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[戦評]新チームの骨組みができた大会。だが今後もCF・CBの強化&控え選手の充実が課題

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[1.29 アジア杯決勝 日本1-0(延長)オーストラリア カリファ]

田村修一の「視点」

 オーストラリア戦は日本の苦手なハイボールで押し込まれ、本当に苦しい試合だったが、粘り強く戦い抜いて優勝をつかんだザックジャパン。まずは監督、選手、スタッフ関係者みんなに、本当におめでとうございます、してお疲れ様でしたといいたい。

 今大会はザッケローニ監督が就任して最初の公式戦で、大会前に指揮官自ら言っていたが、優勝するというよりは、チームの成長を第一の目標に掲げて臨んだ大会だった。そんな中、選手たちは試合ごとに着実に成長していった。最終的にタイトルまで獲得したが、両方の成果をつかんだのだから、そういう意味では本当に実りの多い大会だった。

 このチームは南アフリカW杯のときと比べて、実は主力はあまり変わっていない。何人かの新しい選手が加わっただけだが、この大会で新監督、新チームとしての骨組みができたと思う。これは今後、W杯予選を戦っていく上で非常に大きい。

 MVPは本田圭佑だったが、私は長谷部誠でも良かったんじゃないかと感じている。ピッチの内外で彼がチームをまとめていた。プレーでは決して派手な活躍はしていないが、豊富な運動量とキャプテンシーでチームを支えた。W杯のときもそういう役割ができていたが、さらに頼れる選手に成長している。今後も彼を中心にやっていば間違いないだろう。

 そして今大会で、改めてザッケローニ監督の凄さを感じることができた。就任前は、時期が遅れたこともあり日本協会は批判もされたが、セリエA優勝や欧州CLの経験は伊達ではないことを証明した。今大会も常に落ち着いて、ぶれない采配をふるっていた。CLやセリエAに比べたら、プレッシャーは少ないということなのだろう。

 この日のオーストラリア戦で、後半途中に藤本淳吾に代えて岩政大樹を投入し、今野泰幸を左SBへ、長友佑都を左MFに代えたが、あの采配も的中した。初めての策だったが、見事に流れを変えてみせた。今回、準備期間が短かったが、与えられた状況、選手層でしっかりと仕事を果たしたと思う。

 とはいえ、喜んでばかりはいられない。日本の目標はブラジルW杯に出て、今度は8強以上の成績を収めることだ。そう考えると、この大会で改めて課題が浮き彫りになった。細かいことを言えばきりがないが、大まかに言うとセンターフォワードが不足しているといえるし、センターバックも弱さを感じた。これは闘莉王が戻ってくれば改善されるかもしれないが、全体としてまだまだ物足りなさを感じた。今野は良かったが、決して本格派ではないので吉田麻也ら若手の成長が急がれる。

 また結局、試合で安心して使えた選手は12、13人で、レギュラーとの差がはっきりしていた。ザッケローニ監督も少ない駒で苦労したと思う。それでも優勝したのだから、選手たちも含めて本当に素晴らしい。とはいえ、やはり世界で勝つには20人から30人くらい同じ力の選手が代表にいるという状況にしなければいけない。今大会でも底上げが目標だったが、今後もザッケローニ監督にはチーム力アップと同時に、選手層のアップも大きな仕事となる。今回の成果をベースに、さらに強い日本に育ててもらいたい。

[写真]歓喜に沸く日本代表

(取材 フットボールアナリスト田村修一)

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