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大型ボランチ山村が背番号10に「照れくさい」

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Text alert@平塚
 184cmの長身ボランチはピッチの真ん中で絶大なる存在感を放っていた。U-21日本代表MF山村和也(流通経済大)が湘南との練習試合で背番号10をつけて90分間フル出場。前半はMF山口螢(C大阪)、後半はMF黒木聖仁(同)と組み、安定したポジショニングとボールさばきでゲームをコントロールし、チームを4-2の勝利に導いた。

 「10番は試合前にユニホームを配られたときにそうなっていた。前の試合(20日のガンバ大阪戦)では違う番号だったし、名前順か何かだと思うのであんまり意味はないと思いますけど、若干恥ずかしかったし、照れくさかったです」

 流経大のチームメートであるDF比嘉祐介から「いじられた」と言い、「こんなに背の高い10番も珍しいでしょうし、目立ったかもしれないですね」とはにかんだ。

 もちろん、目立ったのは背番号だけではない。中盤の底で見せた対人の強さと左右両足からの展開力はかねてから高い評価を受けている要素だが、それに加え、サイドの深い位置や中央へのオーバーラップでもセンスの良さを見せつけた。

 前半19分にこの日最初のオーバーラップ。同27分には左サイドをえぐって左足クロスを上げ、もたつく湘南DF陣を尻目にMF東慶悟(大分)が決めた2点目の起点になった。前半41分にはミドルシュートを放ち、後半終了間際にも最前線まで上がって攻撃参加した。所属の流経大でプレーするセンターバックとは違うポジションながら、前線に顔を出すたびに必ず最後は誰かのシュートで終わっていたのはさすが。まさに機をみるに敏という以外にない。

 「センターバックは後ろからコーチングをしながら自分が動かすのですが、ボランチは自分が動くことで人に使ってもらうプレーになる。ボランチは好きだし、勉強になります。でもまだパスミスが多いし、もっとやっていかないと」と貪欲だ。

 「背番号は(レアル・マドリー時代の)ジダンがつけていた5番が好き」と苦笑するが、キャプテンマークを巻いたことについては「チーム内でよく話すようにしたり、声を掛けようという意識を持っている」と、責任感を口にする。このメンバーで実戦を行ったのは今回でわずか2回目。来月5日には早くも広州アジア大会へ向けて中国に出発し、同8日には中国戦を迎えるが、チームは長足の進歩を遂げている。その中心にいるのは山村だ。

 「まだ2回しか集まっていないけど、お互いのことが分かるようになり、少しずつチームワークが良くなって、プレスの掛け方やボールを奪うタイミングが良くなってきた。アジア大会では一戦一戦、勝っていきたい」

 そして、その先に見据えるのはロンドン五輪だ。「僕らの世代は2年前にU-19AFC選手権で負けて、U-20W杯に出られなかった。世界大会に出る機会は限られるので、ロンドンは意識している」

 バックアップメンバーと参加したW杯南アフリカ大会の日本代表合宿中は、今回と同じボランチとしてプレーし、サブ組で毎回高い能力を見せていた。現在大学3年生だが、既にJ1の複数クラブがオファーを出すなど、この世代では抜きんでた存在。経験値と将来性を兼ね備える大型ボランチがチームをけん引する。

(取材・文 矢内由美子)

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