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“ザック×岡田”新旧代表監督が夢の対談!!ザック「素晴らしい遺産を残してくれた」

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 日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督と岡田武史前監督による夢の対談が実現した。『adidas all dreamスペシャルクロストーク』が16日、仙台市内で行われ、「将来、サッカー日本代表が世界一になるために今の子供たちに必要なこと」をテーマに新旧日本代表監督が特別対談。日本の子供たちに向けてザッケローニ監督は「大きな夢、高い志を持って、高いモチベーションでサッカーに取り組んでほしい」と訴えかけた。

 2人が初めて出会ったのは岡田氏が代表監督を務めていた昨年春ごろ。ザッケローニ監督は「昨年4月か5月に私がユベントスの監督をしていたときに、ユベントスに寄ってもらって知り合ったのが関係のきっかけ」と明かし、「(前代表監督として)素晴らしい遺産を私の代表チームに残してくれた」と感謝の言葉を述べると、岡田氏も10日の韓国戦(3-0)に言及。「今まで日本が韓国をあれだけ圧倒したのは記憶にない。1年前の代表チームから見ても、レベルアップしているなと思った」と応じた。

 日本と世界におけるU-12世代の育成についてザッケローニ監督は「欧州ではチームとしての戦術を教え込んでいくので、個の部分をしっかり育てている日本の育成システムは素晴らしい。個を伸ばす日本式をベースとし、それを守りながら欧州のいいところを加味していくことが大事だと思う」と指摘した。

 岡田氏も「今も日本の育成のレベルは決して(世界に)劣っていない。とかく日本人はすぐに『海外ではこうだ』と言うが、日本の育成は間違っていない」としたうえで「指導者が教え過ぎるところがある。指導者が答えを出し過ぎて、子供に判断させる、リスクを負わせるところが足りない。『ミスしていいから勝負しろ』と保障を与えるのではなく、選手が自分でリスクを背負って勝負させる環境を整えることが大事」と持論を展開した。

 欧州の育成システムに関してザッケローニ監督は「20年前ぐらいのフランスの育成システムは素晴らしかった。アカデミーをつくり、ジダンやトレゼゲ、アンリという素晴らしい選手を輩出し、W杯、EUROで優勝した」と指摘。これには岡田氏も「日本もフランスのようにナショナルトレセンという形で協会主導でやっている」と応じ、「スペインは単独チームというか、バルサはバルサの育成システムを持って、そこで育てている。今後は日本もチームの色を出していくことによって多様性が出て、より強みが出るのではないか。同じようなタイプの選手ばかりでなく、ベースは一緒でも、多様性が出た方がいいのではないかと思う」と熱く語った。

 育成年代では結果よりも内容を重視する傾向が強いが、岡田氏はこれにも“異論”を唱える。「育成年代で勝負にこだわってやる必要はないが、勝つためにベストを尽くすメンタリティーは育てないといけない。勝ち負けにこだわらないということと、最初から勝たなくてもいいんだと思うことを混同しているところがある。試合に勝つために必死にベストを尽くす。でも、内容にこだわる。その結果、負けてもいい。日本は最初から勝っても負けてもいいとなっているところがある。選手個々の勝負への執着心は必要だと思う」と、勝利にこだわるメンタル面の重要性も説いた。

 新旧代表監督が共通して強調したのが「夢をあきらめない気持ち」だった。ザッケローニ監督は「若くして才能を持ちながらトップレベルになれない選手もいた。トップにいく選手は常に成長している。10歳で素晴らしいからといって成長を止めるのではなく、少しずつでも日々成長する選手が最後までたどり着くと思う」と強調。「今の代表チームにも若い選手、五輪世代の選手がいるが、私もスタッフも常に『成長し続けないといけない』と口酸っぱく言っている」と明かした。

 岡田氏は「世界一になるには『世界一になれる』と信じられることがないと、偶然にはなれない。その意味で、なでしこが世界一になってくれたのはものすごく大きなこと」と、女子W杯で優勝したなでしこジャパンの快挙に触れ、「U-12年代の子供たちからも『俺たちだって』と思う選手が出てくるかもしれない。より高いレベルでプレーして、より高いレベルにチャレンジしていくことが大事」と訴えた。

 ザッケローニ監督は「10歳でハードルがあり、12歳でもハードルがあると思うが、そこから逃げずに向き合って、一つひとつを乗り越えて成長してほしいと思う」と話し、岡田氏も「いろんな挫折はあると思う。しかし、(監督時代に)選手にも話してきたが、右肩上がりで上がっていった選手はいない。山あり谷ありで、壁にぶつかったとき、選手は『前はこれだけできたのに』と昔の山を見がちだが、『より高いところにいくために一度落ちるのであって、低いところを見ずに次の山の高みを見ろ』と話してきた。必ず波はあるが、そこでどこを見るかによって次が変わってくる。常に夢の高みを見続けてほしい」と語った。

 夢を持つことの大事さを強く訴えた両者。岡田氏は「夢を持つ、夢を信じること。敵は自分の中にいる。『俺はダメかも』『俺は無理だな』と思うからダメになる。夢は、実現するまで追い求めることができる。不可能なことはない。夢にチャレンジしてほしい」と力説。ザッケローニ監督は「これまで子供たちに夢を見なさいと言ってきたが、私も監督として大きな夢を持たないといけないですね」と笑い、「今ではW杯という舞台で、そういう夢を見るのも悪くないかもしれない」と、14年のブラジルW杯へ決意を新たにした様子だった。

[写真]対談を行った日本代表のザッケローニ監督(右)と岡田武史前監督

(取材・文 西山紘平)

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