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次期代表監督問題、原委員長会見要旨

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 難航している次期日本代表監督の選考をめぐり、日本サッカー協会は24日、都内のJFAハウスで異例の記者会見を開いた。交渉を担当している原博実・強化担当技術委員長が技術委員会本部長を務める大仁邦彌副会長とともに出席した。
以下、記者会見要旨

●原博実・強化担当技術委員長
「今日、欧州から帰って来て、なんとかいい知らせを持ってこようと向こうで粘り強く交渉してきたが、まだ契約することはできていない。9月4、7日の試合に間に合わせるよう努力してきたが、今もその努力は続いている。向こうにスタッフも残っているし、ひとりではなく、何人かの候補を持ちながら今、準備している。もう少し待っていただければと思う。

 今まで極秘に回っていた理由、経緯から説明します。7月11日の決勝まで南アフリカにいて、多くの試合を見てきた。向こうにいる間に代表チームと帯同し、分析し、よかったところ、課題をレポートにまとめ、今後どうすべきかというのを7月15日にレポートとして大仁副会長、会長に渡した。こういう選考基準、考え方で強化していきたい、こういう監督を選びたい。それをもとに人選してきた。

 大会の総括としては、今回は大会前は決していい状態ではなかったが、岡田監督が直前に戦い方を変えて、コンパクトに守り、本田を1トップ、阿部をアンカーに置いて、しっかり守りながら戦っていった。あの時点で持っている良さは十分に出してくれたと思うし、選手の集中力も高かった。同時にもう1ランク上に行く、ベスト8に進んでいくチームになるためには、ひとりひとりの技術や判断力を上げないといけない。大会前の準備や選手のコンディション、チームのまとまりもよかったが、もうひとつ上に行くには、海外で代表監督を経験しているか、欧州や南米などJリーグよりレベルの高いクラブで実績、経験があり、CLやEL、リベルタドーレス杯の経験がある監督。日本をリスペクトしてくれて、オシム監督、岡田監督が続けてきた日本人らしさを理解して続けてくれる人。アジアの難しさ、地理的、宗教的、移動の大変さを理解して、日本人スタッフとうまくやれる人。そして代表監督というハードワークでプレッシャーのある仕事に耐えられる健康な人。そういう日本サッカーをもう1ランク上に上げられる人を探して交渉していこうということになった。

 最初は南米に行ってペジェグリーニに会った。去年、レアルの監督をやって、勝ち点3差で優勝できなかったが、1年で解任された。人間的にも素晴らしい人で、オフでチリに戻っていた。代表監督に興味があるということで、日本でやりませんかという話をした。日本の選手の名前も知っていたし、年齢構成も知っていた。今後のカレンダーも話して、バカンスで欧州に行くというので、僕も欧州に行って、また向こうで会おうと。“レアルでもらっていたお金は出せない”と説明したが、彼も“そこまでもらうつもりはない”と話していた。

 同時にスペインにもリストの中で会いたい人がいたので、その人と食事しながら日本のことを話して、家族構成なども聞いて、来れるのかという話をしたのがバルベルデ。オリンピアコスから話が来ているというのはそのころから聞いていた。いろんな話をしている中で、オリンピアコスがELの予備予選で負けた。なのでやっぱりオリンピアコスに行くという決断をして、そっちを選んだ。

 黙っていたのは、名前が出ると向こうにもいろんな要素が絡んでくるから。本人ではなく、代理人がお金を釣り上げようとすることもある。その2人はそういう事情でうまくいかなかった。

 今交渉している人の名前は、家庭的な事情もあって言えないが、本人に日本に行く気持ちがあっても、4年あるいは2年も日本に住むという決断をするには、彼の家族やコーチなどいろんな要素が絡んでくる。今交渉している何人かも家族やコーチと相談しながら、こちらもなるべく早く来てほしいというオファーを出しているが、それが現状。今朝も連絡を取ったが、まだ返事は出ていない。いろんな人に迷惑をかけていると思っているが、日本のサッカーをより上のレベルに導いてくれる人を連れて来たい。いつ来ますとは言えないが、(9月の試合に)間に合わせたいからこの人、ではなく、今後4年間、日本を任せられるような人を連れて来たい。そういう人と交渉している。責任は感じているが、いい人を連れてくるということで皆さんに応えたい」

