beacon

元鹿島でFC町田ゼルビア監督、相馬直樹氏インタビュー

このエントリーをはてなブックマークに追加

 鹿島などで活躍し、日本代表としてフランスW杯も経験している相馬直樹氏が、新しいステージで奮闘している。今年からJFL・FC町田ゼルビアの監督に就任。本格的な指導者経験がない中で、いきなりのトップチームの監督就任となったが、現役時代から有名だった知性派は、第6節を終えて首位とスタートダッシュに導いている。このたび、現在の心境や監督の難しさを語った。

―ここまで6試合を5勝1分けで首位。スタートダッシュに成功しました。初めての監督のうえ、J出身選手が多数加入し、メンバーが入れ替わったチームをまとめるのは大変だったのでは?
 「ほんと、初めてのことなんで、どう伝えるのかとか、どこにポイントを置くのかとか、いろいろ簡単ではないですね。それで選手一人の反応もそうだし、チーム全体の反応というのも変わってくる。チームの作り方は、監督経験のある方は分かっていて、計算の中でいろんな言葉を使ったりして選手に刺激を与えたりができるだろうけど、僕は正直、まだ手探りです。失敗もあると思うけど、前に進まないといけないと思ってます」

―初めての監督業。やはり大変そうですね。町田には練習環境や支援体制の拡充など、指導以外でも仕事がありそうですが。
 「いっぱいありますね。毎日、大変なことの連続です。現場の中のこともあるし、練習環境を整備しないといけないとか、もちろん対戦相手の研究なども含めて、いろんなことがあります。それこそ監督になると、発する言葉とか、目線ひとつで選手たちが反応する。よい反応をしてくれるときもあれば、悪い方に反応することもある。ものすごく気を使いますね。そういう中で失敗もありますけどね。大変なことというか、難しいことというか・・・。ま、だからこそ監督は楽しいですね」

―J2に昇格しなければいけないというプレッシャーも大変だと思いますが?
 「それはうれしいことだと思ってます。ただ、ここまでゲームをやってきて楽なゲームは少なかった。甘いもんじゃないと、身を持って感じています。今勝てているのは、ほんのちょっとだけ相手より勝ちたいという気持ちが強いから。これでいいだろうと思うと、すぐにやられると思う。最後まで戦う姿勢を貫きたい」

―相馬監督が目指すサッカーはどういうものでしょうか?
 「とにかく勝利を目指すサッカー。その中で選手がイキイキとピッチの中で躍動するようなサッカーをしたいと思ってます」

―これまでの6試合では、それがどのくらいできていますか?
 「チーム全体として戦うということは出来ていると感じてますね。内容のところに関しては、まだまだミスはたくさんあるけど、攻守の切り替えの部分とか、相手を上回るボリュームを出すというのは、出来てきている。ただ、まだ90分はできていないので、今後の課題です。これから気候が暑くなるので、その中でもできるようにしないといけない」

―相馬監督と言えば、やはり鹿島の黄金期を作った人。鹿島のようなサッカーを目指すのか? それとも違うサッカーを?
 「あまり、形にはこだわっていませんね」

―ではどんなサッカー像ですか? 目指すサッカーのキーワードなどは?
 「僕は、そういうのを言葉にしてしまって、規定してしまうのが嫌で、定めていないんです。言葉が独り歩きするのがいやで。まあ、実際にやっていることは、全体をコンパクトにして、モダンといういい方が正しいのかどうかわからないけど、そういう形で、しっかりと主導権を取って、数的優位を作れるようなサッカーをしたいと思っています」

―まだ38歳と監督の中ではお若いですが、指導の仕方として、自分でやってみせることもありますか? 正直、体がウズウズすることもあるのでは?
 「そこまでではないですかね。まあ、伝わればいいので、やって見せて選手たちが理解して、できるかどうか。それは言葉で言って聞かせて出来るか、どちらでも構わないです。やって見せたほうが伝わりが早い場合もある。若い分、経験がない分、そうやって伝えられることもあるので。それは自分のストロングだと思って、今後もやっていきたいですね。そのためには、自分が怪我しないようにしないと(笑)。やって見せるといって、自分が息が上がったり、肉離れしたりと、そんなことになっちゃいけないからね(笑)。ここで走らないと! と言いながら、あれっ(肉離れした)みたいになっちゃうから」

