beacon

「例年より遥かに高い」技術、風間・筑波が関東王者撃破(流通経済大vs筑波大)

このエントリーをはてなブックマークに追加

[4.24 関東大学1部第3節 流通経済大 0-1 筑波大 西が丘]

 関東1部3連覇を目指す流通経済大に昨年9位の筑波大が今季初黒星をつけた。第84回関東大学サッカー1部リーグ第3節、流通経済大対筑波大は後半42分にMF小澤司(4年=桐蔭学園高)が決めた決勝ゴールにより筑波大が1-0で勝利。今季初勝利を挙げた。

 3年目を迎えた「風間・筑波」が可能性の高さを示す王者からの勝ち点3奪取だ。0-0で迎えた後半、筑波大はベガルタ仙台の練習参加からチームに戻ってきたばかりの左SB原田圭輔(4年=藤枝東高)が再三左サイドから仕掛け、小澤の絶妙なラストパスが相手DFのギャップをつく。そして前線で存在感を放つ日本高校選抜のFW赤崎秀平(1年=佐賀東高)と全日本大学選抜FW瀬沼優司(2年=桐光学園高)の両ストライカーが決定的なシュートを連発した。
 
 だが、そのシュートはことごとく流経大の09年U-20代表GK増田卓也(3年=広島皆実高)によってゴールの外へとはじき出されていく。後半29分、31分、36分とゴール至近距離からのシュートをことごとく止められた筑波大。42分に赤崎が相手SBを抜き去って迎えたビッグチャンスもそのシュートは増田によって阻まれた。だが直後、筑波大はついに、分厚い壁を破ることに成功する。こぼれ球を拾った10番の小澤が「GKは見えていた。理想的なシュートだった」と振り返る右足コントロールショットをゴール右隅へと決めて先制。ロスタイムを含めた5分間も攻撃姿勢を緩めずに押し切った筑波大は、試合終了のホイッスルとともに、フィールド上で選手同士が何度も抱き合い、王者撃破への喜びを身体いっぱいで表現していた。

 シュート数は筑波大の16本に対し流経大は18本。後半7分に流経大のFW武藤雄樹(4年=武相高)のPKをストップした筑波大GK三浦雄也(3年=中京大中京高)と流経大・増田の両GKの活躍がなければ、2年前の6-5のような乱戦も、3-0、4-0のような一方的なスコアになった可能性もあった。ともに中央、サイドから、シュートへ持ち込むまでのバリエーションの多さを見せ合った撃ち合い。勝った筑波大・風間八宏監督、敗れた流経大・中野雄二監督ともに決定力不足に頭を抱えていたが、中野監督が「試合内容に不満はない。(今季の)3試合で一番よかった」と振り返るなど、ともに手ごたえを得た「1-0」の“打撃戦”だった。

 ここまで2戦2敗と内容のよさに結果が伴っていなかった筑波大にとっては、大きな勝ち点3だった。今年は元日本代表MFの風間監督政権3年目。ピッチに立つ11人にミスをしない技術を求め「失敗していいサッカーではなく、成功を積み重ねていくサッカー」(風間監督)スタイルは、全く相手にボールを渡さないような素晴らしい試合をする一方、1本のパスやトラップなどの技術がブレることから乱れ、試合によって、また試合の中でも戦いぶりに大きな波があった。特に前シーズンからのレギュラーやBチームの選手、そして新1年生が先発に入り乱れるシーズン当初は当然11人の技術レベルがそろう事は少なく「技術が足りない」「パスミスばかりでサッカーじゃなかった」といった言葉が試合後の指揮官の決まり文句のようになっていた。

 徹底した技術練習の成果と個性の表現ができていた2年前は、シーズンが進むにつれてぐっと力をつけて後期11試合中7試合で3ゴール以上をたたき出し、全日本大学選手権でも決勝進出したが、昨年は技術の向上と結果が伴わずリーグ9位と低迷した。それでも「例年よりもはるかに技術が上がっている。質が高いのは間違いない。今までのスタートより悪くない」と指揮官が説明する今年は、期待が大きい。
 風間監督が「サッカー選手になってきた」と名を挙げるMF森谷賢太郎(4年=横浜FMユース)と八反田康平(3年=鹿児島中央高)の両ボランチに加え、先発に名を連ねるCB谷口彰悟(大津高)、玉城峻吾(三菱養和SCユース)、赤崎といった1年生も高い技術を備える実力派だ。「今年は上手いだけじゃなく、(一段階上のレベルで)勝負にこだわっていける。勝てるチームになる」と小澤。それだけに王者撃破で自信を得た筑波大は今後のリーグ戦において、不気味な存在となりそうだ。

(取材・文 吉田太郎)

TOP