beacon

松田さん直伝の諦めない姿勢見せるも……2人退場の松本山雅は1-2敗戦

このエントリーをはてなブックマークに追加

[8.7 JFL後期第6節 松本山雅FC1-2SAGAWA SHIGA FC 松本球]

 日本フットボールリーグ(JFL)の後期第6節が7日に各地で行われ、松本平広域公園総合競技場(アルウィン)では故・松田直樹さんが所属していた松本山雅FCと首位のSAGAWA SHIGA FCが対戦した。松本山雅イレブンは、松田さんに白星を捧げようと戦ったが、2選手が退場する苦しい展開に。松田さんか受け継いだ諦めない姿勢を最後まで発揮したが、惜しくも1-2で敗れた。

 松本山雅FCは4-4-2を採用。GKは石川扶、DFラインは右から阿部琢久哉飯田真輝多々良敦斗、イ・ジョンミン。ダブルボランチは主将の須藤右介弦巻健人のが組み、2列目は右に木村勝太、左に久富賢が入った。2トップは塩沢勝吾船山貴之が組んだ。

 対するSAGAWAはダブルボランチの4-5-1を採用。GKは村山智彦、DFラインは右から奈良輪雄太、求衛昭紀、冨山卓也、旗手真也。ダブルボランチは山根伸泉と馬場悠企が組み、2列目は右に高橋延仁、左に大沢朋也、トップ下に中村元が入った。1トップは御給匠が務めた。

 雷雨のため、試合開始が1時間遅れたこの一戦。当初の試合予定だった午後6時30分の1時間ほど前から雨が降り始めたが、まるで松田さんの突然の死を悲しむ涙のように感じられた。7時過ぎに雨脚は弱くなり、選手たちが入場。キックオフ直前には、センターサークル中央に、松田さんが背負っていた背番号「3」の入った松本山雅ユニホームが置かれ、これを中心に両チームが陣を作って黙とうが行われた。

 何とか、松田さんに白星を届けたい。そんな思いでこの試合に挑んだ松本山雅FCイレブン。しかし、開始直後にアクシデントが起きた。ゴール前の競り合いで、GK石川が相手選手と衝突し左足を負傷。太腿付近にはテーピングが巻かれた。それでも石川は闘志を見せた。

 前半7分、強烈な右ミドルをゴール左上に浴びたが、石川は178cmの、決して大きいとは言えない体を思い切り伸ばしてパンチングし、CKに逃れた。このCKはファーサイドで直接ゴールに入りかけたが、再び石川がしっかりと反応して弾き出した。

 しかし、松本山雅は痛恨の先制点を食らった。前半9分、PA内左に持ち込まれ、最後は大沢朋也にゴールを決められて0-1とビハインドを背負った。松本山雅は、縦へ積極的にボールを入れ、快足の船山やサイドの木村、久富を走らせるが、バイタルエリアを崩せない。反対にSAGAWAのカウンターを受けた。

 前半20分には、再びピンチを招く。松本山雅にとって左サイドを攻めこまれ、最後はややドライブがかかったミドルシュートを浴びた。これもGK石川がうまく対応して弾き出し、失点は免れた。それでも前半34分、松本山雅が好機を得る。左CKからファーサイドで飯田がヘディングシュート。長身を活かして打ったが、惜しくもGKにセーブされてしまった。

 少しずつリズムを掴みかけていた松本山雅だったが、前半43分に悪夢が襲う。ルーズボールを拾いに行った際、須藤右介が危険な当たりをしてしまい、2枚目の警告を受けて退場処分となった。須藤はキャプテンマークを石川に託し、ピッチを後にした。1人少なくなった松本山雅は同44分、塩沢に代えて松田さんと横浜FMで共にプレーしていたFW木島良輔を送り出した。前半はそのままSAGAWAの1-0で折り返した。

 後半、松本山雅は久富に代えてMF北村隆二を入れた。開始5分、松本山雅が決定的なチャンスを迎える。中央やや左サイドで木島が縦パスを受けて反転し、ドリブル突進。相手を引きつけてから中央の船山にスルーパスを通した。GKと1対1になったが、船山の右足シュートはGKにセーブされCKに……。まさに“1点モノ”の決定機を逃した。

 その後、1人少ない松本山雅は苦しい展開となるが、闘う姿勢を見せてゴールを目指した。パスもドリブルもできる木島にボールを集め、何とか打開しようとした。そんなイレブンの思いが、ついに実った。後半12分、阿部が後方からロングシュートを放つと、GK村山がパンチングし、右CKを獲得。これがゴールにつながる。イ・ジョンミンのキックから、ファーサイドの飯田真輝がヘディングで沈め、松本山雅が1-1の同点に追い付いた。

 このゴールで、9800人以上が集結した松本山雅サポーターが、大盛り上がりを見せる。後半15分には再びCKのチャンスを得て、こぼれ球から船山がシュート。GK村山のファインセーブに阻まれたが、リズムをつかんだ。

 しかし……。一瞬の隙を突かれ、勝ち越されてしまった。後半19分、松本山雅にとってPA右に侵入され、45度の角度から大沢朋也にシュートを決められ、1-2となった。一部選手が下を向く中、木島は声を張り上げ、手を叩いて仲間たちを鼓舞。松本山雅サポーターも声援を送り続けた。

 松本山雅は、何とか追いつこうと必死にボールに食らいついたが、再び悪夢が襲った。後半34分、SAGAWAに攻め込まれ、PA手前でワンツーを仕掛けられた。この際、多々良敦斗が相手選手を倒してしまい、2枚目の警告を受けて退場に。松本山雅は2人少ない状態になってしまった。

 9人対11人の苦しい展開。それでも、松本山雅イレブンは運動量を絶やさず、ゴールを目指した。生前の松田さんが示したように、最後まで諦めない姿勢を貫く。だが、ゴールが遠い。ロスタイムは4分の表示。後半46分にはイ・ジョンミンが約25mの距離で直接FKを狙ったが、上に外れた。最後までゴールへの執念を見せたが、1-2のままで終了。大の字になり、膝をついて悔しがる松本山雅イレブンに、サポーターは熱い声援を送った。白星は捧げられなかったが、魂のこもった試合を松田さんに届けた。

(取材・文 近藤安弘)

TOP