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[選手権]関西大一、劇的ロスタイム弾で尚志を下す

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[1.3 全国高校選手権3回戦 尚志0-1関西大一 NACK5]

 第89回全国高校サッカー選手権3回戦が3日に各地で行われ、埼玉・NACK5スタジアム大宮の第二試合では昨年16強の尚志(福島)と昨年4強の関西大一(大阪)が対戦した。0-0のままPK戦に突入するかと思われた後半ロスタイム、関西大一はMF浅井哲平(3年)が決勝ゴールを決め、1-0で2年連続の8強入りを成し遂げた。

 まさに劇的な勝利だった。3分のロスタイムに突入したあとの後半41分、関西大一の浅井がドリブルでゴール前左を仕掛けてFW井村一貴(3年)とワンツー。スピードを活かして守備網を切り裂くと、リターンを左足で丁寧に流し込んだ。土壇場で関西大一が勝利をもぎ取った。

 「PKを外していたんで、どうしようかなと思っていたけど、いいボールが来て、決められてよかった」。浅井は安堵の表情を浮かべたが、実は後半2分、自ら得たPKを蹴りセーブされていた。悪い流れとなり、自分で何とかしなければと考えていただけに、試合後のヒーローインタビューでは安堵もあってか涙を流した。

 前半は尚志がやや優位に試合を進めていた。シュート数こそ3対6と少なかったが、売りとしているテクニックを活かして中盤を作った。前半13分にはポストをたたくシュートもあった。「やっぱり技術の高い選手が多かった。パスをつなぐし、FWの選手も速さがあった」と主将で鹿島アントラーズ内定のMF梅鉢貴秀(3年)が苦戦したことを明かした。攻撃面でも「FWの足下に入れてそこから展開したかったが、いい形が作れず、蹴りあう形になってしまった」という。

 それでも流れを変えて勝ったのは、ハーフタイムに佐野友章監督から飛ばされた猛ゲキにあったという。「力は五分五分。走り勝て! 気持ちで勝て!! 逃げたやつは交代させるぞ!」。これで選手たちは目が覚めたという。もともと後半勝負になることは想定し、前半は0-0でもいいというイメージで臨んでいたそうで、指揮官の号令とともに選手にも“スイッチ”が入った。

 後半は前半以上に積極的になり、持ち味の運動量が発揮された。そして梅鉢のパスを起点に、FW井村一貴(3年)やFW濱野友旗(3年)、そしてMF浅井哲平(3年)が積極的に仕掛け、押し込む時間が増えていった。結局、選手交代はなく、先発メンバーが最後までピッチで戦い抜いて劇的勝利をつかんだ。

 尚志は本当に、あと一歩というところだった。仲村浩二監督は「PK狙いにしようと思ったら守り切れたかもしれないが、点を取りにいった」と明かしたが、言葉通り、守備を固めることはしなかった。背番号10のMF平野伊吹(3)やFW渡部圭祐(3年)がテクニックを活かして果敢に攻めた。パスやドリブルという尚志のサッカーを最後までやりきり、仲村監督も「うちらしいサッカーをやり続けてくれた」と選手を労った。

 「厳しい試合でしたけど、最後、勝てて良かったです。次がもっと攻撃を組み立てるようにしたいです」と梅鉢。2年連続の4強がかかる次の相手は、同じ関西の久御山(京都)となった。佐野監督は「ほとんどやったことがない相手ですね。イメージは、技術があって、バンバン回して、つなぎのサッカーをしてくる」。久御山は今大会屈指の攻撃力を誇るが、選手たちは気合十分で、「ロスタイムの点で勝てて、取った浅井も乗るでしょうし、チームも乗れると思います」と梅鉢は自信を示した。

 くしくも久御山戦のある5日は“兄貴分”の関西大が、全日本大学選手権の決勝で中京大と戦う。“弟分”も続けとばかりに、勝って4強、そして決勝へという思いが強い。佐野監督は「昨年よりは劣るチーム」と言いつつも、「すっきりと勝ちきれないけど、負けないのが今年のチーム」とまとまりが良く、粘り強く戦えるチームだと評した。トーナメント戦では“負けない粘り強さ”は重要なこと。持ち味を発揮して関西対決を制し、まずは昨年と同じベスト4を成し遂げる。

(写真協力 『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 近藤安弘)

【特設】高校選手権2010

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