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前横浜FMの齋藤が湘南にひと泡吹かせる。反町監督「“愛媛のメッシ”にやられた」

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[5.8 J2第11節 湘南1-1愛媛 平塚]

 左胸を叩いて、右手を天に突き上げた。0-1の後半42分、愛媛FCのFW齋藤学はPA手前で福田健二の落としを受けてドリブル突進。持ち味のスピードで湘南DFを交わして右足を一閃し、ゴールネットに突き刺した。若きストライカーが連敗を2で止める値千金弾を決めた。

「試合通してきょうは全然良くなかった。愛媛に来てからの試合で、自分の調子は一番良くなかった。でも、一発狙ってやろうと思っていた。最後チャンスが来て、それが実って良かったです」

 本人は謙遜したが、持ち味のスピードは湘南の脅威となっていた。敵将の反町康治監督も高く評価。齋藤について「最後は“愛媛のメッシ”にやられた」と言い、さらに、この日はU-22日本代表の関塚隆監督が視察に訪れていたため、報道陣から堅守を続けている湘南DF遠藤航のU-22代表入りについて聞かれると、「齋藤のほうが可能性があるんじゃないの」と称えた。

 4月に21歳となった齋藤はロンドン五輪世代。今季、横浜FMからレンタルで愛媛に移籍してきた。横浜FMではまだユース所属だった2008年から出番を得て、その年に7試合のリーグ戦出場を果たして期待された。その後、昨年までの3年間でリーグ戦23試合、ナビスコ杯8試合、天皇杯1試合と計32試合の公式戦に出場しているが、得点は昨年のナビスコ杯で奪った1ゴールのみと、結果が出なかった。横浜FMには渡邉千真や大黒将志、また小野裕二がおり、さらなる出番を求めて新天地にやってきた。

 よくある“武者修行”のように思えるが、齋藤には、そんな甘えはまったくない。「修行という意味では来てないです。愛媛でやろう(結果を出そう)という一心で来てる。マリノスに帰ろうとかそういうのはない。ここでやれない限り、ビッグクラブには戻れない」と“背水の陣”という気持ちでプレーしているという。

 実力に加え、そんな強い気持ちが実り、愛媛でレギュラーを獲得した。この日の湘南戦を含めて4試合の先発を含む全5試合に出場。計2得点とまずまずの結果を残している。「90分通して何ができるかというのを課題としている。あとは(ゴールという)結果を出すこと。マリノスではぜんぜん結果が出せなかった。愛媛では5戦2得点ですけど、もっと取れるチャンスがあった。チャンスで決められるようになりたい」と強い決意を示した。
 
 この日はU-22の関塚監督が視察に訪れていたが、「気にしていないですね。愛媛の代表として入れたら光栄だし、愛媛の名前をみんなに知ってもらえるのは大きいけど、個人としては、代表に入るどうこうより、愛媛をどうやって勝たせるかというのが課題。入れたら嬉しいけど、執着はしていない」と齋藤。自分の進むべき“道”がしっかりと見えている。

「目標ゴール数? マリノスでは30試合くらい出て1点しか取れなかった。ふがいないのを挽回したいと思って愛媛に来た。1点でも多く、取れるだけ取りたいです」と意気込む。小学生から名門・横浜FMの下部組織で育ったストライカー。愛媛の地でその才能をさらに開花させる。

[写真]同点ゴールを決めた齋藤

(取材・文 近藤安弘)

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