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[高校選手権]残り1分から2点、関大一はPK戦で涙

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[1.9 全国高校選手権準決勝 関大一2-2(PK2-3)青森山田 国立]

 PK戦に持ち込んだこと自体、奇跡だった。2点ビハインドのまま時計は後半44分を過ぎていた。残り1分とロスタイム。だれもが青森山田(青森)の勝利を確信していた。だが、関大一(大阪)の選手はあきらめなかった。

 後半44分、「GKもゴールも見ないで、感覚で打った。無心だった」というFW久保綾祐(3年)が追撃のゴールを決め、完全に勢いに乗った。ロスタイムにFW井村一貴(2年)が劇的な同点弾。「1点取って、あと1点で。ここで走らなかったら、いつ走るんだと。とにかくふかさないようにミートしたら上手く曲がった。そのへんは気持ちでなんとかなった」。起死回生の2得点。流れは完全に関大一に移ったかと思われたが、PK戦では青森山田のGKに3人が止められた。

 「延長があれば、走り勝つことができていたと思う」。そう悔やんだ久保の言葉は本音だろう。90分間で決着が付かなければ、延長戦なしでPK戦という大会規定が恨めしかった。

 だが、残り1分から同点に追いついた執念は、それだけで価値がある。3度目の全国選手権出場。過去2回はともに初戦敗退で、まず1勝が目標だった。それがあれよあれよという間の準決勝進出。佐野友章監督は「何だったんでしょうね。ここまで来れたのは実力以上の神がかり的なものがあったのかなと。今大会のキャッチフレーズは『信じろ!』ですが、僕らスタッフ自身がここまで勝ち上がってきたことを信じられなかった」と冗談交じりに語った。

 「うちの選手がスキルで劣っているのは分かっていたし、下手くそなチームが勝ち上がるには気持ちと運動量、集中力しかないと言っていた。それをよく選手が理解してやってくれたのかなと。それぐらいの分析しかできない」。決して前評判の高くなかったチームが一戦ごとにたくましさを増し、ベスト4まで勝ち進んだ。久保も「下手くそなんで食いついていこうと。そういう精神でやっていた」と胸を張った。

 正確なキックでチャンスをつくったMF梅鉢貴秀(2年)は「サッカーでは気持ちが大きな割合を占める。どんな上手いチームに対しても、走り続ければ戦えることが分かった。あと1年あるので、この借りを返すためにも、毎日の練習から一生懸命やっていきたい」と力を込めた。夢のような日々の間に深めた自信と、残酷な惜敗の悔しさを胸に、奇跡の続きは1年後だ。

<写真>PK戦の末に敗れた関大一
(取材・文 西山紘平)

特設:高校サッカー選手権2009

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