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IOCの「八百長対策会議」、講演者が評価

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 3月1日、スイス・ローザンヌで国際オリンピック委員会(IOC)が八百長の取り締まりに向けた初めての国際会議を行った。ジャック・ロゲ会長は記者会見で、八百長問題が取りざたされている日本の大相撲を例に挙げ、対策強化を訴えるなどした。

 この会議には八百長フィクサーを追った大型ノンフィクション『黒いワールドカップ』(邦題)の著者であるジャーナリストのデクラン・ヒル氏が招待された。ヒル氏は公開されない、つまりオフレコでの会議の中で講演を行った。
 センシティブな題材のために参加者や内容のすべては公表できないとしながらも、「トップクラスの幹部たち」が参加する前でヒル氏が何を語ったのかということを明かしてくれた。
「私が話したのは次のようなことだ。スポーツ界はこれまで経験した事のないような脅威に直面している。台湾の野球から日本の相撲、中国のサッカー界においても、私は不正の影響、信用性の崩壊を見てきた。八百長のせいで、観客でいっぱいだったスタジアムが今ではガラガラになってしまった様子も、見てきた。八百長のせいで、大きな利益を生んだテレビ放映権やマーケティング権利が見捨てられてしまった様子も、見てきた。何億という選手やコーチ、ファンの夢が破壊されるのを、見てきた。賭博市場のグローバル化で世界中のスポーツが牛耳られ、アフリカやヨーロッパ、北アメリカに汚職が浸透する様子も、この目で見てきた」
 そしてこう続ける。
「すでにオリンピックでも八百長は発生している。 02年の冬季オリンピックではロシア・マフィアのボスたちが関与したし、『黒いワールドカップ』の中でも触れたが、04年のアテネ五輪では、八百長フィクサーたちが私に『八百長をした』と暴露し、選手もフィクサーに会ったことを認めている。金銭を受け取ったと認めた選手もいた。つまり、八百長はすでにオリンピックに入り込んでいるのだ。にもかかわらず、それを阻止する措置はなんら取られていないということを伝えた」

 ただ初めて八百長に絡む会議を行なったIOCの姿勢についてヒル氏は感心していた。また幹部らはほとんどが、ヒル氏の著書を読んだ上で、このオフレコの会議に参加していたという。「参加者がかなりの幹部たちだったことに加えて、みなが真剣に私の講演に向けて準備していたことに驚いた」と、彼は言う。

 すでにIOCは2012年のロンドンオリンピックに向けて、対策をするための作業部会を設置しているが、機能する体制で運営されることを願いたい。

(取材協力・山田敏弘)

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