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埋まらない本田の穴…長谷部トップ下起用の“奇策”も空転

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[9.6 W杯アジア3次予選 ウズベキスタン1-1日本 タシケント]

 “奇策”は空転した。FW本田圭佑が不在のトップ下でアルベルト・ザッケローニ監督が起用したのはボランチのMF長谷部誠(ボルフスブルク)。しかし、トップ下でのプレー時間はわずか28分で終了し、2度にわたってシステムを変更するなど対応が後手に回った。

「練習ではやっていなかったけど、昨日(監督から)少し言われていた。チームでも2、3試合やっているし、イメージ的には問題なかった」

 所属するボルフスブルクでは中盤がダイヤモンドの4-4-2でトップ下を務めることもある。8月19日のボルシアMG戦(1-4)では今季初ゴールも決めている。とはいえ、本職ではない。「トップ下のプレーというのをもう少し頭を使ってやれれば。試合の流れを呼んでやれたらよかった」と反省の言葉が続いた。

「自分の位置が高すぎたので、もっと低い位置でボールをもらって、前に出ていければよかった。FWの近くにだれもいなくて孤立していた。FWの近い位置でプレーしようと思ったけど……」

 2日の北朝鮮戦(1-0)では長谷部がボランチの位置から積極的に前に飛び出し、ドリブル突破を仕掛けることでアクセントになった。しかし、ボランチから追い越していく動きと、最初からトップ下の位置に入ってプレーするのは違う。DFを背負いながらのプレーが多く、厳しいプレッシャーにさらされた。攻撃の起点になることができず、長谷部自身の良さも消えてしまった。

 結局、前半28分にベンチからの指示でMF阿部勇樹がアンカーに下がり、その前方に長谷部とMF遠藤保仁が位置する4-1-4-1にシステムを変更。ハーフタイムには阿部をFW清武弘嗣に代え、FW香川真司がトップ下に入る4-2-3-1に戻した。

 ザッケローニ監督は「システムは特にいじっていない」と強調し、「長谷部が高い位置にいたが、ゴールを背負ってのプレーには慣れていない。遠藤の近くでプレーさせようと思った。阿部が悪かったわけではない。長谷部を遠藤の近くでプレーさせようと思ったのが理由」と説明したが、采配が裏目に出た感は否めない。

 香川がトップ下に入った後半は前半よりも改善されたが、それでも決定打を欠いた。指揮官は「前半は相手がすごい速いスピードでプレーしてきたが、日本は選手同士の距離感が良くなかった。後半は状況が良くなり、ウズベキスタンは前半ほど走れなくなった。日本は距離感が良くなり、スピードも上がったが、このピッチではその特長を出すのが難しかった」と振り返る。

「勝ちにいこうとしたが、勝てなかった。カウンターを受けるリスクを冒してまで攻めにいった。最後のところですべて出し切った。勝ちにいく姿勢、全力を出し切る姿勢はよかった」

 ザッケローニ監督はそう前向きに話したが、フィジカル面でも精神面でもより厳しさが増すアウェーゲームで、MF柏木陽介をトップ下で起用した北朝鮮戦以上に本田不在の影響を感じざるを得なかった。今後は10月11日のタジキスタン戦(長居)をへて、11月11日のタジキスタン戦、同15日の北朝鮮戦とアウェー連戦が待っている。トップ下をだれにするのか、それともシステムを変えるのか。本田の穴を埋める作業を急ピッチで進めていく必要がある。

(取材・文 西山紘平)

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