、決して現状に焦りを抱いている訳ではない。

 上手いのは、誰が見てもわかる。その上で何を見せていくか。自分を客観的にも見つめられる田村は、その答えも十分に理解している。「筑波大学に入って、他のみんなはプロに入ってやっている中で、プロの選手がやっている以上に自分もやっていかないといけないと思っていますし、その中でも今日みたいに結果という所、ゴールという所にこだわっていかないとこの先も生き残っていけないと思うので、そこは自分の中でも模索している感じです」。

 自分次第で環境はいくらでもプラスに変えられる。「もちろんここでプレーしている間にも筑波大学では競争が始まっていますし、良い競争ができていると思っています」と本人も語ったように、筑波大では同期の戸田伊吹竹内崇人半代将都沖田空福井啓太も田村同様に1年生ながらリーグ戦デビューを果たしており、レベルの高い仲間と切磋琢磨し合える構図は既に出来上がっている。

 小柄な体にセンスと負けず嫌いを詰め込んだサッカー小僧。田村が目指し続けている頂は、まだまだ険しく高いがゆえに、登りがいがあることへ疑いの余地はない。

(取材・文 土屋雅史)

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