―日本らしさを出してくれる監督、日本をリスペクトしている監督なら日本国内にもいると思うが、彼らでは不足なのか?
「不足ということではない。選手もベスト8、ベスト4を目指すために世界に出ている。それなら監督も世界で戦っている人を選びたい。マーケットで取り合いになるような人から選ぼうということ」

―あえてハードルを高くしているのでは?
「まだ決まってないから確かに難しいが、まずチャレンジすることが大事だと思った。Jリーグはシーズン中で、この時期に抜いてくることはできない。W杯をしっかり見て、分析して、それから当たろうと思っていた。もちろん、W杯前からいろんな情報はあった。Jの監督を抜いてくるということは考えてなかった」

―具体的にはどんなサッカーをやってほしいのか?
「いろんな人と話して、日本人は規律があって、やろうとしたことはやれると。ただ、攻撃にかかったとき、ボールを奪った瞬間に、後ろに下げるのではなく、例えばスペインは一番厳しいところを狙っているが、アタッキングサードに入って個人でもグループでも突破に行く、最後のところでリスクをかける。そういうサッカーを志向している監督にお願いしたい」

―監督が決まらない状況ではクラブからも反発が出るのでは? 9月にはナビスコ杯もあるが、ナビスコ杯に残っている8チームからも選ぶのか?
「9月の2試合は国際Aマッチデーなので代表優先。代表優先のカレンダーで考えるべき。監督は今のところ決められていないが、9月4、7日に来てもらう可能性は捨てていないし、監督に試合を見てもらえるように努力している。代表の試合で消化試合はあり得ない。今後、日本がやらなきゃいけない課題ははっきりしている。次を見据えて、コンディションがいい選手を選ぶことが大事。Jの各クラブには強化担当者にお詫びとこういうことになったので協力してほしいということをすぐに電話する」

―交渉は向こうの返事を待っている段階なのか?
「条件も含めて全部説明して、あとは本人、家族、コーチの決断で、最終的な返事を待っているだけの人もいる。向こうではリーグが始まって何試合ですぐに監督が代わることもある。向こうに残っているスタッフには常に新しい情報を仕入れてもらっている」

―何人の候補がいるのか?
「何人というのは言いにくい。何十人もはいない。実績のある人に誠心誠意あたっているとしか言えない」

―ペジェグリーニとの交渉は終わってしまったのか?
「終わっちゃいましたね。いけるかと思ったんですが。みんな驚くかと思ったんだけど。最後はチリの代表監督をやるんじゃないかなと思う。でも、本当に日本のことを知っていた。お金のこともあるが、コーチや家族と相談して、“それだけ長い期間、欧州からいなくなると、欧州のマーケットから消えてしまうのではないか”と言っていた」

―9月までに連れて来れなかった場合、技術委員長を辞めるなどの責任は取るのか?
「今考えているのはいい監督を連れてくることだけ。そうならないように頑張る。仮定の話はできない」

―メンバー発表はいつになるのか?
「27日になると思う。監督が間に合わなかったら僕が代行監督をやる。ただ、決まっても、ビザの関係で指揮は執れない。メンバーは僕と西村(昭宏技術委員)で決める。やるつもりで準備はしないといけない。(返事を)待ちながら、やる準備も進める」

―ビザの問題があるということはベンチに入るのは原さんで確定なのか?
「そうなります」

―もっと早く、W杯期間中に動いていればという後悔は?
「正式には大会が終わってからレポートを出してという形になったが、本大会の結果で監督の評価も大きく変わる。今年になってからいろんな監督の情報は集めていたし、W杯が終わるまでは交渉自体はフリーの人ならできるが、現役の人はできない。出遅れたとは思ってない。あとから出てきた人もいるし、十分に情報は集めながらやってきた」

