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[高校]復権目指す“タレント軍団”清水ユース、桐光学園とドロー

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[2.28 ジャパンユースユーパーリーグ 清水ユース 1-1 桐光学園 裾野・時之栖G]

 ユース年代の強化・育成を目的として開催されている「ジャパンユースサッカースーパーリーグ」の清水エスパルスユース対桐光学園高(神奈川)戦が28日、静岡県裾野市の時之栖グラウンドで行われ、1-1で引き分けた。

 かつては日本クラブユース選手権やJユースカップで日本一に輝くなど全国でも上位の実力を有していた清水ユース。だが07年にはプリンスリーグ東海で2部降格、クラブユース選手権でも東海予選で敗退し、昨年も全国大会で未勝利に終わるなど成績が急速に低下してきている。また育成面でもトップチームに選手を輩出できなくなってきており、07年度、08年度のチームからは昇格なし(09年度はFW鍋田亜人夢がトップ昇格)。清水地区の高校年代サッカーの不振と同じくして低迷期が続いていた。

 ただ、今年はひと味違う。この日は午前中に行われた清水と新潟のサテライト同士による練習試合に参加し、ミドルシュートでゴールを決めたエースMF柴原誠と抜群のスピードを誇るサイドアタッカー、MF石原崇兆が桐光学園戦の先発を外れ、また左足のキックが魅力のMF成田恭輔も負傷のために不在。だが、序盤から相手を押し込むと6分、DF深澤諄也のラストパスからMF進藤優東が幸先よく先制ゴールを奪った。その後もU-17日本代表FW柏瀬暁の強烈なシュートが相手ゴールを襲うなど敵陣へ攻め込む。ただ、大榎克己監督が「テンポがよくなかった」と振り返ったこの後は、相手の組織を崩せず攻めきれない場面が続いた。

 逆に、田口広也と坂本颯、そしてこの試合先発しながらわずか11分で退いた菅原慶人主将と負傷で主力FW陣不在の桐光学園にサイド攻撃から反撃を許すと、22分にMF篠崎拓也のシュートのこぼれ球をMF菅能将也に押し込まれてしまった。桐光学園は試合後に佐熊裕和監督が「ボールを取らなきゃいけないところを意識できていない選手がまだいる。攻撃に関してもまだ前を向けていない。もうちょっと恐れずプレーできれば」と振り返ったが、菅能ら中盤の選手の飛び出しで後半もチャンスをつくり、CB福森晃斗とCB高橋将吾を中心とした最終ラインも相手に多くの時間でボールを持たれながらも破綻しなかった。

 1-1で折り返した後半開始から清水ユースは10番の柴原と石原を同時投入。すると4-2-3-1システムの右サイドに位置する石原が縦への突破で脅威となり、柴原もシュートセンスの高さを披露するなど試合は清水ユースペースへと傾いていく。15分には中央からドリブルを仕掛けた柴原がDF3人のプレッシャーよりも一瞬早く左足シュートを撃ち込み、20分には同じく柴原が右クロスのこぼれ球を鮮やかなコントロールショットでゴールを襲った。また36分には左サイドを突いた石原が鋭いシュートを放ち、GKが弾いたボールに柏瀬が飛び込む。結局、桐光GK峯達也の好守に阻まれるなど勝ち越すことはできなかったが、U-16日本代表歴のあるボランチ田代諒ら「今年はタレントがいると思う」と大榎監督が評するチームは、昨年の全日本ユース選手権16強メンバーの大半を残す桐光学園との試合をドローで終えた。

 清水ユース監督就任3年目の大榎監督は元日本代表MFで、清水の創生期を支えた名選手。清水ユース監督就任前には東京都大学リーグで低迷していた早稲田大を強化し、日本一にまで導いている。古巣のユースチーム監督就任後は、中学時代に残した実績により、精神的に甘さのあった選手たちに前を向かせることなどからスタート。そして数年前までの清水ユースは清水ジュニアユースからの昇格組で占められていたが、外部からの選手を積極的に引き入れた。現在は19人中5人が清水ジュニアユース出身以外のメンバー。今春に加入する1年生について、ジュニアユースからの昇格組は10人中5人のみとなっているという。「欧州のように3ヵ月間とかで常にメンバーを入れ替えるようなことはできないけど、(ユースの年代からでも)そのような競争がないと選手は強くなれない」。競争を促すこと、そして過去の実績にとらわれないように前を向かせるなど精神的な逞しさを身につけさせ、個を強化した。

 新3年生は大榎監督就任とともに加入してきた選手たち。今大会では帝京高(東京)を2-0で退けるなど、精神的にもタレント面でも全国の強豪と十分に渡りあうことのできるチームになってきた。「昨年は全国で1勝もしていないし、自分たちは挑戦者。全国でも戦えるように頑張りたい」と話す大榎イズムの申し子たちが今年、全国で清水ユース復権を果たす。

<写真>後半、清水ユースMF柴原がDF3人に詰められながらも左足シュート

(取材・文 吉田太郎)
[高校サッカー]

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