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[大学選手権]筑波大は立命館大に1-0辛勝。風間監督はぼやき連発

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[12.18 全日本大学選手権1回戦 筑波大1-0立命館大 平塚]

 第59回全日本大学サッカー選手権が18日に開幕し、1回戦8試合が行われた。神奈川・平塚競技場の第2試合では、2003年度以来9回目の優勝を目指す名門・筑波大(関東2)が立命館大(関西3)を1-0で退けた。しかし、元日本代表選手の風間八宏監督や選手たちは不満顔いっぱいの勝利となった。

 「ミスが多すぎ。話にならない!」。試合後、風間監督は厳しい表情で試合内容を振り返った。序盤から筑波大が細かくボールをつなぎ中盤を支配していた。しかしたしかに、ちょっとしたミスも目立った。バイタルエリアなどスペースの狭いところだけでなく、簡単なパスミスが何度かあった。結果よりも内容にこだわるサッカーを志している指揮官にとって、単に勝つだけでは満足できなかった。

 前半、横浜FMに内定しているMF森谷賢太郎(4年)のパス、まだ内定は出ていないが、プロが注目するMF小澤司(4年)のドリブルを中心に攻め、1トップのスーパールーキー赤崎秀平に合わせようとするが、なかなかかみ合わない。同33分にはスルーパスに赤崎が抜け出してPA内に進入もDFにスライディングでブロックされるなど、この日はエースがややブレーキとなった。

 その後、立命館大は中盤での守備を強化する。やや引き気味にして積極的なプレスを敢行。カウンターを狙った。京都に内定しているMF内藤洋平(4年)はベンチスタートだったが、愛媛に内定の左SB前野貴徳(4年)が攻守で奮闘。またMF雨森理亮(3年)の突破と、リーグ戦22試合20ゴールで得点王となった点取り屋FW坂本一輝(2年)の個人技を生かして迫力あるカウンターを狙った。

 しかし、立命館大も筑波大のボール回しにてこずり、ゴールは奪えない。前半は0-0で折り返した。「ボールを失いすぎだ。後ろのパスはいらない。自信を持ってやれ! 」。ハーフタイムに風間監督からゲキを飛ばされたイレブンは、少し息を吹き返す。そして後半5分に待望の先制点を奪った。右サイドを攻略して攻め込み、最後はPA内右をオーバーラップしていた右SB不老祐介(2年)がドリブルで仕掛けた。激しく体を寄せられて倒されPKをゲットすると、これを司令塔の森谷賢太郎が落ち着いて決めて1-0とした。

 これで筑波大はリズムを取り戻すかに思われたが、なかなか持ち味のパスサッカーに迫力が出ない。ボールは回しているが、どこかいつもの余裕がなかった。1点が欲しい立命館大のカウンターにはまる時間が増える。後半34分には筑波大MF上村岬(1年)が強烈なミドルシュートを放つが、クロスバーに嫌われるなど運もなかった。

 そして後半36分、立命館大はこの日最大の好機、筑波大には最大のピンチが訪れる。立命館大は速いパスでカウンターに成功。最後は前グルノーブルの清水FW伊藤翔の弟で、途中出場のMF伊藤了(3年)がDFラインを抜け出してGKの頭を抜く柔らかいシュート。完璧に決まったかに見えたが、DF今井純(2年)がラインぎりぎりでクリアした。試合はそのまま1-0で終了。筑波大が何とか逃げ切った。

 この日、筑波大イレブンは地元の小学生など約100人を招待した。試合後はシャワーも浴びずに、すぐに子供たちの待つバスを訪れて交流の時間を作るなど地域貢献しているが、ゴールをたくさん見せられなかった。森谷ら選手たちは「勝てたのは良かったけど、もっといい試合を見せたかった」と残念がっていていた。

 「だれか一人というわけではなく、全員が良くなかった。トーナメントの初戦で硬かったのもあるが、ミスが目立った。相手がどうこうではなく、うちがひどすぎた」と風間監督からは厳しい言葉が続いた。もちろん、選手たちも分かっている。主将のDF須藤壮史(4年)も「うちらしいパス回しができなかった。ボールを止める、蹴るの技術がしっかり出せていない。DFとしては苦しい時間がつづいた。監督からも“ぜんぜん面白くない。勝てただけだ”と言われました」と嘆いた。

 とはいえ、これらの厳しい言葉は、名門だからこそといえる。チームは結果だけでなく、標榜するパスサッカーがいかに内容良く発揮できて、その上で勝つというのを求めている。次戦23日の相手は、同じくパスサッカーを掲げる浜松大。「こんな形でも勝てて、もうひと試合できるのは良かった。もう1試合、上手くなれる機会を得た」と風間監督。須藤も「やらなきゃいけないことははっきりしている。試合までに練習したい」と今度こそ、理想通りのサッカーで勝つことを誓った。

[写真]招待した地元のサッカーチームの子供たちと記念撮影する筑波大イレブン

(取材・文 近藤安弘)
第59回大学選手権特集

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