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熱きトークバトル! 釜本、李忠成、大黒、渡邉、小野が「ストライカー論」を熱弁

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 ナイキジャパンは22日、ストライカーのために開発した新スパイク『T90 レーザー Ⅳ』の発売を記念して、東京・味の素スタジアムで「ストライカー論」をテーマとしたトークイベントを開催した。元日本代表の伝説的ストライカー・釜本邦茂氏、横浜F・マリノスのストライカートリオ、大黒将志渡邉千真小野裕二、サッカー番組の司会を務める俳優の勝村政信さんが出席。またインターネット中継でサンフレッチェ広島の日本代表FW李忠成も参加し、熱い議論を交わした。

 ストライカーにとって、最も大事な仕事はゴールを決めること。プレーヤーにとっては、一番難しいとも言えるこのゴール。当然、練習を積むことが大切だが、日本を代表する点取り屋がゴールを奪うための“ヒント”を学生プレーヤーに向けて教えてくれた。

 国際Aマッチ76試合75得点と日本代表歴代NO・1の実績を誇る釜本氏は「自分の得意の形に持ち込めば、点が取れる。それにどう持っていくか」と述べ、「自分がボールを蹴る時、シュートを打てるところにボールを置く(トラップする)こと。それができたら、ボールにきちんと当たる。自分が蹴るフォームをどうやって作るかですね」とアドバイスを送る。

 一方、ドイツW杯に出場したほか、セリエAやフランスリーグでのプレー経験がある大黒は、パサーとの連携について言及。「味方からどういうタイミングでボールが来るから、どう走るとか、どのタイミングで走り出したらいいのかとか、パスを出す選手を理解することが大事。(自分は)この選手の時はこう走ろうと、タイミングを計っている」とパスの出し手の特徴を考え、タイミングよく飛び出すことの大切さを説いた。

 ゴールを奪うための障害となるのが、「決めないといけない」というプレッシャーだが、釜本氏は、ストラカーには「エゴ」が必要と言い、例え外しても「しまった、なんて反省する必要はない。どんどん打てばいい。10本打って、1本決めればいいんだから。もちろん反省は、試合が終わったらしないといけない」と、試合中は1回の失敗に一喜一憂してはいけないなどメンタルの持って行き方を教えてくれた。

 李忠成も「自分はプレッシャーというよりも、やらなきゃいけないという使命感の方が強い。あまりプレッシャーは感じないですね」と明かした。1月のアジア杯決勝・オーストラリア戦では、延長でスーパーボレーを決めて日本を優勝に導いたが、その時も緊張はなく、プレッシャーもそれほどなかったという。

 あの瞬間について李忠成は「まずフリーだったので、トラップしようか、ダイレクトで打とうか、と考えた。ダイレクトで打とうと決めて、これを外したらメディアの人に叩かれるなと考えていた」と“余裕”があったことを明かした。実は李忠成は釜本氏の“教え子”。「小学校2年生の時、釜本さんのサッカー教室でボレーシュートを教わった」そうで、イベントではインターネット中継を通じて「そのおかげです!」と釜本氏にお礼を述べる場面もあった。

 ストライカーとは、まさにチームの中心的存在。近年はゴールだけでなく、様々な役割が求められている。イングランド代表FWルーニー(マンチェスター・U)ら世界的名手はゴールばかりが強調されるが、小野は「ストライカーというのは、点を取るのが一番だと思うんですけど、最近は、海外の試合とかを見ていて、得点もできるけど、しっかりパスを出せたり、守備をするのも当たり前になっている。それを全部、できるようにならないといけない。チームで言うと、ストライカーは試合を決める存在だと思う」と力説した。

 イベントでは、小野の言う“試合を決める存在”になるための新スパイクが紹介された。これまでも発売されていたT90シリーズの新モデルとして『T90 レーザー Ⅳ』が10月1日から発売される。これはストライカーが得点を増やせるようにと考案されたもので、「ムーブメント」(スペースへの動き、一瞬の加速力)、「タッチ」(しなやかなボールタッチとフィット感)、「ストライク」(シュートの精度、決定力)の機能を今まで以上に向上させた。

 李忠成や渡邉はすでに試合で着用。これで17日の磐田戦で2ゴールを決めた李忠成は「履いたときに、地面を掴む感じがある。シュートを打ったときも、凄くボールを掴む感じがある。走りやすいです」。渡邉は「軽いですし、キックの瞬間、ボールに当たる瞬間がいい感じ。インパクトも強い。とてもいいです」と満足気に履きご心地を口にした。

 日本人FWの問題点にも言及された。日本人の特性として、しばしば言われる“譲り合い”の気持ちが、ストライカーには時として邪魔になる。ゴールが近づいたら、パスではなく、自ら仕掛けてシュートを打つことの重要性が議論された。

 釜本氏は「さっき大黒選手は、仲間がどういうパスを出してくれるかを考えると言っていたが、そうではなくて、自分の走ったところにボールを出せと。ボールが来たらやりますではダメ。自分から『ここへ、こういうボールをくれ』と言わないといけない」と要求することが大切だと熱弁。そして、前日21日のU-22日本代表のマレーシア戦(2-0)を引き合いに出し、「昨日も試合を見ていたけど、ゴール前でパスをしているようでは、よくないですよ。ボールを持って仕掛けないといけない」と助言した。

 渡邉は「海外のFWは、自分が絶対に点を取ってやるんだという気持ちがプレーに現れている」とゴールへの執念など、精神面の重要性を説いた。どれもこれも学生プレーヤーに当てはまる、大事なポイントと言えるだろう。

 イベントでは最後、それぞれが今後の目標を語った。大黒は「今年はマリノスで優勝できるように頑張りたい。(FWとして)チャンスで決められるようにやっていきたい」。渡邉は「日本代表に入りたいです」と宣言し、小野は「ロンドンオリンピックに出たいと思っているし、その先のW杯にも出たいと思っている。まずはマリノスで優勝したい。優勝の時には、僕が活躍していられるようにしたい」と熱い思いを明かした。

 李忠成も「今年は得点王を取りたいです。日本一のFWと言われるように、レベルアップしていきたい」と横浜FMトリオに負けじと、強い決意を語った。大黒、渡邉、小野、そして李忠成。日本を代表するストライカーたちが今後、どんなゴールを見せるのか。この日明かしたそれぞれの“極意”を胸に、日本を、世界を沸かせるストライカーを目指す。

(取材・文 近藤安弘)

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