―待つ価値がある人材なのか?
「もちろんです。もちろんそう思って、来てくれることを信じて交渉している」

―監督が決まっていない状態で、9月の試合でどういう戦術でどういうサッカーをすると選手には説明するのか?
「現場の監督ではないが、技術委員長として見てきているし、監督がもし決まっていなくても、決まればあとからその試合を見るでしょう。監督が代行だから適当にやる選手はいない。日本はみんなでアグレッシブに、攻守の切り替えを早くして、ボールを奪ってからいかにリスクを冒して攻めるか。そこは変わらない。代行だろうが、関係ない」

―会長が代わった影響は?
「会長の交代はあったが、小倉さんに代わっても“続けてやってくれ”と言われたので、影響はなかった」

―この1ヵ月、Jリーグを見ていないと思うが、選手をどう選ぶのか?
「この1ヵ月間、海外に行っていてJリーグを見れていないが、西村や、代表のコーチを頼もうと思っているスタッフにJリーグを見てくれている人もいる。その打ち合わせはすぐにできる。その話を聞きながら判断する」

―新監督には五輪、ユースも見てもらうのか? U-21代表は秋にアジア大会もあるが?
「五輪の方も見てもらうつもり。ただ、五輪は日本人の監督で、A代表の監督にも見てもらう形にしたい。五輪の監督はA代表のコーチも兼任する。それは交渉の中でも説明している」

―A代表の監督が五輪の総監督になるのか?
「そうですね。権限に関しては日本人が持つ。総監督かアドバイザーという形で絡んでもらう」

―代行監督をやるのではなく、交渉に専念した方がいいのでは?
「それも考えたが、五輪のチームもすぐに立ち上げないといけない。僕が見てきた一連の流れをA代表の監督、五輪の監督に引き継ぐ流れの方がいいかなと思った。交渉は結果待ちの人もいるし、現地に残っているスタッフもいる。離れたから全然交渉できていないということはない」

―先に五輪の監督、A代表のコーチが決まる可能性もあるのか?
「五輪の監督をやりながらA代表のコーチもやってもらいたいという話はしている。ただ、A代表の監督が決まらないと、そこは言いにくいし、まず五輪の監督として入ってもらいたいと話している。先に五輪の監督が決まる可能性はあると思う」

―今回のような交渉は初めてということだが、具体的には?
「トルシエ、ジーコになったときは僕は協会にいないので詳しくは知らないが、国内にいて、ある程度フリーの立場で、交渉がやりやすい人だった。今はあえて世界に出て、世界的な人に来てもらおうとやっている。オシムさんもJリーグでやっていた人。国内にいる人がターゲットなのと、世界のマーケットに出て競争しながら取ってくることの違いはある。今まで(の代表監督選考)はマーケットが国内だけだったが、今回は世界の中心で勝負した。その違い。世界に出て行って、もう1ランク上がるために、そういう指導者を連れて来たいということ」

―海外の報道では交渉相手としてメキシコ代表を率いたハビエル・アギーレ氏やビクトル・フェルナンデス氏の名前が挙がっているが、彼らと交渉しているのか?
「あるとも、ないとも言えない。いろいろコメントすると、いろんなところからいろんな話が出てくる。具体的な名前に関して候補か候補でないかは答えられない」

―リミットはあるのか?
「今やっている人に関しては最終交渉なので、そんなに時間はかからないと思う。ただ、そういう人たちばかりでは、全部断られたときに困るので、そうじゃない人とも交渉はしている。9月に間に合わせるつもりでやっているし、そこで来なくても10月には確実に連れて来たいし、9月中旬には来れるのではないかと思っている」

―9月の試合のメンバー発表の基準は?
「新しい監督が決まれば、その人と相談して、意向も聞くが、決まらない場合には技術委員会で決める。コーチングスタッフになってくれる人と相談しながら、コンディションのいい選手を選びたい」

(取材・文 西山紘平)

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