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「少しでも笑顔を」ジーコ魅せた先制ゴール!震災復興チャリティーマッチでJ、鹿島OBが競演

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[6.4 震災復興チャリティーイベント ANTLERS LEGENDS 3-0WITH HOPE UNITED]

 被災地に少しでも笑顔を――。震災復興チャリティーイベント「SMILE AGAIN~YELL FROM KASHIMA~」が4日、茨城県立カシマサッカースタジアムで開催され、鹿島アントラーズのOBチーム「ANTLERS LEGENDS」と元Jリーガーによって結成された「WITH HOPE UNITED」が対戦。元日本代表監督でもある元ブラジル代表MFジーコ氏の先制ゴールなどにより「ANTLERS LEGENDS」が3-0で勝った。

 黄金時代を彩ったスターたちが東日本大震災の被災地となった茨城、日本のために集結した。震災で被災した小学生たちと鹿島の現役選手による前座試合や人気アーティスト「FUNKY MONKEY BABYS」のチャリティーライブなどが行われたこの日。かつてのスター選手たちがサッカーで被災地を勇気付けた。

 30分ハーフで行われたチャリティーマッチでは「ANTLERS LEGENDS」がジーコ氏、元ブラジル代表MFトニーニョ・セレーゾ氏、FWアルシンド氏、MF本田泰人氏、DF秋田豊氏、DF名良橋晃氏、そして現鹿島監督のオズワルド・オリヴェイラ監督ら豪華メンバー。「WITH HOPE UNITED」もMFラモス瑠偉氏をはじめ、FW長谷川健太氏、FW福田正博氏、MF名波浩氏、MF北澤豪氏、MF山口素弘氏らが名を連ね、元カメルーン代表FWパトリック・エムボマ氏を除く全選手が元日本代表という往年のスター軍団だった。

 その中で輝きを放ったのは、ブラジルの、鹿島の「英雄」ジーコだった。「SPRIT OF ZICO」の文字が刻まれたビッグフラッグがゴール裏スタンドに掲げられる中ピッチへ登場したジーコは、その右足でゲームコントロール。絶妙なタッチのトラップから次々とミドルレンジのパスを散してチャンスへとつなげていく。

 そしてオリヴェイラ監督が右サイドでボールに絡み、マイクパフォーマンスで「トモダチならアタリマエ」の名ゼリフを披露してスタンドからの喝采を浴びたアルシンドも、前半4分に名良橋のパスからDFをかわして右足シュートを放つなど果敢にゴールを狙う。また最終ラインでは秋田が腰の位置へのボールを頭で跳ね返すなど、ラモス、MF澤登正朗氏ら中心に攻める「WITH HOPE UNITED」の攻撃を跳ね返した。

 そしてエンジの背番号10が会場のボルテージを一気に絶頂へと導いた。前半16分からアルシンドの息子であるFWイゴールを投入した「ANTLERS LEGENDS」は24分、右クロスをアルシンドがダイレクトで落とし、PAへ侵入したイゴールがシュートへ持ち込もうとする。DFに阻まれ、一度ボールを失ったイゴールだったが再び奪い返して仕掛けようとしたと同時に「(イゴールに)『こっちだ!』と怒鳴った」というジーコの声。イゴールがその言葉の方向へ丁寧なラストパスを送ると、後方から走りこんだジーコが右足ダイレクトでゴールへと押し込んだ。

 この日一番の大歓声に手を振って応えたジーコは「カシマのピッチに戻れて感激でいっぱいです」。東日本大震災の被災状況の映像をブラジルで見て大きなショックを受けた。ブラジルでチャリティーマッチを行い、そして今回約5年ぶりの来日。「日本のために何かをしないといけない」という58歳はその年齢を感じさせない動きで前半の30分間を戦い抜いた。

 ジーコのゴールでリードを奪った「ANTLERS LEGENDS」は後半さらに2点を加える。まずは10分、MF熊谷浩二の展開から右サイドを突いたFW平瀬智行が中央へ折り返す。これを受けたMF石井正忠が右足を振りぬくと「(クロスが)たまたま入っちゃった」一撃はGKの頭上を越えてそのままゴールへと吸い込まれた。そして20分には石井のグラウンダーの右クロスが相手DFのオウンゴールを誘い、「ANTLERS LEGENDS」が3-0で勝利。キャプテンとして試合に臨んだジーコは試合後、「(J創設時)温かく迎えて頂き、故郷のように暮らすことができた」鹿島のサポーターたちへ向けて「被災した地域の人たちのお手伝いをしたい。なかなかニコッとすることはできないと思うけれど、きょうは少しの時間でも笑ってください。日本人の底力を結束することによってすごいパワーになる。もう一度みなさんとパワーを結束したい」と挨拶。茨城に、日本に笑顔を届けて「英雄」ジーコは会場を後にした。

(取材・文 吉田太郎)

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