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九死に一生を得たウルグアイ、スアレスのハンドが窮地を救う

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[7.2 W杯準々決勝 ウルグアイ1-1(PK4-2)ガーナ サッカーシティ]

 だれもがウルグアイの敗戦を疑わなかった。1-1で迎えた延長後半ロスタイム。ガーナは最後のFKのチャンスにゴール前の混戦から立て続けにシュートを放つ。選手全員で体を張って跳ね返すウルグアイ。最後はFWアディアーのヘディングシュートをゴールライン上に立っていたFWルイス・スアレスが意図的に手で弾き出した。

 主審は当然、スアレスにレッドカードを示す。一発退場。そして、PK。歓喜に沸くガーナの選手、大歓声に包まれるサッカーシティ。ラストプレーとなるであろうPKをガーナが決めれば、勝利は決まる。勝負あった。ウルグアイのファンも、選手でさえも敗戦を覚悟していたはずだ。ところが、FWアサモア・ジャンが右足で狙ったキックはクロスバーを直撃した。

 ウルグアイのGKフェルナンド・ムスレラはガッツポーズのあと、クロスバーを手で叩いて感謝のポーズを見せる。ユニフォームで顔を覆い、泣きそうな表情でピッチをあとにしたスアレスはスタンド下の通路からPK失敗を確認すると、雄叫びをあげながら何度も両拳を握りしめた。

 スアレスがハンドしなければ、アディアーのゴールが決まり、ガーナが2-1で勝っていた。自分が退場になることも覚悟で手を使い、PK失敗というわずかな可能性に託したことが、結果的に功を奏した。故意のハンドはほめられるべきではない。しかし、これが南米の狡猾さであり、勝利への執念であるのかもしれない。

 ギャンがPKを失敗した時点で、流れは決まったようなものだった。PK戦ではムスレラがガーナの3人目、4人目のキックをセーブ。ウルグアイは4人目のDFペレイラがゴール上に外したが、最後はFWセバスティアン・アブレウがGKの動きを見て、ド真ん中に転がす技ありのキックで決着を付けた。

 「運命を信じる人なら説明できるのかもしれない。しかし、私には今日起こったことは説明できない」。オスカル・タバレス監督は試合後も勝利が信じられない様子だった。ウルグアイの4強入りは70年大会以来、40年ぶり。6日の準決勝・オランダ戦は今大会3得点のスアレスだけでなく、左サイドバックのDFホルヘ・フシレも累積警告で出場停止となる。状況は厳しい。しかし、九死に一生を得た古豪に、もはや失うものはない。

(取材・文 西山紘平)

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