beacon

野沢“ミスター・クライマックス”復活! 華麗なFK弾でACLへ導く

このエントリーをはてなブックマークに追加

[1.1 天皇杯決勝 鹿島2-1清水 国立]
 元日の聖地のピッチに、綺麗な放物線を描いた。鹿島アントラーズは1-1の後半32分、ゴール中央やや左でFKのチャンスを得た。キッカーを務めたのはMF野沢拓也だ。4万超の観衆の視線を一身に浴びた中、FKアーティストは涼しい表情で壁の上を射抜くカーブボールを蹴り込んだ。GK山本海人の右手を弾いてゴールイン。逆転決勝ゴールで、鹿島に14個目のタイトルをもたらした。
 「お互い厳しい時間が続いたので、1点勝負だと思っていた。そういう中で集中して蹴りました。練習してた通りです。成果が出ました。ACLを自力で勝ち取ることができて良かった」
 この試合に向け、同じような位置で入念にFK練習をしていたという野沢。DF伊野波雅彦も「蹴る前から入るなと思ってた。きのう練習してて、入ってたので」と明かす“予定道り”の一撃だった。
 決勝戦をはじめ一発勝負の緊迫した試合では、勝敗を分けるのはセットプレーになることが多い。この日の鹿島の先制点は小笠原満男のCKからだった。そして決勝点もFK。勝利の方程式を野沢が体現した形だ。まさに“勝つコツ”を知りつくした王者らしい白星となった。
 新年の初め、そしてシーズンの終わりにタイトルを獲得し、悔しさを少し、晴らすことに成功した。チームはリーグ戦4位に終わり、連覇は3で途絶えたほか、ナビスコ杯も8強に終わった。ACLも決勝T1回戦で姿を消した。野沢は2008年の最終節でゴールを決めて優勝に導くなど終盤の11月-12月にゴールを量産してきた。“ミスター・クライマック”とも呼ばれ、野沢の調子がシーズン終盤のチームの成績に直結するほどの“影響力”があったが、今季は11月以降のリーグ戦6試合で1得点に終わりチームも失速した。
 「シーズン最後の試合で決めるのはクライマックス男らしい? いや、もう今年(2011年)ですから(苦笑)。ほんとにリーグ戦では期待に応えられず、自分としてはふがいなかった。ここ来て、みんないい状態になって、いいパフォーマンスを出せて勝てて良かったです」
 取材中は、照れ屋であまり表情を変えない男だが、この日は少しの笑顔と安堵の表情を見せた。天皇杯を制したことで、これで再びACLに挑戦することができる。Jリーグ、ナビスコ杯、天皇杯と合計14個目のタイトルを勝ち取った鹿島だが、載冠数では圧倒的に少ない浦和やG大阪に、アジア制覇、そしてクラブW杯3位の栄冠を先越されている。来季の目標は“4冠”だが、最優先はアジア制覇。野沢がその苦難の道のりを右足で切り開いていく。
[写真]直接FKから決勝点を挙げた鹿島MF野沢
(取材・文 近藤安弘)

▼関連リンク
第90回天皇杯特設ページ

TOP