―現役時代、いろんな名将の下でプレーしましたが、目指す監督像や影響を受けている監督は?
 「それほどないですね。あったとしても言えません(笑)。さっきも言ったけど、言葉はすごく怖くて、言うことで規定されてしまいますからね。簡単にポンと言う方が(メディアの方には)いいのかなと思いますけど。言葉よりも行動で示す? そうですね。まあ、自分なりに試行錯誤する中で、いいと思ったものは取り入れて、形を作っていきたいですね」

―指導する上で気をつけてることは?
 「大事なことは自分の口から選手に話をすることですね。コーチを通さないで。そこはやろうと思っています」

 とにかく、上辺だけの言葉を嫌がる指揮官だなと凄く感じた。志向するサッカーをスローガン化するケースはよくあるが、相馬監督は取材では必ず断っているという。言葉に縛られてしまい、制限されるのが嫌なようだ。現役時代から不言実行タイプの選手だったが、監督になった今も、余計なことは言わず、勝利という目的に向けてしっかりと行動する。そんなスタイルをとっている。

 シーズンはここから、25日ホーム・松本山雅FC戦、29日アウェー・佐川印刷SC戦、5月2日ホーム・FC琉球戦と、序盤の山場ともいえる3連戦を迎える。ここで、現在の首位という好成績が本物なのか、また相馬監督のチーム作りや采配はどうかなど、一つの“チェックポイント”になることだろう。

―これから25日ホーム・松本山雅FC戦、29日アウェー・佐川印刷SC戦、5月2日ホーム・FC琉球戦と3連戦があります。序盤の一つの山場だと思いますが?
 「その通りですね。この時期は気候も急に暑くなってくる時期。そこでの3連戦なんで、簡単ではないと思っています。今1位だからって、1つ勝てば勝ち点が6とか4、取れるわけではない。勝ち点は最大3しか積めない。これが1になるのか0になるのか、3になるのか。目の前に3があるので、それをしっかり取っていきたいですね。1試合1試合を勝ちに行くだけです。3連戦で2勝1敗とか、そういうのは考えてません。1試合を1勝することだけを考えています。それだけの、思いを乗せた試合をお見せしたいと思う」

―首位という状況で、サポーターの見る目も変わっているかもしれません。試合はGWに入りますから、注目もされそうです。サポーター獲得にも大きな試合となるでしょう。
 「勝ちに向かって最後まであきらめずに戦いたい。まあ、勝負というのは甘いものではないので、必ず勝てるとは限らないけど、どんな試合であっても、最後の最後まで戦う姿を見せることを約束したいですね。そこがすべてだと思う。負けてたとしても、見に来てよかった、感動した、また次に応援したい、と思ってもらえるようなサッカーを見せたいです」

 クールな、知性派な雰囲気をかもしながらも、随所で熱い言葉があふれ出ていた。チーム関係者によると、相馬監督のやろうとしているサッカーは、相当な運動量を要するものだそうだ。清水東高、早大、鹿島、W杯出場など、エリート街道を走ってきた相馬氏が目指すのは、最近はやりの魅せる綺麗なサッカーだけではなく、泥臭く、闘争心をむき出しに勝利を目指す-というもの。青年監督がどんなサッカーをし、当面のJ2昇格という目標にどう立ち向かうのか。今後に注目だ。

<写真>試合中に指示を飛ばす相馬監督

▼関連リンク
JFL順位&日程
(取材・文 近藤安弘)

☆FC町田ゼルビアは、ホームの町田市立陸上競技場(野津田陸上競技場)で行われる25日・松本山雅、5月2日・FC琉球戦のPRのために、選手やスタッフが総出でチラシ配布などを行います。選手たちに会って触れ合いたい方、配布を手伝いたいという方はご参加を。

●4月21日 水曜日
時間:17:00-18:00
場所:相模大野駅周辺(相模大野駅北口集合)のぼり旗目印

●4月22日 木曜日
時間:17:00-18:00
場所:町田駅周辺(町田駅東口カリヨン広場集合)のぼり旗目印

TOP