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ザックが3-4-3のサイド攻撃を熱血指導、チェコ戦で再テストへ

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 ザックがついに3-4-3の攻撃練習に取りかかった。この日も約1時間半の練習時間をほぼ3-4-3の戦術確認に費やしたアルベルト・ザッケローニだが、前日までの守備確認から、いよいよ攻撃面に着手した。

 ミニコートでフィールド選手を3-4-3のポジションに配置。サイドハーフにボールが入ったときの3トップやボランチ、逆のサイドハーフの位置取りを細かく指示し、サイド攻撃の“手順”を繰り返し確認した。その後はピッチをフルコートに広げ、3-4-3同士でゲーム練習を行った。

 左FWの位置に入ったFW岡崎慎司は「どこが(攻撃の)狙い目なのかが前の試合ではなかった。監督もサイドが点を取るポイントだと言っていた。そういう意識付けを今日はやった」と明かす。1日のペルー戦(0-0)では両サイドハーフが高い位置を取れず、5バック気味になる時間帯もあった。サイドで数的優位をつくりやすいのが3-4-3の利点。ザッケローニ監督はMF西大伍、DF長友佑都らサイドハーフがボールを受け、いったんボランチなどに預けたあとも立ち止まらず、すぐに前に走り出すよう大声を張り上げていた。

 その指示は綿密だ。長友は言う。「僕のサイドにボールがあるときは、今日のメンバーなら(3トップの)チュンくん(李忠成)、オカ(岡崎)、セキ(関口)と俺(の4人がゴール前まで攻め)、あとボランチの1人がPAの外にいろということだった」(練習での布陣)。5人での攻撃。特に3トップの動きは流動的で、岡崎は「サイドハーフがサイドに出れば、俺は真ん中でプレーしないといけないし、サイドハーフが上がらなければ俺がサイドプレイヤーをやらないといけない。3トップだけど、シャドーをやったり、サイドに開いたり、2トップになったり、変化するポジション」と指揮官の狙いを代弁する。

 3トップのウイングといえど、単にサイドに開いているだけではない。ボランチがフリーで前を向けば、センターFWがいったんサイドに膨らみ、それとクロスするようにウイングがゴール前中央に走り込む。ザッケローニ監督は「縦に走るのはSB(サイドハーフ)だけ」と、3トップにはダイアゴナル(斜め)の動きを求める。また、センターFWがサイドに流れてくさびを受けたときは、流れてきたサイドのウイングが中央に絞る。この日の練習中も指揮官から「右サイドにボールがあるときは(右FWの)セキ(関口)がトップ下に入れ」との指示が飛んだ。

 3トップだけではない。サイドハーフへの要求も多い。長友によると、右サイドからのサイドチェンジに対し、左サイドハーフがオーバーラップすることは“禁止”されているという。「(パスをつなぎながら)一つずつズレてきたときは高い位置を取ってもいいけど、サイドチェンジが来たときに俺が出るのはなし。右にボールがあるということは右のサイドハーフも上がっているということ。だから僕も上がってしまうと、ボランチも上がっているし、1枚しか残らないことになる」。右から攻めているときは左のサイドハーフが最終ライン近くまでカバーに入り、4バック気味になるのが鉄則だ。

「(指示は)相当細かい。頭で考えてやると、試合では遅くなる。自然と体が動くようにならないといけない。でも、この戦術をやっていかないといけない。時間はかかると思うし、簡単ではないけど、やっていかないと」。長友は、難易度の高い新システムにも意欲的だ。

 ザッケローニ監督は「それだけのことはできると判断して選手に要求している」と、十分に3-4-3に対応できるだけの能力も戦術理解度もあると強調する。現時点での仕上がり具合を問われると、「残念ながら、どの程度まで来ているかは試合をやってみないと分からない。そんなに簡単に学べるものではない」と答えたうえで、7日のチェコ戦であらためてテストする考えを示唆した。

「W杯予選に向けて、親善試合、集まれる時間を通じてやっていくしかない。本番に入ったら細かく指導できないので、それまでに情報量を与えようと思っている。親善試合は自分たちが成長するためにある」

 2日間の練習で臨んだペルー戦は、前半の45分間、3-4-3を採用したが、攻撃も守備も機能したとは言えなかった。それでも「ペルー戦の前は練習ができていなかった。その中で試してみて、あれぐらいのリアクションは想定内だった」と強調する。チェコ戦までは中5日。連日、3-4-3の戦術確認に時間を費やし、徐々に手応えは感じている。

「チェコ戦で同じシステムを採用するとしたら、機能することを期待するわけではなく、前回よりよくなっていることを期待する。機能するレベルになるには、すべてのスピードを上げないといけない。そこまではまだ期待していない」。そう言ってチェコ戦での過剰な期待をけん制した指揮官。ザックジャパンは一歩一歩、着実に前進を続ける。

(取材・文 西山紘平)

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